シェヘラザード(2018)
Shéhérazade
監督:ジャン=ベルナール・マルラン
出演:ディラン・ロベール、ケンザ・フォルタス、イディール・アズグetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
先日アンスティチュフランセで開催されていた《映画/批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~》で上映されていた作品『シェヘラザード』。ブンブン、残念ながら観にいけなかったのですが、なんとNetflixで配信されていました。最近Netflixは東京国際映画祭や東京Filmex等で上映された作品を配信してくれるのですが、アンスティチュフランセ系映画も配信してくれるなんて意外だ。ありがたく鑑賞しました。
『シェヘラザード』あらすじ
ザカリは17歳、刑務所から出所したばかり。母親にも見捨てられ、マルセイユの下町をぶらついていたところ、シェエラザードという名の少女と運命的な出会いをする……。2018年ジャン・ヴィゴ賞受賞作品。「ここ最近、若手のフランス映画作家たちが精力的に、偉大な作家たち(ここではデパルマ、パゾリーニ)からの影響を怖れることなく受け入れ、クレイジーな試みに乗り出している。北マルセイユ界隈、それも学校と刑務所を往来するように撮られジャン=ベルナール・マルランの作品はその証となる一本だ。」(「リベラシオン」)
※アンスティチュフランセより引用
現代の千夜一夜物語
シェヘラザードと言えば、『千夜一夜物語』で暴君に殺されないよう、毎晩小話をする主人公の名前だ。ジャン=ベルナール・マルランは本作で、シェヘラザードの持つ死と隣り合わせの恐怖というエッセンスを引用し、巧みな演出でもって一見凡庸に見える話にツイストをもたらした。刑務所から出所したザカリは町に帰ってくるのだが、仲間から「おい、帰ってくんじゃねぇ。おらっちが捕まるだろ!」と邪険に扱われる。家族にも見放された17歳は、売春婦であるシェヘラザードに惹かれ、ポン引きとして働きながら情事に励むが、とある暴力事件に巻き込まれ裁判沙汰に発展していく。
主観カメラで、どん底の生活を映す様はダルデンヌ兄弟を思わせるが、時としてあっと驚く演出がなされている。暴力事件に巻き込まれる場面では、J.J.エイブラムス映画のような横ラインの閃光が画面を覆い、まるでSF映画のように見えるのだ。これが単にドキュメンタリータッチで撮って、負のスパイラルから抜け出せない人々をどげんとせんといかんと説教臭く叫ぶ作品でないことがよく分かります。居場所を失い、居場所を求めるように地の底にいた女性を愛する。その儚い望みすらも断ち切り、動物同然に退化して行くザカリの姿に真新しさを感じる作品でした。
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