【ネタバレ】『ザ・キンダーガーテン・ティーチャー』ある意味『シノニムズ』は続編

ザ・キンダーガーテン・ティーチャー(2014)
原題:Haganenet
英題:ザ・キンダーガーテン・ティーチャー

監督:ナダヴ・ラピド
出演:Sarit Larry,Avi Shnaidman,Lior Raz etc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した『シノニムズ』ナダヴ・ラピドの過去作『ザ・キンダーガーテン・ティーチャー』を観ました。本作はマギー・ジレンホール主演でNetflixによってリメイクされている作品。果たして…

『ザ・キンダーガーテン・ティーチャー』あらすじ


A kindergarten teacher discovers in a five year-old child a prodigious gift for poetry. Amazed and inspired by this young boy, she decides to protect his talent in spite of everyone.
訳:幼稚園の先生が5歳の子供に詩のための素晴らしい贈り物を発見します。この少年に驚きとインスピレーションを得て、彼女は彼の才能を守ることにしました。
imdbより引用

子育ての揺らぎ

本作は、子育てにより生じる、所有欲を描いた秀作だ。天才児を見つけた先生が彼を守るために奮闘する話と書いてしまえば、そこらへんにある凡庸な作品に見えるのだが、イスラエル出身のナダヴ・ラピドの手にかかれば非常にユニークな作品に化けるのです。冒頭、幼稚園に園児がやってくる。みんな挨拶しながら入っていくのだが、一人だけカメラに突っ込んでいくのだ。この時点で、彼は只者ではないぞと観客も思うのです。そして、ヨアヴ少年の目線でカメラは彼を捉えていく。

幼稚園の先生であるニラは彼には詩の才能があると、休み時間に彼を呼び出して、様々な抽象概念を教え始める。蟻を捻り潰し、痛みを教えようとしたりする。虚空を見て何を見ているのかよくわからないヨアヴではあるのだが、詩の才能の片鱗はチラつく。そして園児は、ヨアヴ少年の家庭が彼を天才にするのを阻んでいると思い始め、だんだんと支配欲、所有欲を募らせていくのだ。

これはある意味、親が息子、娘に英語やフランス語、プログラミングにピアノを習わせて自分の理想な子どもを作り上げるのと似ている。結局のところ、自分が満足したいのであって彼のことは全く考えていないのだ。段々と、ヨアヴに依存するようになる先生は、遂に彼を誘拐してしまう。しかしながら、彼は本当に天才児で、先生がシャワーを浴びている隙に警察を呼び、先生は逮捕されてしまうのだ。そして、少年は保護されると、ニカッと自分の本性の顔を顕にして映画は終わる。

現代の子どもと大人の狭間にある所有欲を巡る寓話、英才教育への強烈な皮肉話として非常によくできている。と同時に、フランスに単身移住し、言葉というものに取り憑かれたナダヴ・ラピドの言葉の反芻というものが本作の詩の描写に投影され、圧倒的作家性が発揮された作品とも捉えられる。主人公の少年の名前がヨアヴということから、ひょっとすると彼が成長した姿は、『シノニムズ』で映し出されるあの面倒臭い移民なのかもしれない。

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