ジェミル・ショー(2021)
The Cemil Show
監督:バルシュ・サーハン
出演:オザン・チェリキ、ネスリン・ジャヴァドザーデ、アリジャン・ユジェソイetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第16回大阪アジアン映画祭でトルコの『キング・オブ・コメディ』と思しき作品が上映されるということで観てきました。今や割とオーソドックスなネタとなっている俳優になりたい人が段々と虚実が曖昧になっていく話ですが、トルコではどのように味付けが行われたのでしょうか?
『ジェミル・ショー』あらすじ
地方から上京し、警備会社に勤務しながら俳優になる夢を追い続ける32歳の冴えない男ジェミル。孤独な毎日を支えるのは、リメイク版映画のオーディションに再度トライし、往年のギャングスター俳優・トゥルガイ役を勝ち取るため、過酷な大都会の縮図である職場の一室で練習を重ねること。そんな彼はある日、放埒な同僚ブルジュがトゥルガイの娘であることを知る。身勝手な父の愛を得られず、上司とは不倫関係にあるブルジュも、実は孤独の中でもがく同世代の一人だった。それぞれの挫折の中で、トゥルガイ役の演技にますます執念を燃やすジェミルと父との絆を模索し始めたブルジュ。亡き大俳優の不滅のパワーが二人を導いた先とは…。
21世紀に入り、伝統文化を素材に現代社会の鼓動と矛盾を描き、世界的なニューウェーブの一角へと飛躍したトルコ映画界。ところがトゥルガイは、20世紀後半の発展途上にあった国産映画の隆盛を象徴する、過去の肖像の一人である。新しい時代のメインストリームに乗ることを知らないジェミルのピュアな理想には、今を培った基盤である“オールドファッション”の真価に対するサルハン監督の敬意が込められている。作品の中の別の映画が全体の展開を引っ張っていく、異色な構成も見逃せない。
※第16回大阪アジアン映画祭より引用
トルコのジョーカーは役者になりたい
1950年代のトルコのギャングスター俳優、Turgay Göral(どうも架空の俳優らしい)の名作『KABUS(恐怖)』をリメイクすることになる。オーディションに沢山人が集まるが、監督は中々役者を決められずにいた。そこに俳優の夢を諦めきれない男ジェミル(オザン・チェリキ)が現れるのだが、あまりに酷い演技で門前払いとなってしまう。
彼は警備員として働いているのだが、役者の夢を追い続けるあまり遅刻の常習犯。上司に怒られてばっかりなのだが、めげずに勤務中に映画を観て演技の勉強をしている。
本作ではどうも架空の映画が使われており、『KABUS(恐怖)』が重要な役割を果たしているのだが、本編以上にこの『KABUS(恐怖)』が魅力的だ。銃声に併せて俳優の名前が出てきたり、横移動、チャールズ・ブロンソンのような渋みのあるTurgay Göralが魅力的でそっちばっかり気になる。
一方、本編の方は『キング・オブ・コメディ』というよりかは『JOKER/ジョーカー』であり、自分の世界に引き篭もった男が開き直ることで無双する姿を危険な香り撒き散らしながら描かれていく。
芽が出ていないアーティストが悪夢に苦しみながら成功を夢見る演出はところどころ面白かったが、もう擦り倒されて陳腐化してしまったテーマだなと思い、可もなく不可もない映画となっていました。
※第16回大阪アジアン映画祭より画像引用