『The Green Wave』アニメーションこそカメラを奪われた者のリーサル・ウェポンだ!

The Green Wave(2010)

監督:Ali Samadi Ahadi

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

MUBIで現在、イラン映画が特集されている。昨年のベルリン国際映画祭で話題となったブラックコメディ『Pig』と一緒に、アニメーションを使ったドキュメンタリーが公開されてました。『The Green Wave』はイラン生まれでイラク戦争から逃れるようにドイツ・ハノーバーに移り住んだAli Samadi Ahadi監督が、2010年のアフマディーネジャードが組織票で持って大統領選を勝ったことに対して怒った暴動《緑の革命》を携帯電話の動画とアニメでもって構築したドキュメンタリーです。

『The Green Wave』概要


A documentary on Iran’s 2010 Green Revolution.
訳:2010年イランで起きた緑の革命のドキュメンタリー
Imdbより引用

アニメーションこそカメラを奪われた者のリーサル・ウェポンだ!

2008年にアニメでもって戦場のトラウマを綴ったドキュメンタリー『戦場でワルツを』が話題になった。これは、イランのような情報統制が厳しい国にある種の希望をもたらした。イランは本作を始め、『Tehran Taboo』といった社会批判のある作品をアニメで描いている。これはイランが情報統制に厳しく、ジャファール・パナヒのような世界三大映画祭のグランプリに輝く巨匠ですら軟禁されてしまうイランにとっての武器としてアニメが使われているのだ。イランは、カメラで撮影していただけで警察官に捕まり長時間尋問されるような国。映画監督にとっての武器であるカメラを取り上げてしまうのだ。

しかし、アニメであれば家の中で世界が描ける。『戦場でワルツを』が与えたインスピレーションはイランに希望を与えていると言えよう。そして、ドイツに難民として移住したAli Samadi Ahadiは、2009年から激化していった緑の革命、そしてことの発端となったマフムード・アフマディーネジャードの汚職に鋭い眼差しを向けた。市民はイスラムの象徴である緑の旗を振り、問題を訴えようとするのだが、ことごとく弾圧されていく様を捉えようとした。しかし、カメラで容易に惨状を撮ることはできない。そこで、携帯電話で隠し撮りされた映像と、空白の部分はインタビューによる証言を再構築したアニメーションで現状を捉えることにした。

本作は、普通に撮っただけでは残念ながやよくある中東ドキュメンタリーに過ぎず、なかなか鑑賞者の心に留まることが難しい。しかしながら、アニメと携帯電話による臨場感あふれる動画の切り返しが、アクション映画のようなリズムを呼び、観終わった後反芻したくなる。

これは2010年代隠れた映像革命といってもいいのではないだろうか?

ドキュメンタリー映画が撮りにくい、報道の自由がない国において新たな武器のあり方を提示した作品であった。

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