【アカデミー賞特集】『グリーンブック』貴方はきっとKFCを食べたくなる

グリーンブック(2018)
GREEN BOOK

監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第91回アカデミー賞作品賞はいつにも増して何が獲るかわからない。最有力の『ROMA/ローマ』、『女王陛下のお気に入り』があまりにアート映画過ぎてアカデミー賞っぽくないのだ。しかも今受賞に一番近い『ROMA/ローマ』は、Netflix映画ということでアンチVODな人からは敬遠されている問題もある。また、今年は視聴率稼ぎか『ブラックパンサー』や『ボヘミアン・ラプソディ』といったキャッチーな映画も作品賞にガンガン食い込んでいる。

さて、そうなった時にダークホースとなるのがこの『グリーンブック』だ。この作品程第91回アカデミー賞の中で無難中の無難の風格を宿している作品はない。実際にアカデミー賞前哨戦最重要賞にあたるゴールデングローブ賞では作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞しています。アカデミー賞は脚本賞と脚色賞、どちらか制したものが作品賞を獲る傾向が強いため、非常に強力な存在となっています。とはいえ、残念ながら今のブンブンはこういった無難な映画を好まない傾向があるが果たして…

『グリーンブック』あらすじ


人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描いたドラマ。1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。トニー役に「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞の有力な前哨戦として知られる第41回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞、第76回ゴールデングローブ賞でも作品賞(コメディ/ミュージカル)を受賞した。
映画.comより引用

毒の抜けたファレリーは風の如く…

思いの外面白くてまずは一安心したことを報告します。本作の魅力は何と言ってもヴィゴ・モーテンセン演じるイタリアンマフィアのトニー・“リップ”・バレロンガとマハーシャラ・アリ演じる天才ピアニストのドクター・ドナルド・シャーリーの駆け引きだ。トニーは、チンピラそのものでてやんでぇ口調で喧嘩っ早く彼が歩けば喧嘩が起こるような人物だ。それに対し、ドナルドは仙人のような存在。もはやワカンダの国王になった方がいいのではと思うほどの高潔さを持っている。そんな水と油のような関係が呉越同舟がごとく結びつき珍道中をする。バディ映画の肝となっている。ピーター・ファレリーは弟ボビー・ファレリーと組み一貫して、男と男、女と女の珍事により結ばれる友情や愛情を描いてきた。いつもは、オゲレツ、通俗な描写で観客の心に笑いとほっこりをお届けしている彼ですが、今回はその通俗さを捨てて挑んだ。芯は変わっていないことをピーター・ファレリーは十分わかっている。それだけに、例え露骨なユーモアが失われてもしっかりと観た人が満足する物語となっています。ドナルドの《ツン》を巧みに、トニーが突き、彼から《デレ》を引き出そうとする。旅自体は差別だらけで酷いのに、そこに咲く一輪の花のように美しく希望を見せてくれるのです。

とはいっても、この映画が数年後、数十年後人々の心に残る名作かと訊かれたら、正直首を傾げる。というのも、優等生すぎるのだ。本作はある意味完璧です。序盤で、しっかりトニーの破天荒さを描く。彼の内面にある差別心を描きこむ。その上で、ドナルドと旅をする。彼の高潔さとそれに対する周囲の差別から、人のふり見て我がふり直せのごとく自分の差別心に気づき、ドナルドに寄り添っていく。一見重そうに見える話に、小粋なユーモアというスパイスを塗し、ハッピーエンドで終わらせる。まさに映画のお手本です。でもお手本はお手本にしかなれません。周りにあるちょっといい映画と共に風化してしまう作品なのです。

無論、本作でピーター・ファレリーは露骨なギャグに頼らず、しっかりとした映画を撮れることを証明したのは大きな功績である。しかし、ブンブンは本作がアカデミー賞作品賞を獲るのは、アメリカ映画界の衰退を意味するのではと思ってしまいました。

ってことでブンブンは『ROMA/ローマ』の作品賞受賞を期待します。

貴方はきっとKFCを食べたくなる

ちなみに、本作を観ると十中八九、ケンタッキーフライドチキンが食べたくなります。ここの映画観た人の感想で結構KFCについて言及されている方が多いのですが、実際の登場シーンはほんの一瞬。一瞬しか登場しないのだけれども、ヴィゴ・モーテンセンがワイルドに美味そうにチキンを頬張る姿を見ると、無性に食べたくなってしまいます。本作のサブリミナル効果演出は映画史に残るし、サブリミナル効果を映画の中に盛り込む手本となる作品でしょう。

日本公開は3/1(金)です。是非劇場でウォッチあれ!

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