『クロース』これこそ第92回アカデミー賞長編アニメーション賞を獲るべき作品だ

クロース(2019)
Klaus

監督:Sergio Pablos
出演:ジェイソン・シュワルツマン、ラシダ・ジョーンズ、J・K・シモンズ、ジョーン・キューザックetc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、第92回アカデミー賞ノミネートが発表されました。今回意外だったのは、長編アニメーション賞にNetflixオリジナルアニメーションの『クロース』がノミネートされたところです。ディズニー/ピクサー枠『トイ・ストーリー4』、ドリームワークス枠『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』、ライカ枠『ミッシング・リンク』、アート映画枠『失くした体』、そして日本映画枠『天気の子』となるはずだったのですが、日本映画枠を叩き潰してNetflixが食い込んだのです。Netflixの戦術は巧みだ。1枠しかないアート映画枠、もう作品が決まっている映画会社枠の間を縫うタッチと王道物語を紡ぐことで、ノミネート枠が残されていないように見える長編アニメーション賞の土俵へ上がることができたのです。ただ、実際に観てみると、これこそが長編アニメーション賞を獲るに相応しい作品だと思いました。『トイ・ストーリー4』になんてあげている場合ではないと痛感させられたのです。

『クロース』あらすじ


自己中な郵便配達員と人を寄せ付けないおもちゃ職人。この2人がなぜかいっしょに、暗く凍てつく町にオモチャを配達。芽生えた友情は、喜びと奇跡をもたらす。
Netflixより引用

言葉こそ平和をもたらすことを証明した傑作

これこそ、子どもに魅せたい。何故ならば、言葉を使ってコミュニケーションすることで平和が訪れることをディズニー/ピクサー映画のような説教臭さを0で描ききっているのだから。主人公のジェスパーはボンボンだ。郵便配達業で財を築いたブルジョワ家庭のボンボンだ。彼はその富に胡坐をかき、真面目に郵便配達の仕事をしない。遂にキレた父により、北国の僻地へ左遷させられる。郵便配達のノルマを達成できなければ、家から追い出すというのだ。

渋々、北国へやってきた彼だったが、どうも村の様子がおかしい。殺伐としているのだ。大人たちは罵り合い、戦争を繰り返している。そして、敵同士同じ教育は受けさせないと、親は学校に子供を通わせない。故に学校は魚屋さんとしてしか機能していない。そんな修羅の国でも、いかに狡猾に郵便配達数を稼げるかしか考えていない彼は、ヒョコんなことから子どもたちに「手紙を書けばおもちゃあげるよ」と言いふらし、手紙を集めていくのです。彼にとって、手紙さえ集められれば手段は問わない。文字を書けないサーミ人の子どもに文字を書けるように勉強させようと、学校再開に注力したり、ヘイト的行動に躍起となっている子どもたちには「悪い子にはおもちゃあげないぞ」と言葉巧みに巻き込んで手紙を集めていくのです。

そして出会った孤独なおもちゃ職人クロースですら言葉巧みに言いくるめて、おもちゃの在庫を集めていく。ドジで間抜けで、なのにキザなジェスパーがWin-Winの関係で徳を積んでいく姿がイカしており魅力的だ。言葉で伝えないことは暴力的で殺伐とした世界を生む。そこに蓄積される憎悪は子どもにまで伝播する様を説得力持って、尚且つドイツ表現主義的な奇妙な造形による面白さで描いていくバランス感覚に感銘を受けた。そして着地点も、決して全て丸く収めようとするのではなく、リアル路線に着地し、あくまでもジェスパーらしい生き様とは何かに特化しているところに好感が持てました。

本作は、傑作クリスマス映画の土俵にはあがれるし、子ども向けアニメーションとして非常に優秀な一本でありました。

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