ざくろ屋敷 バルザック『人間喜劇』より(2006)
監督:深田晃司
出演:志賀廣太郎、ひらたよーこ、堀夏子、山口ゆかりetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MiniTheaterAIDのリターンであるサンクスシアターで深田晃司監督の幻の作品『ざくろ屋敷 バルザック『人間喜劇』より』を観ました。本作は、彼が25歳の時に製作したアニメーション。25歳にしてバルザックを選んでくる渋さから既に非凡さが伺える作品となっています。
『ざくろ屋敷 バルザック『人間喜劇』より』あらすじ
フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの巨大作品群「人間喜劇」の中の1編「ざくろ屋敷」を、画家・深澤研による約70枚のテンペラ画と、古楽器を用いた美しい音楽によって表現したアートアニメ。19世紀フランス。ロワール河近くの丘陵地帯に建つ「ざくろ屋敷」に、美しい母親と2人の男の子が引っ越してくる。母子は3人だけで穏やかな日々を送っていたが、実は母親には死期が迫っていた。声優には、志賀廣太郎ら劇団青年団の俳優たちを起用。
※映画.comより引用
半過去のアニメ
ありがとうございます!恐縮です。デュラスの「インディア・ソング」は大好きで制作当時思い切り参考にしました。15年越しにご指摘頂き嬉しいです。25歳の頃の自分に伝えたいです。 https://t.co/XkiMHBdZWv
— 深田晃司 @映画「本気のしるし」2020年10月9日公開 (@fukada80) July 30, 2020
フランス語には半過去という文化があります。過去において状態が続いている様子を表現する際に使われ、過去に抱いていた感情を表現する時には多用される表現技法である。そんな文化がある為か、文学ではマルセル・プルースト等が、映画の世界ではマルグリット・デュラス等が記憶の移ろいに特化した作品を発表し、その圧倒的な哲学世界が多くの人を虜にしている。
さて、本作は監督も語っている通り当時『インディア・ソング』が好きだった監督が、その技法をアニメに持ち込んで描いた意欲作だ。アニメとはいえ、ほとんど絵が動くことがなく、厳密に言えば静止画をゆったりと動かして描いている紙芝居のような作品である。そんな静止した世界をバックにナレーションが、悲劇に向かって淡々と空間を流れて行きます。『インディア・ソング』がナレーションを軸に、静止しているような人の動きから、記憶を呼び起こす際の異様にゆっくりとした動きというものを再現していた。mまさしく、それをアニメの世界、それもバルザックの世界でやってのけているのです。一見、NHKで放送されそうなアニメに見せかけて超絶高度な技術が盛り込まれているのです。
苦しい未来に起きる悲劇を絞り出すように、絵を思い出していく。そしてそれをゆったりと動かし、感情の線=半過去を紡いでいく。それが終盤になっていくと、レイヤー構造となっていき、窓の外の景色と、手前の景色を微妙にズラして動かしていく。そこに、感情の起伏を込めていくのだ。
かつて、クリス・マルケルは『ラ・ジュテ』で写真とナレーションによる30分の世界で世界中のシネフィルを虜にした。そんなインパクトがこの作品にある。この後『淵に立つ』、『よこがお』といった日本離れした作家性を発揮することを考えると、やはり深田晃司監督は凄いなと思う。
今年はドラマの編集版『本気のしるし 劇場版』が公開される。これは映画館で観なくては!
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