【ブンブンシネマランキング2019】ワースト部門1位は『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』

ブンブンシネマランキング2019:ワースト部門

さあ、今年もこの時がやってきました。毎年言っていることですが、個人的にワーストを決めることは悪くないと思っています。自分の好きを追い求めるためには、自分の嫌いをしっかり分析していく必要があるからです。今年は、意外なことに批評家が絶賛している作品でも、ブンブンの感性からするとイマイチな作品が多かったと思います。また、映画料金が上がったこと、仕事が忙しくなったこともあり、明らかに地雷な作品は避けるようになったことも影響していると言えます。なので、今年のワーストは、割と「えっ、こんなの選ぶんだ」と思う作品が多めとなっています。それでは一本ずつみていきましょう。

※タイトルをクリックするとレビューに飛べます。

1.スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け

監督:J・J・エイブラムス
出演:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、オスカー・アイザックetc

ディズニーは、マーベルを買い、スター・ウォーズも買った。そして、常時世界の興行収入ランキング上位に来るように、フランチャイズがごとく作品を作り続けている。ディズニーは、映画に多様性を持ち込むことで国際平和を実現する大義名分を掲げており、実際に一定のクオリティと社会問題への言及はなされている。そして2010年代、最も成功した映画会社となった。しかし、その淵でトンデモナイ大罪を犯した。

それはフランチャイズ形式で、リレーのように物語を渡していった結果収集がつかなくなり、誰にも怒られない安全策と、膨大な仕事量を2時間半の中で完結しようとする姿勢によって、退屈極まりない作品を爆誕させてしまったことだ。J・J・エイブラムスは確かに、あれだけのしっちゃかめっちゃかなったプロジェクトをなんとか終わらせて魅せた。それでも、あまりにもフォースの扱い、ライトセーバーの扱いが酷く、終いにはカイロ・レンはスター・ウォーズの世界観を台無しにするユニクロファッションもどきで戦い始めてしまう様には涙が出てきました。

映画が好きになったのも『スター・ウォーズ』が最初だったりする。評判の悪い『ファントム・メナス』も割と好きだし、毎回微妙な評価をしているこの新シリーズも何かしらの見所、好きなところはある。でもこれには、アダム・ドライバーの厨二病演技しか取り柄がなかったのだ。

もう観ている間、ずっと南無阿弥陀仏御陀仏状態でした。

2.イソップの思うツボ

監督:上田慎一郎、中泉裕矢、浅沼直也
出演:石川瑠華、井桁弘恵、紅甘、斉藤陽一郎、藤田健彦、髙橋雄祐etc

『カメラを止めるな!』はインディーズ映画に夢を与えるとともに、上田監督もろとも呪いをかけてしまった。上田監督が、昨年の栄光に縛られた状態で撮った本作は、一度きりの大技であった『カメラを止めるな!』のまだ無名であるものたちが知恵を絞って作っている感をアピールし、どんでん返しで興奮を与える手法の焼き直しの域を出ることはなかった。寧ろ、この映画は大学の映画サークルの思い出映画としての役割しか果たしておらず、3つのエピソードの弱すぎる関連性、安っぽい悪の組織描写等、アマチュア映画の悪いところだけが詰まった作品であった。

来年は、上田慎一郎の進化を期待したいところである。

3.カニバ パリ人肉事件38年目の真実

監督:ベレナ・パラベル、ルーシァン・キャスティーヌ=テイラー
出演:佐川一政、佐川純、里見瑤子etc

パリ人肉殺人事件の佐川政一を撮っておけば何か起きるだろうという製作者の傲慢に満ちた作品。しかし、製作者の思惑に反して、老体となり何も語れなくなった佐川一政からは何も新しい情報は出てこない。困った製作者は、ひたすらに彼の顔を撮り、彼を介護する者・佐川純に隠された性癖を暴くことに逃げてしまった。完全に失敗した取材を、成功に魅せようとする様がセコ過ぎて残念な作品であった。

