【『ボヘミアン・ラプソディ』公開記念】今こそ観たい!聴きたい!ハッチポッチステーションの世界

1位:犬のおまわりさん

替え歌芸名:GUEEN
元ネタ:ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)
元ネタアーティスト名:Queen

誰が予想できただろうか?『犬のおまわりさん』と『ボヘミアン・ラプソディ』のマリアージュが最強だということに。そして、『犬のおまわりさん』をロックオペラ化することが可能だということに?難解かつ、超絶技巧の歌唱力を求められ、QueenですらMagnificoのくだりは無理して歌っているのに、グッチ裕三は見事にものにした。

なんといっても、この曲の凄まじさは、MagnificoとLet me goの叫ぶパート2連チャンに対する替え歌だ。

Magnifico部分

犬のおまわりさん:
迷子の迷子の子猫ちゃん
あなたのお家はどこですか
わからないよお金もないよ
借りれよ
借りれよ
借りれよ
借りれよ
借りれよ 早く
そりゃ無理だー

ボヘミアン・ラプソディ:
I see a little silhouetto of a man
Scaramouche, Scaramouche, will you do the Fandango
Thunderbolt and lightning, very, very fright’ning me
(Galileo) Galileo, (Galileo) Galileo, Galileo figaro magnifico

ガリレオ
ガリレオ
ガリレオ
ガリレオ
ガリレオ フィガロ 
マニフィコー

と叫ぶパート。ただでさえ『ボヘミアン・ラプソディ』のこれはインパクト大なのに、それを超えてくるディープインパクト。しかも、「お金もないよ」という悲しい子猫ちゃんに対して「借りれよ」とまるでTwitterのクソリプのような辛辣すぎるツッコに笑いが込み上げてきます。そしてよくよく考えれば、『ボヘミアン・ラプソディ』はオペラだということを思い出す。オペラでは、会話や心情の吐露を歌に込めて、その掛け合いと音色の絡み合いが旨味となってくる。まさしく、これ以上にない名歌詞と言えよう。

Let me go部分

犬のおまわりさん:
二時間経ってもわからない

そおだママの名前はみよこ!
名前はみよこ!
ママみよ 
ママみよ
ママみよ 何処?

ポリス ポリス ポリーーーーーーーーーーース!!!!!

ボヘミアン・ラプソディ:
Easy come, easy go, will you let me go?
Bismillah! No, we will not let you go
(Let him go) Bismillah! We will not let you go
(Let him go) Bismillah! We will not let you go
(Let me go) Will not let you go
(Let me go) Will not let you go
(Let me go) Ah, no, no, no, no, no, no, no
(Oh mamma mia, mamma mia) Mama mia, let me go
Beelzebub has a devil put aside for me, for me, for me

そして二度目の叫びで伝説が生まれた。

Easy come, easy go, will you let me go?

のイジカムイジゴの響きを《二時間》という具体的な数字に置き換えて、そこから二時間経ってもわからないという深刻な問題へとシフトしていく。そして困り果てた末に、子猫ちゃんは思い出すのだ「ママの名前はみよこ」だと。let ○○○ goを「みよこ」と翻訳する超絶技巧。「みよこ」と固有名詞を使うことで漂う生々しさがこのオペラに壮大さとリアリズムを与えます。そして名前はみよこ!と連呼することで、子猫ちゃんに差し込む希望の光が増幅され、DJのようにママみよ ママみよと最後まで名前を言わせない事で、喉の奥底から、脳の深淵から失われたママの名前を思い出すカタルシスが生まれる。

追い討ちをかけるように、ここに最後のスパイスを仕掛ける。最後のLet me goは「何処」と訳しているのだ。小学生でこの単語を知っている人はそうそういるまい。また大人でもじっくり聴かないと分からないが。この最後に隠された「何処」に気づいた時、我々は《迷子》という子猫にとって最大深刻な問題の真髄に触れ涙する事でしょう。

あれほど、前衛的尚且つ大衆に受けたモンスター級のレジェンド楽曲をここまでアレンジし尽くす、ハッチポッチステーションに心底驚かされました。

2位:おはなしゆびさん

替え歌芸名:BABA
元ネタ:ダンシング・クイーン(Dancing Queen)
元ネタアーティスト:ABBA

これについては『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー

』のレビューで散々書いたのでここでは割愛します(興味ある方は青字をクリックしてください)。

ダンシング・クイーンを単身赴任と翻訳し、単身赴任男の人生賛歌を『おはなしゆびさん』に込める離れ業を披露しています。

3位:ふしぎなポケット

替え歌芸名:ベイ・シティ・ドーナッツ
元ネタ:サタデイナイト(Saturday Night)
元ネタアーティスト:Bay City Rollers

ハッチポッチステーションの替え歌には幾つか型があるのだが、その中でも《ツッコミ型》のキレが凄まじい。《ツッコミ型》とは、我々が何気なくスルーしている童謡の歌詞にツッコミをする事で、問題提起するというもの。その中でも『ふしぎなポケット』に対するツッコミが鋭利すぎて爆笑です。

