【ネタバレ酷評】『ニセコイ』英勉監督ならこうはしなかった!青春きらきらギャグ映画をなめすぎ!

ニセコイ(2018)

監督:河合勇人
出演:中島健人、中条あやみ、池間夏海、加藤諒、DAIGO etc

評価:20点

2018年の終焉にワーストまっしぐらの大地雷作が公開されている。その名も『ニセコイ』。週刊少年ジャンプに掲載されていた古味直志の同名漫画の映画化だ。ジャンプ原作ものだとファンも多いので、割と炎上しがちだ。しかしながら、本作は炎上を回避するために、Sexy Zoneの中島健人を主演させ、脇にはKing&Princeの岸優太を配備する万全の体制で映画が作られた。それにも関わらず、普段ジャニーズアイドルに弱い一般観客からも相次いで苦情が出ている。そんな『ニセコイ』観てきました。

この手の青春きらきらギャグ映画は昨年の『未成年だけどコドモじゃない

』のようにダークホース大傑作だったりします(こちらも中島健人主演です)。現に本作は2017年の映画ベストテン新作邦画部門で10位に位置付けました。なので、侮ってはいけない。しかしながら本作は、、、あまりにつまらなかった。折角、傑作になり得る要素が沢山あったにも関わらず全く活かしきれていませんでした。今回は、ネタバレありで本作について語っていきます。

『ニセコイ』あらすじ

ヤクザの2代目の看板を背負って高校生ライフを送る一条楽に舞い込んだ災難。それは、停戦目的で、ギャングの娘・桐崎千棘と偽物の恋人関係=ニセコイをしないといけないことだった。楽には、好きな子が別にいる。小野寺小咲だ。しかし、このニセコイが楽の人生をめちゃくちゃにするのだった…

ギャグを内輪で作っていませんか?

本作は、まるで高校生の学芸会のような作品だ。高校生が『ロミオとジュリエット』を現代版として作ることになる。そこに笑いをいれていくのだが、その笑いが全て内輪による笑いで、我々観客は、たまたまその学芸会を観にきてしまった部外者となる。なので、「これ面白いでしょう」と、ヤクザとギャングが仲良く話を組んで一条楽と小野寺小咲を取り囲んだり、漫画的テロップの挿入が一々寒く感じてしまい、いつの間にか、我々は酷寒のニセコに置き去りにされたような気分になります。

大の大人が、高校生の文化祭レベルで留まってしまうのはなんと情けないことだろうか。まず、根本的に本作はコメディというものがどういうものか分かっていません。コメディには、それこそ芸人の漫才なんかもそうですが、「間」が重要となってきます。何故ならば、観客は提示されたネタを反芻して初めて笑う生き物なのだから。もちろん、『センセイ君主』のように高速高密度なギャグ、ギャグ、ギャグのドッヂボールで観客を楽しませる手法もあるが、それを成功させるには常軌を逸している必要がある。

本作の場合、「間」を大切にせず、テロップ芸なんかは観客に読ませる気がないほど秒でフェードアウトしてしまう。かといって、『センセイ君主

』のような爆発力もない。その結果どうなるのか、観客はこの作品に対してどうでもよくなっていき、退屈してしまうのです。実際に劇場には女子高生やジャニーズファンと思われる方が沢山きていましたが、誰も笑っていませんでした。折角、中島健人がDAIGOに壁ドンされる萌キュンBLギャグシーンも用意されていたにも関わらず、誰一人黄色い声をあげていなかったのです。これはディザスターと言っても過言ではないでしょう。

英勉だったら傑作にできた

本作の構造は、『未成年だけどコドモじゃない』と一致している。『未成年だけどコドモじゃない』はシンデレラをベースに、王子様が優しくないというツイストを入れ、前半ギャグの応酬で観客を爆笑の渦へと引き摺り込む。しかしながら物語が進むとガラリと色彩が変わり、『マイ・フェア・レディ』のようなヒロインを教育することで互いに成長していく立派なピグマリオンものへと変貌を遂げるのだ。

『ニセコイ』の場合、『ロミオとジュリエット』にツイストがかかっている。啀み合うキャピュレット家とモンタギュー家が引き裂く恋の構造に対して、ヤクザとギャングが啀み合う引力によって無理矢理くっつけられた男女の恋の苦悩が物語の軸となっている。『ロミオとジュリエット』の逆転構造に、小野寺小咲という一般人の恋心を加えることで、『ロミオとジュリエット』の脱構築として強い物語へと昇華させることができる。

終盤、『ニセコイ』では学芸会で『ロミオとジュリエット』を演じる。そこで今まで偽物であった恋に決着をつける。どうでしょうか?エッセンスを取り出すと、非常に面白そうでしょう?まるでブロードウェイで上映されていそうな作品に見えるでしょ?

