『やっぱり契約破棄していいですか!?』、ファウストよりも星新一

やっぱり契約破棄していいですか!?(2018)
Dead in a Week: Or Your Money Back

監督:トム・エドモンズ
出演:トム・ウィルキンソン、アナイリン・バーナード、フレイア・メーバー、マリオン・ベイリーetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、何やら面白そうな映画を見つけました。『やっぱり契約破棄していいですか!?』。悲しみに暮れ、自殺しようとしている青年の前に殺し屋が現れて、自分を殺してもらうよう契約する。しかし、いざ殺されるとなると死への願望がなくなって…というコメディらしい。このプロットを見て、ゲーテの『ファウスト』の換骨奪胎かなと思いました。『ファウスト』とは、絶望に暮れるファウストの前に悪魔であるメフィストフェレスが現れ、契約とともに若さをファウストに与えるのだが、それが悲劇に繋がってしまうという内容。魅惑の契約によって絶望の淵に立たされた男が、再び人生の絶頂と最低の地を踏むという内容が非常に似ています。日本公開は8/30(金)ですが一足早く鑑賞しました。

『やっぱり契約破棄していいですか!?』あらすじ


死にたい小説家とクビ寸前の殺し屋が繰り広げる追走劇を描いたイギリス製コメディ。小説家を目指すも全く芽の出ない青年ウィリアムは、人生に絶望して7回も自殺を試みたが、いずれも失敗していた。一方、ベテラン殺し屋のレスリーは、英国暗殺者組合の暗殺件数のノルマを達成できず引退寸前に追い込まれていた。ある日、ひょんなことからレスリーと知り合ったウィリアムは、1週間以内に自分を暗殺するよう依頼する。そんな矢先、出版社で働くエミリーから、ウィリアムの小説を出版したいという電話が掛かってくる。出版へ向けて話し合ううちに急速にひかれ合うウィリアムとエミリー。ようやく生きる希望を見いだしたウィリアムは、レスリーとの契約破棄を希望するが……。小説家ウィリアムを「ダンケルク」のアナイリン・バーナード、殺し屋レスリーを「フル・モンティ」のトム・ウィルキンソン、ウィリアムに希望をもたらすエミリーを「モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト」のフレイア・メーバーがそれぞれ演じる。
映画.comより引用

ただならぬ星新一感

短編映画を数本作っていたトム・エドモンズがトム・ウィルキンソン主演に撮ったこのデビュー作は、『ファウスト』というよりかは星新一でした。映画を観ていくと、エヌ氏は橋から飛び降りようとしていた。すると男がやってきてこういうのです。「私は殺し屋です、私にあなたの暗殺を依頼しませんか?」というような滑り出しで物語が展開していきます。殺し屋はノルマが足りず、今にもクビになりそうなので、目の前にいる自殺志望の青年は千載一遇の大チャンス。言葉巧みに、彼を誘惑します。彼は彼で、自殺しようと壁一面に様々な自殺方法を書いて実践していくのだが、運がとても強くてなかなか死なない。死角から飛び出して車に轢かれようものなら、その車が救急車だったりして簡単には死ねないのだ。彼はすぐさま契約書にサインをするのだが、なんと運がいいことでしょう。出版社からオファーがきてしまうのです。しかも出版担当者の女性エミリーに恋してしまうのです。それで「やっぱり契約破棄していいですか?」と殺し屋に訊いてみるのだが、彼にしゃちゃたまったもんじゃない。それは自分の人生の終わりを意味するのだ。そして、ラッキーマン級に運がいい男と絶望的に運が悪い殺し屋の攻防がゆるく描かれる。

こう書くと面白そうに見えるのだが、全編通してゆるーい展開なので、「死」の重さまでも軽くなってしまい、それが主人公であったり、殺し屋の必死感が全然見えてきません。これは確かに喜劇だし、ブラックユーモア満載ゆるゆる映画だというのはわかる。しかし、メリハリがないのとゆるい作劇が面白いのは雲泥の差である。ここぞという時に修羅場をしっかり見せてくれないと茶番で終わってしまうのだ。しかも、主人公と殺し屋の攻防がメインだと思いきや、物語が進むにつれてエミリーとのいちゃつきがメインとなっていき、まるでカップル成立した途端つまらなくなる少女漫画のような退屈さがありました。

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