【ネタバレ】『朝が来る』河瀨直美はスピリチュアルを制御する

朝が来る(2020)

監督:河瀨直美
出演:永作博美、井浦新(ARATA)、蒔田彩珠、浅田美代子、田中偉登etc

評価:55点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

カンヌ国際映画祭が新型コロナウイルス蔓延で中止となり、カンヌレーベルという虚無のラベルがつけられた作品の一つ『朝が来る』が公開されたのでTOHOシネマズ海老名で観てきました。河瀨直美映画との相性は最悪なのですが、これは少し面白かったです。ただ、本作は内容を知らずに観た方がいい作品なのでネタバレ記事とします。

『朝が来る』あらすじ


直木賞、本屋大賞受賞作家・辻村深月のヒューマンミステリー小説で、テレビドラマ化もされた「朝が来る」を、「あん」「光」の河瀬直美監督のメガホンで映画化。栗原清和と佐都子の夫婦は一度は子どもを持つことを諦めるが、特別養子縁組により男の子を迎え入れる。朝斗と名付けられた男の子との幸せな生活がスタートしてから6年後、朝斗の産みの母親「片倉ひかり」を名乗る女性から「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話が突然かかってくる。当時14歳で出産した子を、清和と佐都子のもとへ養子に出すことになったひかりは、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心やさしい少女だった。しかし、訪ねて来たその若い女からは、6年前のひかりの面影をまったく感じることができず……。栗原佐都子役を永作博美、栗原清和役を井浦新、片倉ひかり役を蒔田彩珠、栗原夫婦とひかりを引き合わせる浅見静恵役を浅田美代子がそれぞれ演じる。新型コロナウイルスの影響で通常開催が見送られた、2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」に選出。
映画.comより引用

河瀨直美はスピリチュアルを制御する

幼稚園から電話がかかってくる。息子がジャングルジムから友達を突き落としたようだ。本当に息子が友人を突き落としたのだろうか?責任を回避したい先生は解決策を提示しない。そして友人の母親から病院代を払えと請求され、それを渋ったら暴言を吐かれる。幼稚園・小学校あるあるの厭な諍いをまるで河瀨直美の実体験かのように緻密に描かれていく。しかし、その挿話はどういうことか然程物語に関係してこない。

重要なのは、無精子症である夫と悩みベビーバトンという養子縁組サービスを利用する話と子どもを養子に出す羽目となった中学生のドラマだ。テレンス・マリックはスピリチュアルを毎回制御できずデーモンコアのように暴走してしまうのだが、今回の彼女は『あん』の時同様安定している。スピリチュアルを制御できているのだ。また、彼女はミステリーを描くのが苦手だと割り切り、家族ドラマへ舵切ったのも非常に上手い戦略だと言えよう。養子を授ける側と授かる側のドラマを丁寧に丁寧に描いていく。例えば井浦新演じる無精子症の夫が、後輩との呑みで自分の症状を告白する場面。彼はプライド高い男なので、言葉を選ぶ。「精子と卵子をお見合いさせるんだ」と絞り出すように告白する。このシーンの繊細な駆け引きには泣けてくる。そして、少女のパートも映画ファンであればどんでん返しのフックとなっているであろう広島の施設にいる金髪女は、裏の裏をかかれ伏線として機能させなかったりしている。あくまで人間ドラマが大事だと、二つの世界をじっくりと描いていくのだ。

その潔さには感銘受けたのだが、映画が進むほどに、時系列シャッフルが単なる蛇足な演出に見え、既にわかっているポイントに向かって動くドラマの展開が分かってしまうので退屈に感じてしまった。そして驚くべきことに、この夫婦は蒔田彩珠という美人でオーラ溢れる女性の顔を覚えていないというオチがついていた。いくら金髪くたびれた服装になったとしても顔を見たらその正体分かる筈なのに、夫婦は彼女の正体が分からず追い返してしまうのだ。

確かに、私も人の顔を覚えるの苦手ですが、あそこまで強烈な体験の中心にいる人物の顔やオーラを忘れてしまいキツイ言葉で追い返してしまうのには衝撃を受けました。そういうところのガバガバさ河瀨直美だよな。

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