【第9回死刑映画週間】『眠る村』司法も村も《自白》に眠る

眠る村(2019)

監督:鎌田麗香、齊藤潤一
ナレーション:仲代達矢

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

東海テレビドキュメンタリー2019。昨年見逃してしまったのですが、ユーロスペースの死刑映画特集で上映されていたので、観ることができました。

『眠る村』概要


「ヤクザと憲法」「人生フルーツ」など数々の社会派作品を送り出してきた東海テレビ製作によるドキュメンタリー劇場版の第11弾。戦後唯一、司法が無罪から逆転死刑判決を下した事件として知られる「名張毒ぶどう事件」の謎を追った。三重と奈良にまたがる葛尾で昭和36年、村の懇親会でぶどう酒に混入されていた毒物による中毒で5人が死亡し、当時35歳の奥西勝が逮捕される。一審で無罪となった奥西だったが、二審で死刑判決、そして最高裁は上告を棄却。昭和47年、奥西は確定死刑囚となり、独房から再審を求め続けたが平成27年10月、獄中で帰らぬ人となる。本作では、奥西の自白の信憑性や、二転三転した関係者の供述、そして再審を拒む司法など、事件から57年を経たいまも残る多くの謎に迫っていく。獄中の奥西の半生を描いた劇映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」で奥西を演じた経験のある名優・仲代達矢がナレーションを担当。
映画.comより引用

司法も村も《自白》に眠る

高校時代、公民の授業で習った名張毒ぶどう事件を掘り下げていく内容。高校時代、試験の為に名前だけ覚えていたのだが、本作を観ると非常に興味深い事件でありました。

『殺人の追憶』や『ゾディアック』といった作品のように、真相/犯人不明な状態でも面白く演出できることを東海テレビは証明しました。

三重と奈良にまたがる葛尾村。かつては、公民館に集まり和気藹々としていた村だったが、ぶどう酒に毒が入れられたことで5名が亡くなってしまう。犯人はすぐに明らかとなり、奥西勝が逮捕される。しかし、後に彼は警察に自白を強要されたと訴え、無罪を要求し始める。誰も予想だにしなかっただろう。この裁判は50年経った今でも満足に決着がついていないことに。

弁護団は、各時代最新の技術を用いて矛盾を問いただす。奥西勝は歯でぶどう酒の栓を抜いたとされるが、栓には彼の歯形はついていなかった。また、入れられた毒薬も彼が持っていたのとは違うし、一度何者かが包装し直した形跡がある。

しかし、裁判長は科学よりも自白の方が信憑性が高いとし、弁護団の申し立てを棄却してしまう。

すっかり事件後、三重と奈良に分断された葛尾では、外部が50年も自分たちの過去を探る様に嫌気が差している。どうやら、彼らにも墓場に持っていきたい過去があるらしい。何故、あることを境に村人は「間違っていました」と供述を変えたのかは藪の中だ。

本作はミステリー小説を読み解くように、村に眠る不可解な事件の世界へと誘う。そして、人間が判断する以上どうしても生じてしまう力関係で、真相が闇に葬られている現状を見つめた作品でした。

ブロトピ:映画ブログ更新
ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です