【ネタバレ考察】『チャイルド・プレイ』が他の語り直し系ホラー映画と違う件

チャイルド・プレイ(2019)
Child’s Play

監督:ラース・クレブバーグ
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ティム・マシスン、デヴィッド・ルイス、マーク・ハミルetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

みなさんは、ホラー映画好きですか?

ブンブンは超絶苦手です。特に映画館でホラー映画を観たくありません。なんたって、唐突に大きな音を立てて驚かせてくるの怖いじゃないですか?今度公開される『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』はなんと2時間40分近くあるということで恐怖に怯えています。

そんなブンブンですが、TOHOシネマズフリーパスポートを発行してしまったので、公開されているあらゆる映画を好き嫌い関係なく観にいくことにしています。だから意を決してリブート版『チャイルド・プレイ』を観てきました。これが超絶面白かったので、ネタバレありで語っていきます。

『チャイルド・プレイ』あらすじ


かわいらしい見た目とは裏腹に残忍な殺人を繰り返す恐怖の人形チャッキーを描き、1988年の第1作以降、計7作品が製作されてきた人気ホラーシリーズ「チャイルド・プレイ」をリブート。引越し先で友達のいない少年アンディは、誕生日に母親から人形をプレゼントされる。その人形には、音声認識センサーや高解像度画像認識機能などが備えられ、スマートフォンアプリと連携して操作も可能という、最先端の技術が盛り込まれていた。人形をチャッキーと名づけて一緒に暮らし始めたアンディだったが、次第に周辺で異変が起こり始めて……。チャッキーの声を、「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルが担当した。大ヒットホラー「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」を手がけたプロデューサーのセス・グラハム=スミスとデビッド・カッツェンバーグが製作。
映画.comより引用

ホラー映画における《語り直し》について

近年、ディズニー映画は往年のアニメ作品を2010年代風に、政治問題や社会問題を織り込んだ形で語り直す風潮が強まっている。ネタ不足に対する打開策であると同時に、既に大衆に知れ渡っているコンテンツを再度世に出すことで確実に利益をあげていくフランチャイズ戦略として上手く機能していると言える。そしてホラー映画界でも『ブレア・ウィッチ』や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』、『ハロウィン』、『ペット・セメタリー』などと次々と語り直しが行われている。ただ、ディズニーのそれとは違い、ホラー映画の場合は様式だけアップグレードし、中身に関しては目新しい進化を見いだすことはできない。せいぜい、『ストレンジャー・シングス』系の80年代アクションアドベンチャー+ちょっとホラーを意識した世界観構築に留まっている。

そんな中登場した『チャイルド・プレイ』は『トイ・ストーリー』以上に2010年代だからこその物語となっている。冒頭、ベトナムの工場にフォーカスが当てられる。人形製造の現場で男が過労死するところから始まるのだ。今となっては、大量生産の舞台は中国からベトナムに移っている。そして、貧しい労働者は劣悪な環境で酷使されていて、その怨念が人形に宿るという設定になっているのだ。この時点で、他のホラー映画とは一線を画しているのだが、あれよあれよと言う間にこの映画は2010年代を緻密に描いていく。

チャッキー人形はAI搭載のIoT機器でスマホのアプリと連動して動く仕組みだ。そして主人公の少年は、80年代であれば外の公園でワイワイ遊んでいただろうに割れたスマホのディスプレイばかり見て暇を潰しているのだ。そして高くて買えないおもちゃのアプリで遊ぶ涙ぐましい描写が挟まる。単にAIとかIoTをホラーの要素として取り入れる作品は多いけれども、スマートフォンの登場で人々の生活がどのように変わったのかまで踏み込んだのは非常に珍しい。

そして、孤独を癒すようにスマホにのめりこむ少年の描写があるからこそ、「ズッ友だよ!」と不気味に語りかけてくるチャッキーに対して中盤まで仲良く接する少年の姿に説得力が出てくる。2013年にAIに恋する映画『her/世界でひとつの彼女』が登場し映画ファンは半信半疑の興奮を感じたことだろう。しかしながら2019年に置いてそれは現実だ。例え、無数に送られる0と1の信号の結晶だったり、プログラミングされたものだと分かっていても、孤独を癒してくれるチャッキーに愛を捧げてしまう。不気味だけれどもズルズルと惹き込まれていく姿は、まだAIが「特別な存在」だと思われている2010年代だからこそ成立するシチュエーションと言えよう。『トイ・ストーリー4』は玩具寓話から玩具を用いた人間ドラマに9割以上の力を割いてしまった為、2000年代に取り残されてしまった古臭い映画に見えてしまった。だが、ここには2010年代、いや2019年の『トイ・ストーリー』があると言える。

ただ、この作品は理論だけが先行する映画でもない。ちゃんと本家チャイルド・プレイが持つコメディ要素もふんだんに取り入れている。例えば、チャッキーがIt’s a giftと言わんばかりに持ってきた生首アートを捨てようとしたら、誤解が誤解を招き、ご近所のおばちゃんにあげてしまう展開のブラックさは秀逸である。また、そんなおばちゃんがUber的なものを使い、夜のイベント会場に向かう際に起こる惨劇はコミカルでワクワクさせられる。

しまいには、ショッピングセンターで新しい人形を求めるお客さんをドローンや熊のぬいぐるみで襲撃する様の滑稽さに古き良きスプラッター映画の面白さが滲み出ています。そもそも、本作が劇中で引用する映画に『悪魔のいけにえ2』、1作目ではなく2作目を置いているところから、この作品が本気でホラーを描こうとしている、リブートを成功させようとしていることは見るも明らかだ。

本作を手がけたラース・クレブバーは、あのカメラを使った話題のホラー映画『ポラロイド』の監督でもある。彼の作品は今後も期待できると確信したブンブンでした。
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