【特集ウィリアム・キャッスル】『SHANKS』人間ラジコン

SHANKS(1974)

監督:ウィリアム・キャッスル
出演:マルセル・マルソー、ツィラ・シェルトン、フィリップ・クレイ、ヘレナ・カリアニオテス、ラリー・ビショップ、ドン・カルファ、リード・モーガン、ウィリアム・キャッスルetc

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

チープなモンスター造形ながら「悲鳴で倒す」を銀幕の外側にまで展開した傑作『ティングラー/背すじに潜む恐怖』や『インセプション』のような脳内スパイ映画『危機一髪!西半球最後の日』を観てすっかりウィリアム・キャッスルのことが好きになった私。調べていくと、日本で知られているホラー映画、ギミック映画の側面は氷山の一角であることがわかったので、敢えて王道から外して観ている。今回紹介するのは彼の遺作である『SHANKS』である。日本未公開であるが、本作はパントマイムアーティストであるマルセル・マルソー主演作であり、なんと第47回アカデミー賞作曲賞にノミネートされ、『ゴッドファーザー PART II』(ニーノ・ロータ、カーマイン・コッポラ)、『チャイナタウン』(ジェリー・ゴールドスミス)、『オリエント急行殺人事件』(リチャード・ロドニー・ベネット)、『タワーリング・インフェルノ』(ジョン・ウィリアムズ)と闘っている。作曲家が無冠の帝王アレックス・ノース故に受賞はできなかったものの、テレビ放送含めて日本未紹介なのが意外だった。そして、この作品、とても面白かったです。

『SHANKS』あらすじ

A mute puppeteer uses a deceased scientist’s invention to control dead bodies like puppets.
訳:亡くなった科学者の発明品を使い、死体を人形のように操る無口な人形師。

imdbより引用

人間ラジコン

本作はパントマイムが主軸にあるため、サイレント映画のような作りで綴られている。凝った中間字幕を使ってストーリー進行し、役者の身体表象で喜怒哀楽を表現するのだ。主人公シャンクス(マルセル・マルソー)は聾唖の人形遣いで、子どもたちの人気者。人形劇で日銭を稼いでいる。それをアル中の夫を抱える姉夫婦が頼りにしており、シャンクスから搾取しているのだ。そんなある日、シャンクスは怪しげな老人ウォーカー氏(同じくマルセル・マルソー)に雇われる。ウォーカー氏は電気を使った生物蘇生術の研究をしているのだ。だが、彼は突然死んでしまう。彼が残した技術を使って人間をラジコンにする技術を覚えたシャンクスは姉夫婦を殺して自分の操り人形として扱うようになる。

サイレント映画は観客が飽きないように早回しを使うなど、激しい動きを魅せる傾向がある。それに対して、本作は非常にスローモーションだ。死んだウォーカー氏を使って人間ラジコンを完成させる場面に時間をかけており、カクカク動くウォーカー氏がぎこちなくレコードをかける場面はどこかもどかしさを感じる。だが、そのトライ&エラーがあるからこそ、終盤のバイカー軍団との戦いが胸踊るものとなる。バイカー軍団は、「面白いけど、操作性悪いな」と言っている側から、死んだウォーカー氏を操作して蹴散らして行くところが熱い。しかも、何故か目の前にウォーカー氏がいるのに、自分の人間ラジコンで戦おうとするお茶目さが堪りません。

海外評だと、このゆっくりとした物語展開に難色を示すことが多いらしいのですが、寧ろこれはサイレント映画に寄せつつも、サイレント映画的演出の外側で魅力を生み出そうとしていると思い私は評価している。何よりも、マルセル・マルソーの人形の魂失った動きと、聾唖者の眼光で魅せる喜怒哀楽の巧みな演じ分けが素晴らしく、仕事で疲れた身体を癒してくれました。

シネマート新宿あたりで上映されたり、是空さんでウィリアム・キャッスルボックス出ないかなと思う次第です。

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