【Netflix】『ザ・ファイブ・ブラッズ』Black Lives Matterに捧ぐ無意識なる差別

ザ・ファイブ・ブラッズ(2020)
Da 5 Bloods

監督:スパイク・リー
出演:チャドウィック・ボーズマン、ジャン・レノ、ポール・ウォルター・ハウザー、ジョナサン・メイジャーズetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

Netflixでスパイク・リー最新作『ザ・ファイブ・ブラッズ』が配信された。スパイク・リーといえば、『ドゥ・ザ・ライト・シング』、『マルコムX』でブラックムービーの歴史を塗り替えた監督として有名だが、2000年代以降は小粒な作品、あるいは政治的主張第一によって映画としての面白さが失われた作品を量産し、すっかり枯れてしまったイメージがある。そして『ジャンゴ 繋がれざる者』の時にはクエンティン・タランティーノに噛み付いたりしていることから、あまり使いたくない言葉だが《老害》のイメージがあった。

ただ、ジョーダン・ピールを脇に携え制作した『ブラック・クランズマン』で初期のアート×エンタメ×社会批判のバランス感覚を取り戻した。そんな彼が、Amazonから離れ、Netflixと手を結び世に放った新作『ザ・ファイブ・ブラッズ』は『ドゥ・ザ・ライト・シング』時代にようやく戻ってきた作品であった。

まさしく、おかえりスパイク・リーである。

『ザ・ファイブ・ブラッズ』あらすじ


ベトナム戦争からほぼ半世紀。ともに戦った4人の黒人退役軍人が、隊長の亡骸と埋められた金塊を探し出すために戦場へと舞い戻る。スパイク・リー監督作品。
Netflixサイト

Black Lives Matterに捧ぐ無意識なる差別

今、アメリカではBlack Lives Matter運動が盛んだ。そして、グローバルな思想として、「白人だろうとも、誰の命も大切なのでは?」という問題提起は、社会的弱者の問題を矮小化してしまうという内容がTwitterでも流布されるようになった。一方で、まるでかつてのブラックパンサー党のように過激派に出る黒人も少なくなく、「Black Lives Matter」を盾に白人へ暴力を振るうケースもチラホラTwitterで見かけている。

実は、スパイク・リーはこの複雑な問題を『ドゥ・ザ・ライト・シング』で描いていた。多くのブラックムービーが、それこそ監督がリアルタイムに観てきたブラックスプロイテーション作品は、黒人vs白人の二項対立に持ち込んでいた。しかし、実際には被害者である黒人も別の差別をしているのではと彼は考えていた。映画の中では、白人だけではなく、韓国系雑貨店やプエルトリコ系にちょっかいを出す厄介な黒人像を描き、ヒップホップ全開コミカルなブラックムービーでありながらも黒人の中にある問題に目を向けていた。

そして、Black Lives Matter運動が激化する今、彼はもう一度この差別と向き合った。

ベトナム戦争を生き抜いた黒人たちが、殉職した隊長の遺した財宝を求め、ベトナムに戻ってくる話には、被害者もまた加害者であり、加害者である自己に気づけない時の厄介さを捉えている。彼らは、ベトナム戦争を白人の為に働いた。ある種の奴隷として戦った意識がある。そして、彼らはベトナム人に対して横暴な態度をとる。募金に来た少年を口汚くあしらったりするのだ。彼らは、自分も被害者だというのを盾にして、ベトナム人を差別して回るのだ。そのタチの悪さをコミカルさで演出してみせるところに、スパイク・リーの鋭い社会批判がこめられている。誰しもが内なる差別を持っていて、それに気づかなければBlack Lives Matter含め、この世の問題は解決しないと。

無論、社会批評ありきで作っている為、例に漏れず映画演出的には冗長で退屈する部分も多い。でも、『地獄の黙示録』をフィーチャーしたクラブで踊り狂い、白人の奴隷的状態から解放された自分達に酔う黒人像の気持ち悪さはなかなか観ることのできない視点と言えよう。

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