【ネタバレ酷評】『シャザム!』マーベルを軽く踏襲しただけで傑作になれると思うなよ!

シャザム!(2019)
SHAZAM!

監督:デビッド・F・サンドバーグ
出演:ザカリー・リーバイ、アッシャー・エンジェル、マーク・ストロングetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近DC映画が持ち直してきている。『アクアマン』がRotten Tomatoesで批評家表65%、一般観客評価76%(2019/04/24時点)と意外と健闘しているなと思っていたら、今回の『シャザム!』はRotten Tomatoesで批評家評価90%、一般観客評価88%(2019/04/24時点)と高得点を叩き出していました。ついにDC映画に光が差したかに思えたのですが…

※ネタバレ酷評記事です。要注意

『シャザム!』あらすじ


「スーパーマン」や「バットマン」と同じDCコミックスのヒーロー「シャザム」を映画化。見た目は大人だが中身は子どもという異色のヒーローの活躍を、独特のユーモアを交えて描く。身寄りがなく里親のもとを転々としてきた少年ビリーはある日、謎の魔術師からスーパーパワーを与えられ、「S=ソロモンの知力」「H=ヘラクラスの強さ」「A=アトラスのスタミナ」「Z=ゼウスのパワー」「A=アキレスの勇気」「M=マーキューリーの飛行力」という6つの力をあわせもつヒーロー「シャザム(SHAZAM)」に変身できるようになる。筋骨隆々で稲妻を発することができるが、外見は中年のシャザムに変身したビリーは、ヒーローオタクの悪友フレディと一緒にスーパーマン顔負けの力をあちこちで試してまわり、悪ノリ全開で遊んでいた。しかし、そんなビリーの前に、魔法の力を狙う科学者Dr.シヴァナが現れ、フレディの身に危険が及んでしまう。遊んでいる場合ではないと気付いたビリーは、ヒーローらしく戦うことを決意するが……。シャザム役はTVシリーズ「CHUCK チャック」のザカリー・リーバイ、監督は「アナベル 死霊人形の誕生」のデビッド・F・サンドバーグ。

MARVELとDC映画の違い

MARVELとDCの違いは、市民目線か神目線かだと思っている。町山智浩の言葉を借りれば、民話と神話の関係にあたる。マーベルは、ヒーローが抱える弱点を鏡のように映る欠点の暴走機関車となったヴィランと対峙させることで克服していく面白さが強みだ。それに対してDCは、人間を超えた存在の中に映る葛藤、プロスポーツの世界のようなものを楽しむものだと考えている。

丁度、道徳のディズニーと反道徳なイルミネーションの棲み分けのように両者は位置していた。

しかしながら、『シャザム!』は完全にMARVELにラブコールをし、DCが持つブランドを破壊したように見える。シャザムことビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル/ザカリー・リーバイ)は、孤児で養子に出されるものの、家出を繰り返し、色んな家族を転々としていた。どんなに寵愛を受けようとも、彼は本当の愛を求め、母親探しをずっとしていた。そんな彼が行きついた新しい家は、養子をたくさん受け入れている家。どうも、ある審査に通るために養子を受け入れているちょっぴり偽善な家族だ。そこにいる足の不自由な少年フレディ・フリーマン(ジャック・ディラン・グレイザー)との交流を通じてビリーは心にあるモヤモヤを晴らしていき、ヒーローになっていく。

トム・ハンクス主演の『ビッグ』のように、身体はおっさん、中身は少年というギミックを活かした笑いを入れつつも、擬似家族を通じて孤独を癒し、差別やコンプレックスを乗り越えていくスタイルは、原作こそ未読なのでなんともいえないが、非常にMARVELらしい民話と言えよう。また、ヴィランであるドクター・シヴァナが選ばれし者にあと一歩でなれず、生涯孤独だったところに闇を宿し暴走していく存在というところも、MARVEL映画の欠点の暴走を食い止めていくプロセスで弱点を克服していくプロットを踏襲しているといえる。

ただ、今回の『シャザム!』はDC映画という期待値低めのところからスタートしているため、高評価になっているのであろう。20年ぐらい前なら高評価でも申し分なかったのだが、今の時代、それもMARVELスタイルが確立された今、本作を観ると非常に演出に弱い映画だといえる。

ビリーのコンプレックスが見えてこない

まず、致命的なのはビリーの弱点/コンプレックスが見えてこないのだ。彼は迷子になって、孤児になったという悲しい過去がある。何年経っても母の残像を追い求め、家出をしている。そして、家族という存在を信じられずにいるのだ。そんな彼がようやく母と出会うものの、母は確信犯として自分を捨てた事実を知る。通常であれば、闇に堕ちるはず。ドクター・シヴァナと同じ軌跡を歩むはずだろう。しかし、本作は闇に堕ちかける場面をすっ飛ばして、擬似家族を守るためにドクター・シヴァナと対峙する展開に発展していくのです。

また、ドクター・シヴァナは選ばれし者になれなかった苦しみから悪に豹変するのだが、シャザムに対してはほとんどその背景を語っていない。シャザムも一歩間違ったらドクター・シヴァナになってしまっただろうところを魅せる必要があるし、ドクター・シヴァナはシャザムを闇に引き入れようと誘惑する存在である必要がある。『スパイダーマン:スパイダーバース』や『スパイダーマン/ホームカミング』のヴィランは、親戚だったり恋人の父親だったりと厄介だ。倒すのを躊躇する存在だったりする。そういうのがないからこそ、ただ闇のマーク・ストロングと空き地で喧嘩しているだけにしか見えないのです。

七つの大罪描写が酷い

また、ドクター・シヴァナは七つの大罪の化身を宿したヴィランなのだが、この七つの大罪の化身がしっかり描き分けできていないもったいなさがあります。七つの大罪とは「高慢」、「貪欲」、「嫉妬」、「憤怒」、「色欲」、「暴食」、「怠惰」のことを指す。確かに、他の大罪に戦わせて、自分だけ戦わない卑怯な存在として「嫉妬」がいたり、「暴食」を思わせる化身がいたりするのだが、基本的にどの大罪も触手で攻撃し、相手が突っ込んできたら身を暗ますの一点張りです。漫画の『七つの大罪』を知っているブンブンからすると、やはり大罪はしっかり描き分ける必要があるなと感じた。

同様に、終盤擬似家族が、シャザムの力を借りてスーパーヒーローになるのだが、皆能力が似たり寄ったりで、俊足で走る、強靭な力を持っているという薄っぺらいヒーロー像となってしまっている。だからアクションを観ていても、退屈してしまった。

最後に

近年、映画批評におけるアメコミの扱いが信頼できない。マーベルだろうとDCだろうととにかく炎上防ぐ為に褒めておく、どうでもいいから少し高い点数つけとおく風潮が強い。無論、『バットマンVSスーパーマン』時代と比べたら十分面白い映画であるのは間違いない。映画の長さもちょうどいいとは思う。しかしながら、だからといってブンブンは高評価を出せない。あまりにもお話が薄いし、ヒーローの葛藤を描けていないから。ってわけで、期待外れでした。

P.S.何故かゲーマー少年が使うPCが東芝製なのだが、あれはなんで東芝製なんでしょうね?

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