ただ、この映画、悉く終盤の展開の盛り上がりを台無しにしてしまっている。最初から最後までスベっているギャグを止めることはなかった。そして、キャラクターを全く活かしきれていなかった。本作の終盤、当初ジュリエット役を務める筈だった千棘は、小野寺小咲が一条楽に恋心を抱いていることに気づき、役を譲る。だったら、そのまま小野寺がジュリエット役として演技をし、その最中一条楽が運命の相手は彼女だったことに気づき大団円とさせた方が良かった。むしろ、わざわざ役を譲るシーンを丁寧に描いているのだから、そうなるだろうと誰しもが思う。しかしながら、何故か本番直前の事故で、小野寺が怪我をして出演できなくなるというシーンを挿入するのだ。同じく恋のライバルである橘万里の策略としてあの場面があるとするならば、しっかり事後説明のシーンを入れなきゃいけないのに、それがない。だから偶発的な事故として物語は進んでしまう。そして、小野寺さんとの恋を確かめた上で、楽は空港に走り、千棘に「好きだ!」と告白するのだ。作劇としてボタンを3つぐらい掛け違え、そのまま修正することなく終わってしまっているのだ。

河合勇人監督は、英勉の『未成年だけどコドモじゃない』や『3D彼女 リアルガール

』を是非観てほしい。終盤はギャグを抑えて、物語ることに専念していることが分かるでしょう。前半にギャグの面白さを固めて、終盤真面目な物語を描くことで、観客には感動が生まれます。観客は前半の笑いがあった頃を知っている。それが、失われ悲しい道を歩む主人公に、輝ける青春の終わりが見えて胸が締め付けられるように切なくなるのだ。

配役は割とよかった

ただ、ダメダメな本作に置いてよかったところもある。それは配役だ。3人の配役について語っていく。

1.池間夏海(小野寺小咲)

本作においてMVPは小野寺小咲役を演じた池間夏海にある。『たま子とチョーチカーの呪文』や『がじまる食堂の恋』といったマイナー作品にしか出ていない彼女がいきなり大作で裏ヒロインを演じているわけだが、これがすこぶる良かった。最初こそ、エキストラと変わらないモブキャラオーラを纏っていた彼女が、次第にドンドンヒロインとしての魅力を全身に纏っていく。恋心を抱いているのだが、一歩前に進めない。楽に気づいてほしいと渇望する表情の甘酸っぱさがとてつもなく魅力的でした。きっと、数年後には大女優になっているでしょう。今後応援したい女優だ。

2.DAIGO(クロード)

本作で驚いたのは、楽を邪魔する男クロードを演じていたのがあのDAIGOだということ。DAIGOといえば、『ウォンテッド』の酷い吹き替えによって映画ファンの間で有名になってしまった方だ。しかし、本作を観るとメチャクチャ演技が上手い。いつものチャラチャラしてウィッシュ!なんか言っている人に見えないのだ。まっピンクな衣装に身を包み、真顔だけで観客に笑いを与えてくる。全編ダダ滑りな本作において割とギャグの打点が高かったのが彼だ。完璧すぎて常軌を逸している。立っているだけで面白い。これはDAIGOの好感度が上がりました。

3.加藤諒(ゴリ沢)

人狼ゲーム ビーストサイド

』を観たときに気になっていた加藤諒ですが、本作では魅力的に使われていました。バカリズムのように笑顔の中に狂気が宿る彼を狂言回し、ピエロとして起用することで物語にメリハリが生まれます。彼のキモ可愛い演技、そして噛ませ犬としてしきりに『ニセコイ』の世界観に食い込もうとする姿はとても面白かったです。

最後に…

本作は、多くの人が駆け込みで今年ワーストに入れてしまう作品でしょう。やはり、コメディ映画として観客を笑わせることから逃げてしまう不誠実な作りが全てを台無しにしてしまっていると言える。ネタは数打てば当たるものではない。沢山あるネタの中から吟味して、そのネタを入念にブラッシュアップしないと観客を喜ばせることはできません。期待していただけに残念でした。

↑主題歌はヤバイTシャツ屋さん『かわE』。大学時代サークルの先輩が「ヤバTが凄い!」と言っていたが、まさか映画の主題歌になるほどブレイクするとは思っていませんでした。凄いぞ!

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