ラストレター(2020)
Last Letter
監督:岩井俊二
出演:福山雅治、広瀬すず、森七菜、庵野秀明、松たか子etc
評価:65点
おはようございます、チェ・ブンブンです。『Love Letter』、『スワロウテイル』、『リップヴァンウィンクルの花嫁』と独特な世界観を紡ぎ出す岩井俊二最新作が公開されました。風の噂で、相当ヤバい代物らしく、マスコミ試写の段階で大荒れだったんだとか。しかし、蓋を開けてみれば、Twitterの映画ファン大絶賛ではありませんか。気のせいだったのかな?観る予定はなかったのですが、先日映画飲み会で仲間が絶対に観て!と背中を押してくれたこともあり、恐る恐る映画館へ向かいました。なんということでしょう。あまりにどうかしているカルト映画でした。なるほど。これは好き嫌いが分かれる作品だ。ということで、ネタバレありのポエムな文章で本作について語っていきます。
『ラストレター』あらすじ
「Love Letter」「スワロウテイル」の岩井俊二監督が、自身の出身地・宮城を舞台に、手紙の行き違いから始まった2つの世代の男女の恋愛模様と、それぞれの心の再生と成長を描いたラブストーリー。姉・未咲の葬儀に参列した裕里は、未咲の娘・鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内状と未咲が鮎美に遺した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるため同窓会へ行く裕里だったが、学校の人気者だった姉と勘違いされてしまう。そこで初恋の相手・鏡史郎と再会した彼女は、未咲のふりをしたまま彼と文通することに。やがて、その手紙が鮎美のもとへ届いてしまったことで、鮎美は鏡史郎と未咲、そして裕里の学生時代の淡い初恋の思い出をたどりはじめる。主人公・裕里を松たか子、未咲の娘・鮎美と高校生時代の未咲を広瀬すず、鏡史郎を福山雅治、高校生時代の鏡史郎を神木隆之介がそれぞれ演じる。
※映画.comより引用
拝啓 岩井俊二様…
拝啓 岩井俊二様
何故、あなたはここまで恐ろしい童貞ホラーを生み出せたのだろうか?
穢れなき部屋、陽光を沢山掴まえようとするガラス窓から、表面張力激しく主張するミルクが染み出す、、、そんな気持ち悪さ全開な本作は、黒沢清が撮ればホラーになっていただろう物語を岩井俊二の魔法で歪な童貞寓話に変幻させた珍味だったのです。広瀬すず、森七菜による後光差し込む乙女の戯れの側で、聳え立つイチモツを抑え込もうと常時股間に手を置く福山雅治の気持ち悪さが激しく主張する。そして、次々と現れる願望の具現化によって未来が変えられていく。
同窓会に参加するものの、姉に間違えられた裕里(松たか子)は気まずさから、早々に同窓会から撤退する。そしてバスを待っていたら、やぁ僕のこと覚えている?と男が微妙な距離感で座ってくる。MASAHARU FUKUYAMAだ。彼は、姉に欲情しているのだろうか。終始股間を押さえこんでいる。「一杯飲もうよ」、「連絡先教えて」、「ママなんだね」、「僕の本読んでくれた?」とねっとりとした口調で迫る福山雅治に、松たか子同様狼狽を隠せません。しかも、その恐怖は彼から逃れた後も続く。帰宅そうそう、「20年間あなたのことが好きでした」とLINEを寄越してくるのだ。しかも棒読み庵野秀明演じる夫に読まれブチ切れられる始末。スマホを破壊された彼女は、名刺を頼りにお手紙を書く。すると、彼はますます欲情をヒートアップさせ、熱い熱い恋歌を書き始めるのだ。
テン年代ボーイ、令和ガールには想像もつかないだろう。かつて、卒業アルバムやらに生徒の住所や電話番号がズラリと並んでいたことに。彼は、卒業アルバムに書かれた住所を元に、実家へ一方的な恋歌を送り始めるのだ。それを読んでいるのは、彼女の娘たちだというのに。こうして、物語は福山雅治演じる童貞の寓話にシフトしていく。昔から愛していた女性の残像に慰められる話へ変貌を遂げるのだ。全く売れない、こともあろうか彼が恋した女性・未咲をタイトルにした小説を持ち歩き、妹に渡す。彼女が姉出なかったことも既に知っていたと語り始め、彼女の家までにゅっと殴り込みに行く。そして、彼の異様な行動力は、彼女の娘(森七菜)、姉の娘(広瀬すず)のところにまで辿り着いてしまう。「サインちょうだい!」とせがまれる福山雅治は大興奮し、つい数日前に、豊川悦司演じる姉の元カレに「あんたは少しも姉の物語に絡んでないんだよ。1人称で物語書くんじゃねぇよ」と怒られたのに、全く懲りてないのです。終いには、あれだけヒェーと怯えていた妹までも「『未咲』にサイン頂戴!」と言い始める始末。
そして、気持ち悪いながらも超絶面白かったので、観ず嫌いはよくないねと思いました。
岩井俊二様、これからも作家性を暴走させた作品を作り続けてください。
敬具
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