『窮鼠はチーズの夢を見る』困った時に飲食店へ駆け込む大倉忠義、見守る成田凌

窮鼠はチーズの夢を見る(2020)

監督:行定勲
出演:大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ(佐藤穂奈美)etc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年は、『性の劇薬』に始まりBL漫画の映画化に力が入っている。そしてどちらもヒットしていることを考えると今後、力をつけていく実写化ジャンルだとみた。さて、今回『劇場』というトンデモクズ映画を放った行定勲が水城せとなの同名漫画(厳密には『窮鼠はチーズの夢を見る』、『俎上の鯉は二度跳ねる』が原作)を映画化した。主演は関ジャニ∞の大倉忠義と『愛がなんだ』の成田凌だ。ジャニーズアイドルがBL映画の主演という意外性に行定監督の攻めの姿勢を感じたものの、映画はやはり厳しいものがありました。

『窮鼠はチーズの夢を見る』あらすじ


恋に溺れていく2人の男性を描いた水城せとなの人気漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」を、行定勲監督のメガホンにより実写映画化。主人公の大伴恭一役を「関ジャニ∞」の大倉忠義、恭一に思いを寄せる今ヶ瀬渉役を成田凌が演じる。優柔不断な性格から不倫を重ねてきた広告代理店勤務の大伴恭一の前に、卒業以来会う機会のなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉が現れる。今ヶ瀬は妻から派遣された浮気調査員として、恭一の不倫を追っていた。不倫の事実を恭一に突きつけた今ヶ瀬は、その事実を隠す条件を提示する。それは「カラダと引き換えに」という耳を疑うものだった。恭一は当然のように拒絶するが、7年間一途に恭一を思い続けてきたという今ヶ瀬のペースに乗せられてしまう。そして、恭一は今ヶ瀬との2人の時間が次第に心地よくなっていく。
映画.comより引用

困った時に飲食店へ駆け込む大倉忠義、見守る成田凌

劇場』よりかははるかによかった。山﨑賢人のクズ描写と松岡茉優のメンヘラ描写があまりに薄っぺらく感じたのに対して、今回はクズ描写に繊細さがありました。本作は、言うならば男性版『寝ても覚めても』であり、優秀な広告代理店の男・大伴恭一(大倉忠義)が突然現れた大学時代の後輩・今ヶ瀬渉(成田凌)と職場の後輩・岡村たまき(吉田志織)との間で揺れ動く話だ。優柔不断な人間の心の揺らぎを映画的超展開で描いていく点で共通している。

本作の特徴は、映画に流れている空気感だ。コンクリートに囲まれた灰色の空間に差し込む花浅葱(はなあさぎ)色、夜の街を彷徨いいつの間にか朝を迎えたようなカタルシスを誘うアスファルトと調和する青みの中で、まるで死んだ人のように無機質な人間が描かれている。大伴は人生の成功者であり、何不自由していないものの、彼の人生はデカダンスそのもので空虚である。そしてその空虚に入り込む女性を受け入れてしまい不倫を繰り返す。そんなある日、妻に失望されて離婚へと発展していく。彼のデカダンスの深淵にぽっかりと白い穴が空いてしまうのだ。その喪失感を埋めるように今ヶ瀬が寄り添う。最初は拒絶するものの、表面だけで見られてきた大伴の内面を知り尽くしている今ヶ瀬がその穴を埋めていく快感に溺れていく。大伴が今ヶ瀬に心を許すときだけ、映画は少し赤みのかかった色彩へと変わり、大伴の表情が豊かになる。大伴の心情を強調するために、出てくる登場人物はチェスの捨て駒のように進撃させて、次の場面で退場させるを繰り返すその技法に行定監督の腕を感じる。