4.ウトヤ島、7月22日

監督:エリック・ポッペ
出演:アンドレア・バーンツェン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ジェニ・スベネビクetc

実際に起きた事件をワンカットで再現する。それで持って歴史のアーカイブと言えるのだから退屈なのは許せと言いたげな、この退屈を極めた作品は、冒頭とラストに「ここに出てくる人物は架空です。事実に基づいたフィクションです。」と予防線を張り、一切の批判を拒絶する用意周到さを持っているが、アーカイブと言いつつも脚色を加えている時点で、それはアーカイブでもなんでもなく映画でしょう。惨劇を映すにしても、ただひたすらに隠れんぼで鬼が近づくのを待っている人を映し出されたらたまったもんじゃない。自国の底で一番食べたいものは何かと聞かれ、ケバブだと答える会話描写も全くもって無意味で、ただただつまらない隠れんぼの様子を魅せられているだけの映画でした。今年は、特に真面目さに逃げたダメダメ映画と遭遇する率が高く悲しくなりました。

5.解放区

監督:太田信吾
出演:太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤亮、岸建太朗etc

ここ近年は、閉塞感ものが簡単に賞を受賞してしまう現状に違和感を感じており、社会的弱者を寄り添っているように描いていれば観客は付いてくるでしょといったノリに幻滅するようになった。さて助成金を巡ってトラブルが発生し、長らく公開されなかった『解放区』は、大阪のドヤ街あいりん地区をどこか見下すドキュメンタリー作家を通じて、弱者はさらなる弱者を追い求める様を捉えている作品なのだが、完全にあいりん地区の表面的な所にしか食い込めておらず、製作者の弱腰が見え見えな作品となっている。それにより、Youtuberのあいりん地区潜入動画と大差ないクオリティで、ドキュメンタリー作家が出会うイベントは、あいりん地区といえばこうでしょといった事象の羅列に過ぎなかった。なんだか、製作者ことこの映画の主人公のように弱者を見下している感じがして厭でした。

6.ドラゴンクエスト ユア・ストーリー

監督:山崎貴、八木竜一、花房真
声の出演:佐藤健、有村架純、波瑠、坂口健太郎、山田孝之、ケンドーコバヤシ、安田顕、古田新太、松尾スズキ、山寺宏一etc

日本の映画ファンにとってサンドバッグ扱い、毎回酷評祭りとなる山崎貴が白羽の矢が立ってしまった為、いやいや作った本作は、『ドラゴンクエスト』というコンテンツでファンダムに復讐する大惨事映画であった。ゲームのダイジェスト映像が延々と流れ、映画的カタルシスは生まれない。「スキップ」を押して、重要な話を飛ばしまくっているRTA動画を魅せられている感じがした。しかし、それだけならある程度予想がつくものの、本作は最後の最後で絶望的且つ前衛的なイオナズンを観客に放った。これは映画世界遺産における原爆ドームだ。負の遺産として語り継がねばならない。それ以降、嫌いながらも山崎貴に哀れみの目でもって作品を評価するようになりました。

7.ネバーランドにさよならを

監督:ダン・リード
出演:マイケル・ジャクソン、ウェイド・ロブソンetc

ドキュメンタリー映画を学ぶ者は絶対に観て欲しい負の映画遺産。マイケル・ジャクソンは性的虐待を行なっていたという決めつけによって、被写体の発言を誘導的に演出したことによって、炎上。恐らく半分は真実だと思われる実際の被害をマイケル・ジャクソンファンによって潰される事態となった。告発系ドキュメンタリー映画は、裁判ではないので、ある程度の主張ありきに撮られるものだが、監督の敷いたレールに沿うように被写体をコントロールするのは危険なことだ。確かに、『ゆきゆきて、神軍』でもこの手法は使われているのだが、いかんせん『ネバーランドにさよならを』は偏向報道級に偏っていて真実すら大幅に捻じ曲げようとしている作品なので危険極まりない。

