ようこそ、革命シネマへ※旧題:木々について語ること~トーキング・アバウト・ツリーズ(2019)
Talking About Trees
監督:スハイブ・ガスメルバリ
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
山形国際ドキュメンタリー映画祭で観逃した『木々について語ること』をカイエ・デュ・シネマが満点評価、監督インタビュー記事まで作っていたので観てみました。スーダン映画という未知に迫ることができる非常に面白いドキュメンタリーだったので紹介します。なお、本作は邦題『ようこそ、革命シネマへ』改め、3月ユーロスペースにて公開が決まりました。
『ようこそ、革命シネマへ』あらすじ
Four older Sudanese filmmakers with passion for film battle to bring cinema-going back to Sudan, not without resistance. Their ‘Sudanese Film Club’ have decided to revive an old cinema, and again draw attention to Sudanese film history.
訳:抵抗なしではなく、映画をスーダンに持ち帰りたいという映画の戦いに情熱を傾ける4人の高齢のスーダン映画製作者。彼らの「スーダン映画クラブ」は、古い映画館を復活させ、再びスーダン映画の歴史に注意を引くことにしました。
※imdbより引用
スーダンにもあった『ニュー・シネマ・パラダイス』
カメラは小型化した。スマホでも映画が撮れるようになり、『タンジェリン』や『アンセイン』といった全編スマホ撮影映画が生まれた訳だが、その恩恵は映画を撮ることが難しい国へと波及していった。例えば『ミッドナイト・トラベラー』ではタリバン政権によって暗殺を宣言された映画家族が、3台のスマホで、難民としてサバイバル姿を撮る。これによってなかなか明るみにでない難民の発生から、逃避行のルートを捉えた。
さて、映画が死んだと言われるスーダンでもスマホを使って映画を作る者を描いた作品が生まれた。『ようこそ、革命シネマへ』は1989年のクーデター以降映画が作れなくなり完全に世界から分断されてしまったスーダンにおける、Manar, Altayeb, Ibrahim, Suleimanの4人からなる爺さん映画グループの闘いを描いている。
ドイツ、ロシア、エジプトで映画の勉強をしてきた彼らはスーダンに戻ってくる。かつては沢山あった映画館もオマル・アル=バシール政権以降の強烈な検閲により、今や廃墟となっている。
そんな世界の中で彼らは、透明なカメラで暗い部屋で演技をする。そんな彼らは、スマホというツールを使って映画を撮り始める。また朽ち果てた映画館から出土した映画のフィルムに興奮し、仲間とチャップリンの『モダン・タイムス』を観る。そんな彼らは、映画の面白さを伝えるために映画の上映会を計画する。
すると人々が集まってくる。
「やっぱ映画は、部屋で一人で観るんじゃつまんねぇな。」と男は語る。
爺さんは、子どもたちに「何が観たい?」と訊く。
『スター・ウォーズ』やインド映画といった名前が浮かぶ。しかし、検閲を恐れ映画上映は夜にひっそりと行われる。映画愛好家御用達の動画再生ソフトウェアVLCを使って、モーリタニアの巨匠メド・オンドによる作品『Sarraounia』を上映する。
カイエ・デュ・シネマのスハイブ・ガスメルバリインタビューによれば1979年にスーダンで生まれ、物心ついた頃には映画が規制されてしまったとのこと。Ibrahimは16歳の頃に、暴動に巻き込まれ家族さながら強制退去させられただけに生存すら危ぶまれていたのですが、奇跡的に生き残り短編映画『Camel』を作っていた。その共産主義映画に込められた詩的メッセージに心打たれ映画の可能性を感じたものの、映画的ものがないことにがっかりした。そこでスーダン映画を作ろうと監督はパリに戻ってプロジェクトを始動させるが上手くいかず一旦は頓挫してしまう。そんな中映画に出てくる4人のシネフィルが集まり欲望のままに映画を作る夢を叶えようとするのです。
情報化社会で、シネフィルが集まりやすくなり、そしてカメラが小型化し隠し撮りで想い想いの作品を作れるようになり、映画の上映もパソコン1台でできるようになった世界で失われたスーダン映画文化に光を与えていく。2010年代最も熱い、映画愛映画でありました。
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