そうして私たちはプールに金魚を、(2017)
監督:長久允
出演:湯川ひな、松山莉奈、西本まりん、菊地玲那etc
評価:90点
今週の金曜日から電通マン長久允がサンダンス、ベルリンを制した『ウィーアーリトルゾンビーズ』が公開される。本作は、ブンブンの上半期ベストテンに入れているほど凄まじい作品でした。そんな長久允監督のデビュー作『そうして私たちはプールに金魚を、』を見直してみたのですが、これが『ウィーアーリトルゾンビーズ』に通ずるものを感じる作品だったので紹介します。『そうして私たちはプールに金魚を、』あらすじ
2012年に埼玉県狭山市で実際に起きた事件を基に、新鋭の長久允監督が映画化した短編。埼玉県在住の少女たちが、中学校のプールに約400匹もの金魚を放った心模様をポップに表現する。本作は、第33回サンダンス映画祭短編映画審査員賞を受賞。4人の中学生たちの心の機微を捉えた内容に注目。
※Yahoo!映画より引用
凝縮された『台風クラブ』
本作は『台風クラブ』を20分に圧縮したような作品だ。『台風クラブ』は、台風という非日常に底知れぬ高揚感を見出す思春期ならではの破壊願望や「外へ抜け出したい」といった願望を捉えた傑作でありました。長久允監督は電通マンで成功している陽キャラに見えるのですが、本作、そして『ウィーアーリトルゾンビーズ』を観ると、思春期が感じる閉鎖されたコミュニティの息苦しさを痛いほどに捉えていて、学生時代陰日向にいたブンブンは親近感を抱きました。
そして本作は『ウィーアーリトルゾンビーズ』へと繋がるものを感じる。『斉木楠雄のΨ難』の彼のようにスカした顔で、胡散臭い1,000円ガチャに喜ぶ人を冷たく嘲笑い、厭世的に考えを張り巡らせる。このまま埼玉県でくすぶっていていいのか?自分たちの未来はどう掴めばいいのか?とそして自分たちは「Born to be Zombie」であると考える。長久允の考えるゾンビ観、それは人生の道を見失い、ただ町を彷徨う者であることが分かるのだ。そしてプールに大量の金魚を放つのだが、観客が期待する広告マンが放つ美しい金魚プールは決して映されない。観客を嘲笑うかのように、「期待していたでしょ?」と終わってしまうのだ。多くの人は、事件に対して理由を求める。しかしながら『異邦人』の彼が「太陽が眩しかったから」という理由で殺人を犯したのと同様、思春期の彼女たちがプールに金魚を放った理由は特になかったのではと観客に突きつけてくるのです。この鋭い観点にノックアウトしました。
6/14(金)より『ウィーアーリトルゾンビーズ』公開です。是非劇場でウォッチしてみてください。
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