だが、本作は果たして130分もかけて描く話だったのだろうか?表現に困ったら居酒屋や中華料理屋へ行き過ぎなのではないだろうか?この映画において、アクションのトリガーは「食事をする」ことしかないようだ。必ず、食事のプロセスを通じて登場人物に気づきを与えるのだがそれを何回も繰り返されると、段々と飽きてきます。さらに、中心にいる登場人物以外は捨て駒的扱いだ。折角、大伴が昔の女性友達と情事をしているときに、今ヶ瀬と二人の関係を知る男が登場するのに、修羅場としてのサスペンス描写がなく、その男はその後のエピソードで全く絡んでこない。さらに大伴、今ヶ瀬、そして岡村の三角関係を象徴するように岡村がチーズケーキを渡すシーンがあるのだが、そのチーズケーキの行方を描く描写がない。男二人で貪り食うのか、捨てるのかといった描写を入れることで、恋の揺らぎを表現できるし、タイトルにも繋がっていくのだがそれを拒絶してしまっているのだ。

さらに、繊細な映画を匂わせておきながら、男二人が軽く肩を組んで歩いていると女性に嘲笑われる場面や、今ヶ瀬欲に飢えた大伴が唐突にゲイバーに行きその虚無に泣く場面を挿入するあたりが非常に雑で、見せかけの繊細さに段々と腹が立ってきました。

原作との比較

今回、BL漫画に詳しいカノジョと一緒に観たのだが、3つの点で大きなミスをしていると語っていました。

1.バッドエンドはタブー

商業BL漫画の文法では、ハッピーエンドにするのが定石だとのこと。BL漫画はファンタジーなので、確かにバッドエンドはあれども、最後はハッピーエンドに着地するもので実際に原作はハッピーエンドなのだが(確かに読んでみると映画とは違った)、本作はトンデモバッドエンドになってしまっている。BL漫画の映画化として有効に思えない。

2.受けと攻めは一貫すべき

映画では、攻めの今ヶ瀬/受けの大伴が途中で反転する。これはリバースと呼ばれるもので、BL漫画では「リバ禁止」など攻めと受けの関係が作中で変化する場合は、事前に読者に知らせたりするほど、BL漫画界では重要な要素だそうだ。本作の場合、安易に攻めと受けの関係を変更しているところがBL漫画の映画化として問題だったとカノジョは語っていました。

3.鏡の場面を描くべき

原作を魅せてもらったところ、映画的表現ができる重要シーンが欠落していた。大伴が女性との営み中に鏡に映る自分を見て、自分の中の女性性、受けの側面に気づき赤面する場面だ。これは、サラリーマンとして自分の内面を硬い鎧で覆っていた状態から、鎧が外れ自分の内面と対峙する場面であり、物語の中で一番重要な場面にもかかわらず、映画の中では割愛されている。これは非常にもったいないと私も思った。

最後に

やはり、行定勲監督はクズや人間の内面を描くのがあまり上手くはない。常にクズを描き、いかにも繊細そうに演出しているが、いつも通り空っぽで長時間に渡り虚無の海に顔を押し付けられているような苦痛がありました。本作も今年ワースト候補であります。今泉力哉監督だったらもうちょっと上手く描けたのになーと思うばかりです。

TOHOシネマズ 立川立飛へ行ってきた

先日新しくオープンしたTOHOシネマズ立川立飛へ行ってきました。

JR立川駅から多摩モノレール立川北駅へ移動し、立飛駅で降りて5分ぐらいという若干アクセスが悪いところにあります。

TOHOシネマズといえば薄暗いイメージがあり、階段やエレベータを使って観たい映画のスクリーンへ向かうイメージがあるのですが、ここは土地が広い為か、だだっ広い空間にスクリーンが連なっている珍しいハコとなっています。また、エントランスは横50mぐらいと非常に広々としており、照明もかなり明るくなっています。

この劇場ではTOHOシネマズ初のドリンクバーが導入されており、400円でジューススタンドから飲み物が自由に注げることとなっています。映画をはしごする際に使えそうです。

さて、今回スクリーン6で観たのですが、オススメはI-10,I-12だということが分かりました。映写室の横の空間に座席を押し込んでいる為、まるで個室で映画を観ているような気分を味わえます。デートに使える席だといえます。是非活用してみてください。

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