ゼロ・モティベーション(2014)
原題:אפס ביחסי אנוש
英題:Zero Motivation
監督:タリア・ラヴィ
出演:Dana Ivgy,Nelly Tagar,Shani Klein etc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
日本未公開映画を紹介する映画ブロガーゼロモチベーション済藤鉄腸さん( @GregariousGoGo )のTwitterネームの由来であるイスラエル映画『ゼロ・モティベーション』が2021年10月10日(日)〜2021年11月8日(月)の期間、映画配信サービスJAIHOで観られます。監督のタリア・ラヴィといえば、第16回大阪アジアン映画祭で上映された『ハネムード』で軽快ユニークなコメディを撮ったことが記憶に新しい。そんな、タリア・ラヴィ監督作『ゼロ・モティベーション』を試写にて一足早く観させていただきました。
『ゼロ・モティベーション』あらすじ
A unit of female Israeli soldiers at a remote desert base bide their time as they count down the minutes until they can return to civilian life.
訳:人里離れた砂漠の基地にいるイスラエルの女性兵士の部隊は、市民生活に戻れる日が来るのを指折り数えて待っています。
モティベーションをへし折るブルシット・ジョブの洪水
モティベーションは些細なストレス、不条理の積み重ねで簡単にゼロとなってしまう。人がごった返すバス乗り場を突破し、なんとかすし詰めのバスの中で居場所を見つける兵士。職場まで、束の間の休息も思わぬアクシデントで降ろされてしまう。バスの故障で遅刻し、僻地の施設に到着した女性職員たち。かつてそこで働いたことのある者は落胆の息をつく。また、新米は職場という未知に期待と不安の表情をみせる。
新生活早々、バスのアクシデントが原因にもかかわらず「エイリアンが襲来してきても9時半には必ず来なさい」と先輩に叱られる。ここシザフォン基地の事務職は掃き溜めのような空間だ。デスクは狭く、書類を積み上げれば簡単に手がつけられないほどの混沌が生まれてしまう。書類の山の凄惨さは日本のアニメやCMで誇張気味に表現される量を遥かに超え、恐怖すら覚える。のろのろと動くシュレッダーと膨大な廃棄書類、ひたすらファイリングしていく兵士の行動履歴に男性兵士の会議室にお茶やお菓子を配って回る作業。生産性が低く、モティベーションが上がらない小さな仕事たちが次から次へと押し寄せてくる。
あまりの虚無っぷりに発狂する者まで現れる。そんな環境で長くやっていく為に必要なのは、「やる気ゼロ」を維持することです。会議室では、戦場では輝かしい仕事が繰り広げられている。虚無な事務室では、マインスイーパという「地雷除去」に輝かしい仕事を見出そうとする。ひたすら流れる息苦しい時を紛らわすにはマインスイーパと雑談が大事なのです。
本作はブルシット・ジョブに押しつぶされそうな者がひたすらやる気スイッチをOFFにすることで延命する様子を苦々しいユーモアで笑い飛ばした快作だ。
タリア・ラヴィ監督は小道具の使い方が非常に面白い。『ハネムード』では、新婚カップルの宴にコロンと落ちた元カノからの祝儀である指輪が原因で最悪の一夜を迎える話だが、指輪がロボット掃除機に吸い込まれ、それが街を走る清掃車に吸われる演出を通じて事態の深刻さを笑いに変換していた。本作の場合は、膨大な書類がとある変身を遂げることにより、「笑うしかない」最悪の展開を迎えたり、ホチキスが醜い諍いのリーサルウェポン(最終兵器)として活用されたりとユニークな使い方によって魅力的なコメディに仕上げている。
コロナ禍でテレワークをはじめとし、職場環境がDX(デジタルトランスフォーメーション)と向き合うようになってきたが、ハンコリレーや煩雑な書類整理、満員電車に乗って通勤といったモティベーションが下がる要因は多い。そんな現代社会に効く特効薬『ゼロ・モティベーション』は2021年10月10日(日)〜2021年11月8日(月)よりJAIHOにて配信。是非、挑戦してみてください。
※MUBIより画像引用