マロナの幻想的な物語り(2019)
原題:L’extraordinaire voyage de Marona
英題:Marona’s Fantastic Tale
監督:アンカ・ダミアン
出演:リジー・ブロシュレ、ブルノ・サロモネ、マイラ・シュミットetc
評価:80点
日本はアニメ大国であるが、超絶技巧の画が支配しているため、なかなかヨーロピアンアニメーションが国内に入ってこない。おそらく、ここを逃したら観られないだろうルーマニアのアニメ『マローナの素晴らしき旅』(発音上、《マロナの素晴らしき旅》の方がよかったのでは?)を東京国際映画祭で観た。本作は来年のアカデミー賞長編アニメーション賞選定候補32作品に入っている作品で、『ディリリとパリの時間旅行』や『アウェイ』、『Buñuel in the Labyrinth of the Turtles』、『失った体』等ヨーロピアンアニメーション激戦区の中で闘っている作品でもあります。
『マロナの幻想的な物語り』あらすじ
犬のマローナは車にひかれた瞬間に一生を回想する。9番目の子犬として生まれ、最初は曲芸師にもらわれて…。数々の飼い主を巡る思い出が流れるように自由でカラフルなアニメーションで描かれる感動的な一編。
※東京国際映画祭サイトより引用
ルーマニアから現れた才能の爆発
アンカ・ダミアン監督は、ブカレストの演劇映画アカデミーで映画学を専攻し、後に映画の博士号を取得している。彼女は2つの長編映画や他の多くのドキュメンタリー映画の撮影監督として働いてきたのだが、冤罪に対する抵抗としてのハンガーストライキを描いたアニメーション『Crulic-The Path to Beyond』でアヌシー、ロカルノを制したことで注目される。ルーマニア・アニメ界最重要監督最新作である『マローナの素晴らしき旅』は、『僕のワンダフル・ライフ』に近いワンコの輪廻転成を描いている。さて、実際に観てみるとベタな内容ながらもART EXPLOSION, ART EXPOSURE(芸術の爆発、芸術のむきだし)な作風で、私の堅牢な心の琴線に虹色の槍を突き刺した。
いきなり車に轢かれ、アスファルトに死が横たわるところから、混血犬マローナの人生の走馬灯が紐解かれる。
血統種と混血から産まれたワンコは、棄てられる。そして大道芸人や土方のあんちゃん、過労家族に棄てられては拾われを繰り返し、名前も変わりながら人生を紡ぎ出していく。それを、作画が不安定で混沌とした落書きの中で展開していく。ジャン=ミシェル・バスキアやジュリアン・シュナーベルを思わせる新表現主義の自由さが蠢き、人体は抽象化され混沌としているのだ。
それはアニメが許される、現実物理を超越した動きの極限を追い求めており、ジャパニーズアニメーションのリアリズムな造形に対してヨーロピアンアニメーションはどの立ち位置で花を咲かせるべきかの一つの解を提示していると言えよう。
アニメーションを観る、アニメーションでしか得られない多幸感、興奮に満ち溢れたアンカ・ダミアンのテクニックに圧倒されました。
それにしても、『僕のワンダフル・ジャーニー』、『ペット2』、『ジョン・ウィック:パラベラム』、『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』と今年は犬映画多すぎでは?
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