幻のアフリカ納豆を追え!(2020)
著者:高野秀行
おはようございます、チェ・ブンブンです。
私は、文章力を上げるためには映画の本や記事をあまり参考しないようにしている。哲学者が哲学書ばかり読むと衰えるという話があるが、同様に映画で面白い感想や記事を書くヒントはyoutube動画や離れたジャンルの本にあると思っている。高野秀行のリポートはその点非常に参考になる。「謎の独立国家ソマリランド」は未知なる国にどのように入国し、どのように現地人と交渉していくのかを手汗握る文章で綴られており、読んでいて自分もソマリランドに潜入しているかのハラハラドキドキ感を味わえた。そんな彼が2020年に発表した「幻のアフリカ納豆を追え!」は日本のソウルフードだと思われている納豆が、世界でも作られていた件をフィールドワークで解き明かしていく内容だ。
今日は、「幻のアフリカ納豆を追え!」の感想を書いていく。
「幻のアフリカ納豆を追え!」概要
アジア辺境の納豆の存在を突き止めた著者が、今度は、IS出没地域から南北軍事境界線まで、幻の納豆を追い求める。
隠れキリシタン納豆とは。ハイビスカスやバオバブからも納豆がつくられていた!?
そして、人類の食文化を揺るがす新説「サピエンス納豆」とは一体。
執念と狂気の取材が結実した、これぞ、高野ワークスの集大成。
※Amazonより引用
韓国、ナイジェリア、セネガル、ブルキナファソにも納豆があった件
いい文章とは、最初の一文から引き込まれるもんだ。
私の人生の裏で糸を引く怪しいやつがいる。それは納豆だ。
たった27字で「面白い!」と思わせる天才的なフレーズに涙し、プロローグの最後に書かれたフレーズ
まるで映画『フィールド・オブ・ドリームス』のように、私には納豆からの声が聞こえた(ような気がした)。
「行け。韓国とアフリカへ。われらの仲間を探すのだ・・・・・・」
かくして、私はまたもや納豆の操り出す粘ついた赤い糸に操られ、旅に出たのだった。」
を聞いて、これは神本だと確信した。
高野秀行の本の面白いところは、理論に基づいた行動を説明するところにある。アフリカで誰と会うか、目的の納豆にたどり着くためにはどのような懸念事項があるのかを説明する。これがまるで軍事作戦に参加しているかのような高揚感がある。
アフリカの地方都市は長期滞在すると過激派に襲撃されるリスクがある。しかし、納豆は数日かけてその場にいないと手に入らない。そのため、根回しや味方を作る必要がある。ナイジェリアにいる味の素の研究員を用心棒にナイジェリアに渡り取材を行う。その中で、ナイジェリアにおける調味料の立ち位置を深掘りし、主婦の時短としての調味料に対して「女は楽をしている」といったナイジェリアのジェンダー問題にまで踏み込む。そしてセネガル、ブルキナファソ、韓国を巡り、時にはバオバブから作られる納豆のようなものをどう解釈するか悩みながら爆走する。
先行研究にもあたり、論の問題点を炙り出したり、時にはブルキナファソの納豆にあたるスンバラを研究している人を訪ねたりする。これはフィールドワークの手本といえるだろう。でもって遊び心あってとても読みやすい。しまいには集めてきた納豆でワールドカップを開催するユニークさをもっているのだ。
私は納豆嫌いであり、20年以上食べてないが、この本はとても好きだった。今年ベスト本の一つとなることでしょう。
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※Amazonより画像引用