『gerry ジェリー』マット・デイモンが荒野を彷徨う映画

gerry ジェリー(2002)
gerry

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:マット・デイモン、ケイシー・アフレックetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、BARのマスターから、「ガス・ヴァン・サントが監督した、マット・デイモンが荒野を彷徨う映画のタイトルを教えて欲しい」と訊かれたのだが、酔いが回っていたこともあり答えられなかった。後日、その正体が『gerry ジェリー』だと知った。本作は、カイエ・デュ・シネマがガス・ヴァン・サントに夢中だった頃の作品であり、なんと2002年と2004年の年間ベストに選出された偉業を成し遂げている。ガス・ヴァン・サントは映画に嵌り始めた中高時代に結構見ていたのだが、彼の心象世界映画は結構抜け落ちていて最近『マイ・プライベート・アイダホ』を観賞し、自分の中で再評価の動きが強まっている。そして本作を観て、彼の非凡さに感動しました。

『gerry ジェリー』あらすじ


2人の男が砂漠へ迷い込み、ひとりだけが帰ってきたという実際の事件を元に、「エレファント」のガス・バン・サント監督がマット・デイモン、ケイシー・アフレックとともに脚本を考案、2人が砂漠で彷徨うさまを映していく。03年ニューヨーク批評家協会賞撮影賞を受賞した撮影は、「エレファント」「小説家を見つけたら」でもバン・サントと組み、デビッド・フィンチャー監督の「ゲーム」を手掛けたハリス・サビデスが担当。
映画.comより引用

マット・デイモンが荒野を彷徨う映画

マット・デイモン演じる《ジェリー》は、ケイシー・アフレック演じるジェリー《ジェリー》と共に夕日に照らされ黄金に光るハイウェイを走る。感傷的な音楽で照らされるハイウェイは、彼らだけの時間を優しく包み込む。やがて彼らは車を降り、《荒野の小道》を歩く。しかし、どういうわけか他の観光客を避けるように「こっちへ行こう」マット・デイモンがケイシー・アフレックを導く。子連れが立小便をするマット・デイモンの方へ近づいてくる。すると、彼らはもっと誰もいない荒野の深部へ逃げていく。同性愛のような触れ合いをしながら、微笑み荒野を突き進む彼らはやがて気づく。

「道に迷った」と。

しかし、何故か彼ら二人は楽しそうだ。焚き火を囲って、笑いながら「君のこと嫌いだよ」と冗談を交わす。実話を元にしたサバイバル映画でありながら、孤独と友情の心象世界をガス・ヴァン・サントはアルゼンチン、デスバレー、ボンネビル・ソルトフラッツの雄大な荒野をバックに描く。ケイシー・アフレックが大きな岩に登るのだが、降りられなくなってしまう。そんな彼が飛び降りる場所を作り、なんとか窮地を脱出する描写をフィックスされた空間の中で10分近くカットなしで描いたり、突然360度白い大地の中で彼らが交わる。しまいには、二人が草臥れ、心の内を吐露しているのに、何故か遠くで人影が映る。この男は誰だと思っていると正体はマット・デイモンで、ケイシー・アフレックはマットの虚像に向かって話していたことがわかるといった前衛的な演出が施されているのだ。

ガス・ヴァン・サントは『仮面/ペルソナ』的な自問自答の演出を実話に重ね合わせ、それでもって同性愛が社会の影で愛を育もうとする様を描こうとしていたのではと推察することができる。そして、本作を踏まえて似た構図を持つ『追憶の森』を振り返ると奥深かったりする。本作は、生を渇望する物語に対して『追憶の森』は死を渇望する物語である。ガス・ヴァン・サントが全盛期に描いてきた同性愛的要素を薄めて『追憶の森』を描いているのだが、撮影のキレが弱くなってしまったという印象がある。そう考えると、『マイ・プライベート・アイダホ』含めこの頃のガス・ヴァン・サントが組む撮影監督のセンスの良さに好感を抱きました。

とはいえ、カイエが2年もベストテンに選ぶほどの傑作かと訊かれたら微妙なところがあり、特にあからさまな『サタンタンゴ』オマージュや『仮面/ペルソナ』演出には芸のなさを感じた。

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