スタア誕生(1957)
A Star Is Born
監督:ジョージ・キューカー
出演:ジュディ・ガーランド、ジェームズ・メイソンetc
評価:70点
12/21(金)より、本年度アカデミー賞最有力候補と言われている『アリー/スター誕生』が公開される。本作は、『キング・コング』や『風と共に去りぬ』、ヒッチコック作品を手がけた名プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックが1937年に製作した『スタア誕生』の4度目のリメイクだ。本作は、実写版サザエさん役でお馴染み江利チエミ主演でもリメイクされている。また、頂点に登る女優に対し、落ちぶれていく男優という普遍的構図は様々な映画に応用され、あの『アーティスト』でも引用された。正直、今回レディオ・ガガ
の次はレディ・ガガだ!ブラッドリー・クーパーは映画監督もできると海外批評家から絶賛されているリメイク版は期待していない。海外批評家にありがちな、一つのベクトルに偏っている気がする。カイエ・デュ・シネマでは下記のように酷評されていることからも不安である。
cette trahision et ce triomphe de la vulgarité ne sont jamais interrogés par le film. Parce qu’il a oublie, aussi, de se demander pouquoi il existe.- Jean-Philippe Tessé
ブンブン意訳:この裏切りと下品さの勝利は決して劇中で問題提起されていません。なぜならば彼(ブラッドリー・クーパー扮するジャクソン・メイン)が存在するのかに対し自問自答ことも忘れていたからです。
そもそも、ミュージカル映画好きのブンブンではあるが、1950年代以前、それこそフレッド・アステア×ジンジャー・ロジャース、マリリン・モンロー系の豪華絢爛、踊り命なミュージカル映画は苦手だ。どうも甘ったるくってしょうがない。寧ろ、和製ミュージカルの方が好きだし、なんならロック・オペラは大好物だ。ただ、そんなブンブンが今回DVDを購入してまで観たジュディ・ガーランド版はお話はともかく、演出が素晴らしい作品でした。
『スタア誕生(1957)』あらすじ
コーラス・ガールのエスターは、大スターであるノーマンに見出され、華のアメリカン・ドリーム街道を突き進む。それに対して段々落ちぶれていくノーマン。彼は酒に溺れていくのだった…美術に注目!
本作は、シネマスコープで撮られた豪華絢爛3時間もある超大作ミュージカル映画だ。まだ、カラー映画が珍しく、また制作費が莫大になってしまう為、超大作にしか使われていなかった頃のお話。それだけに、色彩に対するこだわりが凄まじいこととなっている。徹底的に、赤、黒、白のコントラストを意識し、3時間一瞬たりとも、色彩に対する妥協が内容に作られている。それだけに、ストーリーこそ今となっては陳腐で通俗凡庸な、上り詰める女優と下り坂の男優という構造。3時間に引き伸ばしただけのようなストーリーも魅力的に感じる。
この映画の魅力を知るのに10分も必要としないところも好感が持てるところだ。いきなり、レビューの舞台裏から始まる。舞台裏でスタッフが目まぐるしく動く、それに対して舞台上では、観客に焦燥のしの字も見せないよう颯爽と、豪華絢爛な美を魅せつけていく。そして、ついに我々観客の目の前にスタアとして頂点に登りつめた
ジュディ・ガーランド扮する女優が現れる。『オズの魔法使い』の彼女とは違う。可愛らしさを魅せつつも、そこには大人としての可愛さがある。少女ではなく、女優としての彼女が眼前に存在した。そんな彼女が華麗に踊っていると、舞台裏から酔っ払いが乱入してくる。舞台はどうなっちゃうの?と我々は劇中の観客やスタッフ共々ハラハラドキドキさせられる。それを、彼女は見事な神対応で切り抜けていく。アクション映画としても素晴らしい見せ場となっている。そしてやがて、彼が落ちぶれた役者だと分かり、ここまでに至ったプロセスが展開されていく。
スタアに登りつめていく女優の気持ちは基本的にレビューと一体となって観客に提示されていくのだが、その一つ一つが素晴らしい。『アリー/スタア誕生』の予告編で、レディ・ガガがブラッドリー・クーパーの腕押しで壇上にて羽ばたくあの魅せ場もあり、これがまた素晴らしい。美術さんの背景のオシャレさも合間って、観客も羽ばたく彼女を応援したくなります。緊張からの解放もしっかり描かれている。
他にも沢山魅力的な部分があるのだが、それを逐一書くのは野暮だと思うのでこの辺で終わりにする。是非とも『アリー/スター誕生』との比較で本作も一緒に楽しんでいただけたらなと思う。
コメントを残す