【日本未公開映画】『ハレー/HALLEY』朽ち果てても働かねばならぬ、誰も彼のことは知らない

ハレー(2012)
HALLEY

監督:セバスチャン・ホフマン
出演:Alberto Trujillo、Lourdes Trueba etc

評価:85点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、映画仲間と呑み会で、メキシコに面白いゾンビ映画があることを知った。『ハレー』は2014年にイメージフォーラムフェスティバルにて限定的に公開された作品。男が朽ち果てていく様子を描いた作品なんだそうだ。話を聞くに、人がどんどん溶けていく『溶解人間』に近い魅力があるだろうと思い、探し回ってみた。すると米国iTunesにて配信されているではありませんか!年末のベストテン作り追い込みのため、問答無用レンタルしてみた。

『ハレー』あらすじ


アルベルトは24時間営業のジムで夜警の仕事をしているが、体調が優れない。—実は彼は死んでいるのだ。彼の肉体は少しずつ崩壊しはじめており、すでに日常生活を送るのにも支障が出てきている。現代社会において彼は果たして自分の居場所を見つけることができるのだろうか? カルロス・レイガダスなど強烈な個性の映画作家を輩出しているメキシコが生んだ新たな才能、セバスチャン・ホフマンによるアート系ゾンビ映画。シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀作品賞受賞。
※イメージフォーラムフェスティバル2014より引用

セバスチャン・ホフマンとは?

まずは、このアート系ゾンビ映画を制作したセバスチャン・ホフマンについて軽く語るとしよう。

彼はメキシコ出身の映画監督兼ヴィジュアルアーティストである。マイケル・ベイやザック・スナイダーを輩出したことで有名なカリフォルニア州パサデナにある美術大学アートセンター・カレッジ・オブ・デザインで学士号を取得しました。また、『ハピネス』のトッド・ソロンズによる脚本クラスで彼は映画の勉強をしました。メキシコの伝説的教師を描いた『La guerrilla y la esperanza: Lucio Cabañas(2005)』やロックバンドBotellita de Jerezに迫った『Naco es chido(2009)』などといったドキュメンタリー作品を撮った後、本作『HALLEY』で長編劇映画デビューを果たします。本作は、ファンタスティック映画祭の名門シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀作品賞受賞する快挙を成し遂げています。彼は昨年、6年ぶりに新作ホラー『Tiempo compartido(2018)』を発表、これがサンダンス映画祭で審査員賞を受賞していたりします。2020年代期待の監督の一人と言えます。

これは日本かな?

主人公アルベルトは、身体がドンドン朽ち果てていく謎の病に悩まされている。しかし、彼には仕事がある。病気がバレると仕事ができなくなってしまう。なので、彼は薬を飲み、身体に防腐剤をかけ、真顔で今日も会社にいく。しかし、彼が病気なのは顔を見れば明らか。時たま、「大丈夫?」と訊かれるが、彼は残された体力を振り絞って平静を保とうとする。一方で、街に出ると、誰も彼のことを気にしてはくれない。教会に行こうとも彼は単なる背景だ。そうこうしているうちに、彼は地下鉄の中でぐったりとしてしまう。地下道で倒れてしまう。しかし、街の人々は見て見ぬ振りをするのだ。

これはゾンビ映画という殻を被った現代社会風刺だ。人々は、仕事に終われ、生きるために病気であることを押し殺してまで仕事場に向かう。病気であることが明るみに出るとクビになるかもしれない。病院に通えば、時間とお金が取られてしまう。だから人は、自分を押し殺して職場へ向かうのだ。それは、周りに対して盲目になることである。周囲に振り回されては、職場にいけない。だから人々は目の前で人が倒れていても、見て見ぬ振りをする。地下鉄でぐったりしている彼からワザと目を反らすのです。

あれあれあれ?これってどこかで見たことありませんか?

そうです!日本そのものなのです。

日本では朝の通勤ラッシュ時に体調が悪くなり、緊急ボタンを押す人にバッシングすることが一時期社会問題となった。また、国連による世界幸福度ランキング2019では社会的寛容さが92位と他者に対する無関心が際立った結果となった。実際に、街で困っている人がいても誰も助けようとしない。あるいは人身事故があれば、一斉にその現場をスマホで撮ろうとする嫌な社会になってしまった。

本作は、2014年のイメージフォーラムフェスティバル時、日本公開は難しいという話があったらしく、結局一般公開しなかった。しかしながら、本作は人の振り見て我が振り直せ、今の日本に必要な作品なのかもしれない。それを抜きにしても、ジョージ・A・ロメロ的、社会風刺としてのゾンビ造形が非常に上手い作品であった。

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