8.お米とおっぱい。

監督:上田慎一郎
出演:高木公佑、鐘築健二、大塩武、山口友和、中村だいぞうetc

『12人の優しい日本人』にインスパイアされたと思われる本作は、完全なる劣化版。「お米とおっぱい、生きるためにはどっちが必要?」という出オチな命題に対して、ディスカッションが行われるのだが、カメラの切り返しがあまりにもテキトーであり、なおかつ映画が進めば進むほど、どうでもいい議論になってしまう致命的な映画であった。まだ、おしり派vsおっぱい派論争にした方が面白かったと思う。

9.ニーナ・ウー

監督:ミディ・ジー
出演:ウー・クーシー、ビビアン・ソン、キミ・シアetc

この映画はセクハラは酷い!というメッセージを伝える為だけに、挿話が配置されている厄介な作品だ。彼女が悲しい顔をしながら、映画撮影に望むのだが、まだ何も起きていないのに、私は薄幸の乙女なのという顔をしているところにその強烈すぎるメッセージが見えている。そしてそれ故に、映画が進めば進むほど、点を置いているだけで線になっていないし、ポール・シニャックのような点描画としてセクハラ描写を描いているにしてもテンプレートを並べているだけな感じがして非常にガッカリした。

10.家族を想うとき

監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェンズ、デビー・ハニーウッド、リス・ストーンetc

えっなんでケン・ローチがワーストなの?と思うかもしれない。もちろん、ブンブンがケン・ローチ嫌いということもあるのだが、『わたしは、ダニエル・ブレイク』から輪をかけて酷くなっておりゲンナリさせられました。リアリズムの映画であるにもかかわらず、メッセージありきで人物造形をするので、インテリだが引きこもりで、平日は街にて落書き活動するという詰め込みすぎな息子造形になっていたり、都合よく奪われた荷物の中にパスポートが入っていたりする。台詞は全て説明のための台詞となっており、電話の内容も逐一台詞で説明してしまっている。演出力のなさを、「ケン・ローチは演出力を犠牲にしてまでこれを描く必要があった」とか「今作らねばならない」といったことに逃げてしまう厭らしさを感じた。

と同時に、この映画はできるだけ多くの人、特に日本人が観なくてはいけない作品だという厄介さも持っている。ここで描かれる休憩時間の話やら、居留守、不在件数が少ない宅配事情を観ると、日本の方がさらに地獄の底をいっていることに気づかされ悲しくなってきます。同じく演出力のなさを製作の意義に逃げてしまった『Girl/ガール』と悩んだのですが、本作を10位に入れることにしました。

最後に…

社会人3年目になると、大きなプロジェクトを任され、なかなか定時に帰れなくなります。休日も、注目作品を中心に行くので、もはや大学生時代のようにみるからにつまらなそうな映画を観る時間がなくなってしまいました。そうすると、期待して観にいってガッカリした作品が残るようになります。近年、SNSの発達で、すぐに炎上する世の中となりました。そして、エンターテイメントのように炎上を求める人も出現しました。

だからこそ映画は冷静であってほしいと思うばかりです。無論、今回のワーストに挙げた作品は重要な問題を扱っている作品があり、作られた意義は大いにあります。しかし、冷静さを失い、問題提起することしか頭にない作品は凄く退屈に感じます。映画としての切り口として、そういった問題に向かい合ってほしいなと思います。

その点、今年の日本映画は優秀な作品が多く、『チワワちゃん』に始まり、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』、『よこがお』、『東京干潟』、『殺さない彼と死なない彼女』などといった作品は冷静に且つ映画的面白さをもって社会問題と向かい合っていました。

来年は1月しょっぱなから、日本の刑務所にカメラを向けた『プリズン・サークル』が公開され、2月にはシリア内戦に至近距離から迫った『娘は戦場で生まれた』が観られます。原一男や大林宣彦の新作も控えているので楽しみであります。
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