カイエ・デュ・シネマ2010年代ベストテン発表! デヴィッド・リンチ系映画好き過ぎかよ!

カイエ・デュ・シネマ2010年代ベストテン発表!

おはようございます、チェ・ブンブンです。

昨日の夜、カイエ・デュ・シネマが2010年代のベストテンを発表しました。1990年代から10年おきに開催されるこの大きなベストテンは、10年分の好みが濃縮される為、かなりとんがったものとなっている。下記が過去の結果である。こうして見ると、やたらとデヴィッド・リンチ好きな傾向があります。1990年代には、テレビシリーズである『ツイン・ピークス』をベストテンに入れている程にデヴィッド・リンチ的世界観を愛していると言えます。後は、作家の個性がギラついている作品が選ばれる傾向にあります。

※例年のベストテンに関してはKnights of Odessaさんが素晴らしいアーカイブ記事《カイエ・デュ・シネマ 歴代トップ10 完全版(1951~2018)!!!》を作っているので、そこで確認してくれ!

カイエ・デュ・シネマ公式

1990年代ベストテン

1.マディソン郡の橋(クリント・イーストウッド)
1.カリートの道(ブライアン・デ・パルマ)
1.憂鬱な楽園(ホウ・シャオシェン)
4.クローズ・アップ(アッバス・キアロスタミ)
4.アイズ・ワイド・シャット(スタンリー・キューブリック)
4.ツイン・ピークス(デヴィッド・リンチ)
4.許されざる者(クリント・イーストウッド)
8.クラッシュ(デヴィッド・クローネンバーグ)
8.シザーハンズ(ティム・バートン)
8.河(ツァイ・ミンリャン)

2000年代ベストテン

1.マルホランド・ドライブ(デヴィッド・リンチ)
2.エレファント(ガス・ヴァン・サント)
3.トロピカル・マラディ(アピチャッポン・ウィーラセタクン)
4.グエムル -漢江の怪物-(ポン・ジュノ)
5.ヒストリー・オブ・バイオレンス(デヴィッド・クローネンバーグ)
6.クスクス粒の秘密(アブデラティフ・ケシシュ)
7.鉄西区(ワン・ビン)
8.宇宙戦争(スティーヴン・スピルバーグ)
9.ニュー・ワールド(テレンス・マリック)
10.10話(アッバス・キアロスタミ)

2010年代ベストテン

さて、2010年代ベストテンを一つずつ観ていきましょう。今回は、前2回と比べて明らかにトンガリ具合が違います。Netflix等のサービスが普及し、世界同時的にあらゆる映画にアクセスできるようになった。映画の視聴形態も大きく変化しただけあってトンデモナイことになっていました。

1.ツイン・ピークス The Return(デヴィッド・リンチ)

うん、当然だろう。2017年の栄冠に輝いたデヴィッド・リンチのドラマシリーズは、奇跡的に制作の主導権を全て彼が持ってしまった為に生み出された化け物だ。映画、テレビシリーズの垣根をメルトダウンさせ、高橋ヨシキ、町山智浩などといった映画評論家ですらまともに言語化することが困難だった異常な世界観がベストワンに入らないわけがなかった。ローラ・パーマーって結局なんだったの?1話を観れば分かる。それは解決してはいけない問題だと。積み上げていったストーリーを破壊し、全18話のうちほとんどが、前シリーズの主人公クーパー捜査官が記憶喪失となり彷徨う様で全く事態が展開しない様にワクワクドキドキが止まらない。第8話で魅せたどうかしている前衛映像含めて、これは2010年代最強の怪物といえるでしょう。これにはブンブンも納得である。

2.ホーリー・モーターズ(レオス・カラックス)

1位が『ツイン・ピークス The Return』なら必然と2位にワケワカメの宝石『ホーリー・モーターズ』がやってくる。5~10年に1本ペースでしか映画が作られないレオス・カラックスが放つ、彼の映画史は、映画という世界の中で役者は次々と変わっていくことを提示し、それは観客に映画を観る度に味わう異なる人生の果実を味わせてくれる。2010年代主流となったユニバース系映画の要素をも網羅し、『TOKYO!』のメルドおじさんが出現したり、途中でインターミッションがてらカッコよすぎるミュージカルを展開したりととにかくハチャメチャな世界観。これはやはり順当のランクインでした。それにしてもカンヌ国際映画祭で本作が無冠だったことは、カンヌ史上最大の汚点だと言えよう。

3.プティ・カンカン(ブリュノ・デュモン)

2010年代、最も覚醒した監督にブリュノ・デュモンがいる。彼はテレビシリーズ『プティ・カンカン』を作り、そこからデヴィッド・リンチ的世界観を継承。デヴィッド・リンチロスなカイエを興奮させ、作品を発表する度に、力づくでベストテンに入れてきました。そんなブリュノ・デュモンの転換期を3位に入れるのは順当だ。牛の死体から女性の死体が出現し、おとぼけ刑事が捜査をするのだが、全然事件が解決する気配がしない、もろ、『ツイン・ピークス』ですね。

4.ブンミおじさんの森(アピチャッポン・ウィーラセタクン)

