『ウィリーズ・ワンダーランド』A FISTFUL OF CAFFEINE TO YOUR KISSER

ウィリーズ・ワンダーランド(2021)
Willy’s Wonderland

監督:ケヴィン・ルイス
出演:ニコラス・ケイジ、ベス・グラント、ケイリー・コワン、Emily Tosta、グラント・クラマーetc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

皆さんは、ニコラス・ケイジをお好きでしょうか?

かつては、『バーディ』、『月の輝く夜に』、『ザ・ロック』といった映画史に残る名作に出演したものの、『ノウイング』あたりから謎の映画ばかり出るようになって、ネット上でもオモチャにされていた俳優である。でもウィレム・デフォー同様、彼が出るとロクなことが起きないので私は好きです。『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』あたりから、ニコラス・ケイジの狂気の身体表象が目立つようになった。園子温のニコケイ映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』や、ニコラス・ケイジがニコラス・ケイジを演じる『The Unbearable Weight of Massive Talent』の公開が控える中、一本のニコケイ映画が日本でも放たれました。それが『ウィリーズ・ワンダーランド』だ。朽ち果てたテーマパークに潜む不気味の谷の住人アニマトロニクスがニコラス・ケイジに襲いかかってくる映画である。観てみたらとても面白かったので感想を書いていきます。

『ウィリーズ・ワンダーランド』あらすじ

ニコラス・ケイジが製作・主演を務め、廃墟となったテーマパークで悪魔のようなアニマルロボットたちに襲われる人々を描いたアクションスリラー。車が故障し、人里離れた町に取り残された男。通りかかった修理工に助けられるが修理代を払えず、支払いの代わりに、廃墟となったテーマパーク「ウィリーズ・ワンダーランド」の清掃員として一晩だけ働くことに。しかしパークには暗い過去があり、かつて子どもたちに大人気だった動物キャラクターのロボットたちは恐ろしい殺人鬼と化していた。園内に閉じ込められた男は、容赦なく襲い来るロボットたちと死闘を繰り広げる。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2021/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2021」(2021年7月9日~8月5日)上映作品。

映画.comより引用

A FISTFUL OF CAFFEINE TO YOUR KISSER

高級車に乗ってニコラス・ケイジ扮する男が荒野を疾走する。しかし、謎のトゲトラップに引っかかり、タイヤがパンクしてしまう。何故か修理代を払えない彼は廃墟同然となったテーマパーク「ウィリーズ・ワンダーランド」の清掃を任される。彼はタイマーをセットし、時間になったらお気に入りのエナジードリンクPUNCHを飲み、見つけたピンボールマシンで遊んで、再び清掃に戻るルーティンを構築し、淡々と掃除をしていたのだが、そこにアニマトロニクスの魔の手が忍び寄る。

本作は一見、よくあるネジが数本とれたホラー映画かと思うのだが、非常によくできた作品である。クリシェ外しがとにかく面白い。まず、何と言ってもニコラスが中毒症状になっているものがビールではなく、エナジードリンクなのだ。一見するとビールに見えるのですが、よくよくラベルを見ると、「A FISTFUL OF CAFFEINE TO YOUR KISSER(パンチあるカフェインをあなたの口づけに)」といったキャッチフレーズが書かれているので、エナジードリンクである。そして、本作においてニコラス・ケイジは殆ど話しません。ルーティンとして掃除とエナジードリンク休み、ピンボール遊びを回す。そこにアニマトロニクスがバァと脅かしても、淡々と撲殺していく。その身体表象が面白い。単にサイレント映画としてニコラス・ケイジを撮っているわけではない。死角の使い方に唸らされる。例えば、トイレからゴリラが現れる場面。「北斗の拳」ばりに両者熾烈なパンチを入れていく。その過程で、ニコラス・ケイジが個室に飛ばされる。ゴリラが、個室を覗くと、トイレ詰まり用スッポンで応戦し始める。この緩急が心地よいリズムとなっている。また、アニマトロニクスとニコラス・ケイジとの間で人間味の逆転が起きていることを強調するため、アニマトロニクスとメンチ切っている最中に「あっ時間だからエナジードリンク飲んでくるね。」と部屋から颯爽と抜け出す場面があったりして芸が細かい。

過去の怨念を引き連れ、人間的狡猾さで忍び寄るアニマトロニクス。それに対して、人間の感情を失ったニコラス・ケイジ。その狭間にチンピラ集団を配置し、この暴力の連動装置の中で粉砕されていくところが滑稽で楽しかった。

こういう、一発芸映画の時たま光る運動哲学を観ると元気になりますね。まさしく、A FISTFUL OF CAFFEINE TO YOUR KISSERな映画と言えよう。

 

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