『アイネクライネナハトムジーク』《運命》は待ってもこない、掴むものなのさ

アイネクライネナハトムジーク(2019)

監督:今泉力哉
出演:三浦春馬、多部未華子、原田泰造、サンドウィッチマンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

愛がなんだ』に引き続き、日本のホン・サンスこと今泉力哉監督が原作ものに挑戦。しかし、今回は伊坂幸太郎ものだ。伊坂幸太郎といえば中村義洋とよくタッグを組むイメージがあるのだが、どうやら本作は伊坂幸太郎が直々に今泉力哉監督に提案したらしい。そして、三浦春馬、多部未華子という日本トップスター、そして何故かネプチューンの原田泰造やサンドウィッチマンを起用する異様なキャスティングで作られた。これが安定の今泉力哉クオリティの良作でした。

『アイネクライネナハトムジーク』あらすじ


ベストセラー作家・伊坂幸太郎による小説を、三浦春馬と多部未華子の共演、「愛がなんだ」の今泉力哉監督のメガホンで映画化した恋愛群像劇。仙台駅前で街頭アンケートを集めていた会社員の佐藤は、ふとしたきっかけでアンケートに応えてくれた女性・紗季と出会い、付き合うようになる。そして10年後、佐藤は意を決して紗季にプロポーズするが……。佐藤と紗季を中心に、美人の同級生・由美と結婚し幸せな家庭を築いている佐藤の親友・一真や、妻子に逃げられて途方にくれる佐藤の上司・藤間、由美の友人で声しか知らない男に恋する美容師の美奈子など周囲の人々を交えながら、不器用でも愛すべき人々のめぐり合いの連鎖を10年の歳月にわたって描き出す。映画の中でもキーとなる主題歌「小さな夜」と劇中音楽を、シンガーソングライターの斉藤和義が担当した。
映画.comより引用

《運命》は待ってもこない、掴むものなのさ

本作は、三浦春馬演じる恋に奥手、仕事も屁っ放り腰な男・佐藤が前に進む物語を軸に、様々な人間の「一歩前に踏み出す」エピソードが層をなしていく物語だ。1時間以上経っても全く物語の方向性が見えず四散に散乱するエピソードは、今泉力哉監督の繊細な結びつきによって収斂し、本作のテーマが強固になっていく。

本作のテーマは「《運命》は待ってもこない、掴むものなのさ」だ。

佐藤は、美貌を持っていながらも、未だにまともな恋愛をできていない男。友人に、「ドラマチックな恋愛って、それに酔っているだけで、女性は誰でもいいんでしょ?」と鋭い言葉を投げられ、苦い思いするものの、そのドラマチックな出会いを求めて街で運命の赤い糸を探している。そんな彼の前に様々な愛の哲学が流れる。思わぬ好演を魅せるネプチューン原田泰造演じる、精神病で休職している先輩は、ドラマチックな出会いによって結婚したものの、妻に逃げられてしまう。しかし彼は、それでもあの時の出会いを大切なものだと思っている。そこに、友人が言ったあの鋭い言葉を感じ取る。

そんな彼は、街頭インタビューで運命の女性(多部未華子)と出会う。運命はやってくるのだ!しかし、恋に奥手な彼の前からスルりと運命は流れていってしまう。そして再びその運命がやってくるとき、彼は《運命》は掴む必要があると駆け出すのだ。

そして何故か物語は、強烈な断絶によって別次元に飛ばされる。そこでも様々な人が「一歩」を踏み出す。《運命》を掴むために。そして紆余曲折右往左往した物語は、運命を掴もうとして一時停止してしまった佐藤にもうひと押し背中に一撃を与えるのだ。

今泉力哉監督の魔法によってキラキラ美しく映る女性たち、その前でクズさ、弱さを乗り越えようとする男たちの道は前に踏み出せない者に希望の光を与えるであろう。今泉力哉監督はTOHOシネマズで大々的に上映される作品であっても繊細さは変わることがなかった。この繊細さは是非とも『からかい上手の高木さん』を実写化する際には活かして欲しいし、寧ろ彼にしかあの漫画は映画化できないと思う。

サンドウィッチマンの場違い感と、立っているだけで高カロリーな空間を生み出すところの豪傑さこそ気になったが、個人的に大満足でした。

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