タイ映画が一気に注目されるキッカケとなった作品。霊が実体化し、歴史と文化が時を超えて繋がってくる異次元を魅せてくる。アピチャッポン・ウィーラセタクンはカイエが大好きな監督で、2000年代ベストテンにも実写版山月記こと『トロピカル・マラディ』をランクインさせている。個人的にはもうそろそろアノーチャ・スイッチャーゴーンポンやプッティポン・アルンペンあたりに注目してほしいというのが個人的な意見だ。

5.イメージの本(ジャン=リュック・ゴダール)

2010年代、ゴダールは彼が作り上げたブランドの下で、他の監督がやったらブチギレ案件の実験映画を作り続けた。フランスでは劇場公開されず、テレビ放送&インスタレーション公開された本作は、フッテージだけで作り上げられた情報の物量によってカイエの連中も思考停止してしまったようだ。個人的には、多分ゴダールもわかっていると思うが、限界にきていると思われる。確かに、情報化社会になり、映像も情報過多となってしまった。誰しもがあらゆる情報にアクセスでき、知った気になってしまう様を風刺しているように見えるが、ゴダール特有の映画は引用でしかないという厭世に包まれた作品だと思う。そう考えると、ガイ・マディンがサンプリングで物語ることの限界に挑戦してみせる一連の作品の方が希望がある。それに気づけず、盲目的にゴダールを賞賛している様子にブンブンは、カイエの弱さを感じるのであります。
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6.ありがとう、トニ・エルドマン(マーレン・アデ)

カイエは10年分のベストテンとなった際に、政治的だったり社会派な映画は漏れてしまいがちだ。美学優先なので。しかしながら、#MeTooにおける男尊女卑の浮き彫り、そしてヨーロッパで蔓延する静かな搾取の構図を、さりげないショットの連続で描き、シニカルな皮肉で笑い飛ばして魅せたマーレン・アデ監督『ありがとう、トニ・エルドマン』をカイエは絶賛した。2016年はカンヌ国際映画祭が大いに事故った年であり、批評家大絶賛の『エル ELLE』、『ジュリエッタ』、『アクエリアス』などが総じて無冠に終わった。本作もその一本であり、その年のカイエ年間ベストはほとんどがカンヌ国際映画祭コンペティション作品という怒りの表明となりました。
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7.母よ、(ナンニ・モレッティ)

これは驚いた。本来であれば、クローネンバーグの『マップ・トゥ・ザ・スターズ』、『コズモポリス』や毎回ベストテンに強引に入れてくるホン・サンス映画が入るであろう。新鋭であればクレベール・メンドンサ・フィリオがランクインするはずなのだが、この静かな映画愛映画がランクインしたのです。個人的に、未だにナンニ・モレッティの良さ、というか見方が分からないだけに本作が食い込んだのは永遠の謎、迷宮入りと言えよう。

8.メランコリア(ラース・フォン・トリアー)

ラース・フォン・トリアーが行き着いた善悪の彼岸をカイエは毎回賞賛している。トリアーがナチス擁護発言をしカンヌ国際映画祭出禁となった年に上映された本作は、憂鬱(=メランコリア)が降ってくる、最強厭世的なディザスタームービーだ。一度は誤るものの、面従腹背、次回作は5時間に及ぶ官能叙事詩を作り、『ハウス・ジャック・ビルト』では、殺戮の2時間半によってカンヌに戻ってくる異常なオデュッセイアを実現してみせた。彼にしか到達できない猛毒をカイエは評価している。ブンブンも好きである(職場の人には言えませんが…)。

9.アンダー・ザ・スキン 種の捕食(ジョナサン・グレイザー)

『LUCY』で人間をやめてしまったスカーレット・ヨハンソンはどうなっちゃったの?その答えを教えてくれる5感を刺激する本作はカイエ渾身のお気に入り。深遠なる沼に沈んでいき、皮を剥がれる人、異世界をひたすらに魅せていく姿は、『ツイン・ピークス』好きなカイエにはたまらなかったのでしょう。ジョナサン・グレイザーもレオス・カラックス同様、極端に寡作な監督。2020年代はどういった世界を魅せてくれるのか楽しみです。

10.アンジェリカの微笑み(マノエル・ド・オリヴェイラ)

写真が登場して間もない頃、「写真に撮られると魂を取られてしまう」と人々は距離をおいていた。100年映画に向かい合った男マノエル・ド・オリヴェイラは写真によって魂を奪われた男を重厚かつコミカルに描いていく。オリヴェイラは晩年になると、思わぬ展開で映画を終わらせる独特のスタイルを確立した。他の監督であればA to Z語るところを、Qあたりで寸止めするのです。それによって観るもののインスピレーションを掻き立てる。本作で披露されたシュールな職人芸にカイエは魅了されたようだ。

総評

明らかな、デヴィッド・リンチ系映画のオンパレードに鋭さを感じる一方、各年のベストテンからピックアップしているだけな感じが強く、もう少しとんがったベストテンが作れたのではとも思いました。なお、まだ現時点では2019年ベストテンは発表されていないのですが、今年は間違いなく『イメージの本』が1位になるでしょう。また、カイエのサイトを読む感じ、『パラサイト 半地下の家族』、『Pain & Glory』、『レ・ミゼラブル』あたりはどうやらランクイン確実なようです。
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