最後にして最初の人類(2020)
Last and First Men
監督:ヨハン・ヨハンソン
出演:ティルダ・スウィントン
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
7月のオリンピック4連休最終日はヒューマントラストシネマ渋谷でヨハン・ヨハンソン遺作『最後にして最初の人類』を観ました。本作は、『博士と彼女のセオリー』やドゥニ・ヴィルヌーヴ映画の音楽家として活躍し、2018年に亡くなったアイスランドの作曲家であるヨハン・ヨハンソンが短編『End of Summer』に次いで制作した長編初監督作にして遺作である。予告編を観る限り明らかに映画館観賞必須な作品。本作を配給した株式会社シンカを賞賛しつつ、ヒューマントラストシネマ渋谷の音響にこだわったオデッサ上映で彼の最期のメッセージを受け取りました。
『最後にして最初の人類』あらすじ
「メッセージ」「ボーダーライン」「博士と彼女のセオリー」などの映画音楽を手がけたアイスランド出身の作曲家で、2018年に早世したヨハン・ヨハンソンが生前に取り組んだ最初で最後の長編監督作品。1930年に発行されたオラフ・ステープルドンの同名SF小説の古典を、アカデミー賞女優ティルダ・スウィントンのナレーション、全編16ミリフィルムで撮影された旧ユーゴスラビアに点在する巨大な戦争記念碑・スポメニックの映像群、ヨハンソンが奏でるサウンドにより映像化。もともとはシネマコンサート形式で生演奏とともに上映されていた作品で、仲間たちの尽力により、ヨハンソン没後2年の時を経て1本の長編映画として完成された。
ヨハン・ヨハンソンは天空から囁く
打ち捨てられたかのような、自然の中に君臨する荘厳なコンクリートのオブジェをじっくりとフィルムは収める。そして、重々しいサウンドが劇場をこだまする。通常であれば上映事故になりそうな、重厚な音すぎてスクリーンに波紋が出現する場面も、この映画に関してはアリだ。世界の終わりを目撃しているような。あのラース・フォン・トリアー『メランコリア』のラストで人類の滅亡がスクリーンの外側にまで侵食する感触が70分に渡り覆い尽くす。
ドラマを廃したコンクリートのオブジェの画、画、画のアートギャラリー。その外側でティルダ・スウィントンが囁く20億年先からのメッセージは、人類が遥か昔に描かれた壁画や生活の痕跡を基に物語を紡ぎ直す際のロマンを彷彿とさせる。必然と我々は未来人の視点となり、未来からすればこの荘厳で意味ありげなコンクリートがかつて人類がもがきながら生み出した代物であるだろうと脳内にイメージを作り上げながら監督と対話するのだ。
この感覚は、デレク・ジャーマンが死にゆく自分の感覚を捉えようと青い画面の中でナレーションだけを木霊させ、観客との対話を試みた『BLUE ブルー』を思わずにはいられません。
確かに睡魔襲う作品であるのだが、世界が終わりに向かう今に沁みる作品であった。
※映画.comより画像引用