テュベテイカをかぶった天使(1968)
Angel v tyubeteyke
監督:シャケン・アイマノフ
出演:アミナ・ウルムザコワ、アリムガズィ・ラインベコフ、ビビグリ・トゥレゲノワetc
評価:40点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2021年、最後の映画祭「中央アジア今昔映画祭」に行ってきました。カザフスタンからトルクメニスタン、VHS時代の名匠タジキスタンのバフティヤル・フドイナザーロフと豪華ラインナップで2021年最後を彩る本祭。1本目はカザフ映画の父シャケン・アイマノフ代表作『テュベテイカをかぶった天使』を観ました。テュベテイカとは中央アジアの伝統的な帽子の名前で、主人公タイラクが身につけているものである。この時、私は知らなかった。直前に村田沙耶香の「コンビニ人間」を読むべきではなかったことに。
『テュベテイカをかぶった天使』あらすじ
地理の教師タイラクは、親切で思いやりがあり、常に伝統的な帽子テュベテイカを手放さないことから、皆に「テュベテイカの天使」と呼ばれている。ある日、母親が彼に会いに田舎からアルマティにやって来る。コスモポリタンな大都会に圧倒されつつも、彼女は息子の花嫁を探すために大胆な行動を開始するが…。
※中央アジア今昔映画祭より引用
結婚、子作りを強要するオカン
カザフスタンがまだソ連だった頃、社会主義ならではの強烈な価値観が映画の中心を占める。地方都市から、オカンがやってくる。息子のタイラクは教師をしているが、結婚に興味がない。結婚したら束縛されると思っているからだ。オカンは勝手に息子の家に住み着き、部屋の掃除を始める。パーティで周囲から、息子の恋愛事情を煽られると「私に任せて」と町の美女に片っ端から声をかける。
「あなた結婚に興味ない?」
息子はあまり結婚に興味ないものの、町の案内所で働く女に少しアタックするようになる。他方で、彼を狙う女も現れ珍事へ発展していく。
直前に、結婚と子作りを強要する社会に怒りをぶつける「コンビニ人間」を読んでいたので、それ以上にキツい人間関係に辟易してしまった。社会主義として、若者は結婚して子供を沢山授かることが社会目標とされている。オカンが「孫を拝む権利」を行使しようとするグロテスクさの背景には、社会が結婚をしない、子供を授からないのはよくないという空気感があり、それ故にオカンが頑張る仕組みがある。
周囲の者が徹底的に干渉していく居心地の悪さに、吐き気を催してしまった。
一方で映画の演出としては興味深いものがある。例えば、劇中で前衛バレエを観るシーンがある。アニメに切り替わりUFOが地上に着陸する。すると、実写パートで宇宙人のような存在がロボットダンスのようなものをする。また、タイラクに想いを寄せる女の妄想パートがあるのだが、それが異様に長く、てっきりタイラクと親密な関係になっていると思いきや妄想だったと分かる。色彩豊かで、どこか日本のクレイジーキャッツ映画と重なる部分も多かった。でも、残念ながら私の口には合わなかった。
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※MUBIより画像引用