空母いぶき(2018)
監督:若松節朗
出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、高嶋政宏etc
評価:20点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
公開前から論争を呼んでいた作品『空母いぶき』がついに公開されました。かわぐちかいじの同名漫画原作の本作は、予告編からもわかる通り、竹島問題の領有権を巡った作品であり、登場する敵国の名前は違えども、炎上は免れない内容となっていました。そして、公開直前に佐藤浩市演じる総理大臣は安倍晋三を揶揄したとか云々で炎上してしまいました(こういうエピソードはブンブンあまり興味ないので調べてください)。ただ、この作品が面白いところは、一見東宝の大作映画に見えるのですが、実は今イケイケドンドンな映画会社キノフィルムズが製作しているところです。数年前までキノフィルムズは木下工務店のサブビジネスというイメージしか湧いていなかったのですが、去年のカンヌ国際映画祭の配給権争奪戦で大量に権利を購入し、オフィス北野亡き東京フィルメックスを先陣切って引っ張り、今年には自社映画館kino cinéma横浜みなとみらいを誕生させるなどアグレッシブな活躍を魅せていました。そんなキノフィルムズの一大プロジェクトがこの『空母いぶき』だったのです。
『空母いぶき』あらすじ
「沈黙の艦隊」で知られるかわぐちかいじ原作のベストセラーコミック「空母いぶき」を、西島秀俊と佐々木蔵之介の共演で実写映画化。国籍不明の軍事勢力から攻撃を受ける中、それぞれの立場で国民の命と平和を守るため奔走する者たちの姿を描く。世界が再び「空母の時代」に突入した20XX年。日本の最南端沖で国籍不明の軍事勢力が領土の一部を占拠し、海上保安庁の隊員を拘束する事態が発生。未曾有の緊張感に包まれる中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とした護衛艦群を現場に派遣するが……。西島が、航空自衛隊のパイロットとしての実績を買われていぶき艦長に抜擢された秋津竜太、佐々木が、海上自衛隊の生え抜きながら副長に甘んじる新波歳也を演じる。監督は「沈まぬ太陽」「ホワイトアウト」などの大作を手がけてきた若松節朗。脚本は「機動警察パトレイバー」の伊藤和典と「亡国のイージス」の長谷川康夫。「ローレライ」「亡国のイージス」などで知られる作家の福井晴敏が企画に携わっている。
※映画.comより引用
すみません、このプロパガンダ映画に胃もたれしました…
本作は別に自衛隊の援助を受けていないし、国の支援で作られている国策映画ではないのですが、何でしょうこのプロパガンダ感。いや、プロパガンダ映画でも映画として面白い作品はたくさんある『戦艦ポチョムキン』とか『怒りのキューバ』とか。しかしながら、本作で主張される政治的メッセージの過激さに完全に胃もたれしてしまいました。
日本勢の前にたちはばかる謎の勢力からの攻撃。いぶきの乗組員たちは、とにかく敵であっても人命を第一に考える。ミサイルを撃ってくる確率が非常に高いのに、相手の生存確率のことばかり考えています。そして、敵機を撃墜したら直ぐさま、敵の生存確認を行う。ハリウッドの戦争映画ではなかなか見かけない程、相手の命を考える斬新な設定となっている。それ自体は、『空母いぶき』の魅力の一つであり、日本の時代劇を観ているかのような一撃必殺の面白さを引き出そうとしているのだなと分かる。
そして、一番重要な「いぶき」にたまたま乗り合わせたジャーナリストの話があるのだが、これが今まで散々リアルさを追求してきた作劇だったのに、それを壊してしまう作りとなっています。顕著なのは、会社と連絡する特殊な電話機。ジャーナリストは現場で起きている状況をリークするために電話機を使用し、それによって「いぶき」の職員に機材を没収されてしまう。通常であれば、そんな問題を起こしたジャーナリストには、監視員がつくと思うのですが、それがない。ただ外の爆撃をのほほんと聞いているだけなのだ。しかも、その電話機は返却される。確かに、乗組員の中には協力的な人もいるでしょう。しかし、だからと言ってビデオカメラ持って白昼堂々、現場で起こる問題を撮影し、他の乗組員が何も言わないのは変だ。セキュリティがガバガバ過ぎます。100歩譲って、「いぶき」の乗組員が一丸となって、ジャーナリストの報道を支持したとしよう。だとしたら、そういう描写を入れる必要があることでしょう。
そして、これは実際に映画館で確認していただきたいのですが、ブラック企業にありがちな精神論、胸熱展開でゴリ押して、あまりにも御都合主義理想的過ぎるクライマックスへと収斂していくところで、完全にNot For Me だと思いました。
もちろん、計器だけを観て、魚雷を倒していく戦艦映画的面白さもあるのですが、とにかく胸焼けで頭が痛くなりました。残念ながら、今年ワースト候補です。
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