ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~(2011)
Wuthering Heights
監督:アンドレア・アーノルド
出演:カヤ・スコデラーリオ、ジェームズ・ハウソン、ソロモン・グレイヴ、ポール・ヒルトンetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。皆さんはアンドレア・アーノルド監督をご存知だろうか?彼女はまだ4本しか長編映画を撮っていないにもかかわらず、その内3作品(『Red Road』、『フィッシュ・タンク』、『アメリカン・ハニー』)でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞しているとんでもないキャリアの持ち主だ。彼女はケリー・ライヒャルト同様、SOMEWHERESとANYWHERESの狭間を一貫して描いており閉塞感と開放感のバランスに長けた作品を放っています。本来であればカンヌ国際映画祭で新作『Cow』がお披露目となった筈なのですが、この情勢下につき、現状お披露目の機会を失っています。
ってわけで彼女が唯一カンヌに出品しなかった『嵐が丘』を観ました。
※2021/2/20から開催されるオンライン映画祭「本と音楽の映画祭 Home School Edition」で邦題『ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~』として配信決まりました。ヨカッタヨカッタ。
『ワザリング・ハイツ ~嵐が丘~』あらすじ
A poor boy of unknown origins is rescued from poverty and taken in by the Earnshaw family where he develops an intense relationship with his young foster sister, Cathy.
訳:出自不明の貧しい少年が貧困から救い出され、アーンショー家に引き取られ、彼は幼い里親の妹キャシーと激しい関係を築いていく。
※IMDbより引用
ジャンゴ 繋がれざる者は霧の中で
仄暗い荒涼とした土地で黒人のヒースクリフがキャサリンに想いを寄せるも、大人たちの激しい暴力に打ちのめされていく。心が汚れた状態を象徴するかのように、汚く暗い景色が画面を覆うのだが、その薄ボンヤリとした空間の中をなんとか立ち上がろうとするヒースクリフ、そしてキャサリンが絵になる。絵画は、とある物語の一部を切り取ったものだが、この作品はその絵になる瞬間の過程を描くことで、その瞬間が切なく美しいものだと感じる。
さて『嵐が丘』ファンはおやおや?と思うことでしょう、エミリー・ブロンテの名作悲劇の映画は数多存在するが、その中でも珍しくヒースクリフが黒人となっているのだ。これはある種の危険な賭けである。2010年代は、既存の価値観を壊し社会問題へコミットしていく作品が流行した時代である。ハリウッド大作では、男女を入れ替えたリメイクが盛んに作られた。ディズニー映画も、既存の白馬に乗った王子様に従順と救われていく話を解体し、強い女性像を前面に打ち出してきた。しかし、こういった作品は本質を間違えれば、主張したいが為にキャラクターを変えただけという安易さが臭みとなって出てきてしまうのだ。ましてや、孤児の役を黒人の孤児に変えることはあまりにもメッセージ性が強いので、しっかり演出しないと炎上してしまう危険な脚色だ。
だが、アンドレア・アーノルドは見事にやってのけた。これは下手なリップサービスのない『ジャンゴ 繋がれざる者』なのだ。保護されたものの、激しい暴力と差別に耐えきれず失踪したヒースクリフは憎しみを宿しながら故郷に帰ってくる。そして本能的暴力性の矛先を愛するキャサリンに向ける。そして希望が見えない絶望を象徴するような霧の荒野で、荒々しいカメラワークとふと静止する間の波に乗って暴力の連鎖を描き切ったアンドレア・アーノルドの技量に大興奮しました。
これは原作も読んでみたいところです。
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