『ふしぎなポケット』といえば、ポケットを叩くたびにビスケットが増えていくという内容になっている。しかしそれって、ビスケットが粉々になっただけなんじゃない?と疑問を呈するのだ。そしてポケットを叩きまくった末に何が残るか?という命題に対して「小麦粉に戻っちゃう!」という座布団10枚クラス且つごもっとも過ぎる回答をグッチさんは叫ぶのだ。それをなんということか、Bay City Rollersの『サタデイナイト』に絡める。そしてBay City Rollersはサタデナイトのトをほとんど発音しないことに着目し、「~ない」という構文に当てはめる。

ビスケットに隠された真理に対して、

「ウソソ嘘でない」と強調し、
「正気の沙汰でない」というSaturday Nightに絡めたダジャレで締めくくる。

ハッチポッチステーションこそ正気の沙汰ではないのだが…

4位:クラリネットをこわしちゃった

替え歌芸名:ジョン・トラボタル
元ネタ:ステイン・アライブ(Stayin’ Alive)
元ネタアーティスト:ビー・ジーズ

グッチ裕三およびハッチポッチステーションのスタッフは、おそらく『ブルース・ブラザース』とか『グリース』とか『フットルース』とかあの辺の音楽映画が大好きなんだろう。グッチさんのパフォーマンスは確かに、本場のMVやライブ映像に合わせているのだが、どうも滲み出る《祭》の風格が音楽映画に近いものを感じる。さて、グッチさんが、ジョン・トラボタルというジョン・トラボルタと蛍が超融合したキャラクターで歌い狂う『クラリネットをこわしちゃった』は、『ふしぎなポケット』に次ぐ《ツッコミ型》の傑作である。

父から貰ったクラリネットが壊れてしまい、音でないという問題に対して、

壊れたオンボロクラリネット捨てなさい、捨てなさい
いますぐオンボロクラリネット捨てなさい、捨てなさい

というソリューションを提案するのだ。

原曲では、


Whether you’re a brother or whether you’re a mother
You’re stayin’ alive, stayin’ alive
Feel the city breakin’ and everybody shakin’
And we’re stayin’ alive, stayin’ alive
ブンブン訳:あんたがブラザーだろうと、マザーだろうと
あんたは生き続ける、生き続けるのさ
街の移ろい感じ、皆が脅えようと
俺らは生き続ける、生き続けるのさ

と希望を与えているのに対して、ハッチポッチステーションでは、少年のクラリネットに対する未練を無残にへし折っていきます。

5位:童話メドレー(うみ→おつかいありさん→森のくまさん)

替え歌芸名:ザ・ビールトス
元ネタ1:プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)
元ネタ2:デイ・トリッパー(Day Tripper)
元ネタ3:抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)
元ネタアーティスト:The Beatles

おいおいおい、これは本家から怒られるぞ、、、訴えられるぞ、、、。ネットが発達しておらず、今みたいにスマホで全世界の情報が飛び交う時代でなかったからこそできた恐るべき魔改造。この替え歌を聴いてしまうと、Please Please Meは海は広いな大きいなの替え歌なんじゃないかと思ってしまう、I Want To Hold Your Handは森のくまさんの替え歌なんじゃないかと思えてくる。そんな弊害をもたらすこの猛毒なメドレーは猛毒なだけに、一度聴いたら一生脳裏から離れなくなることでしょう。

Last night I said these words to my girlを

海は広いな大きいな

と訳す。

そして、
Please please me, oh yeah, like I please youを

カナヅチー飲んだオゥエ

と実は海に飛び込んだ人がカナヅチで、海の水飲んで大変というオチをつけるのだ。

2曲目では変化球を入れ笑いを生み出す。

She was a day tripper
Sunday driver, yeah
It took me so long to find out
And I found out

イテーーーイ!ご立派!
顔面ぶつけた
急がずソローリ
安全第一 安全第一

若干、原曲のメロディを犠牲にしつつ、アリの物語をしっかり語ります(多分この歌詞は工事現場にあるアリさんの看板から想起されたのだろう)。

3曲目では、見事《ツッコミ型》が物語としてユニークな機能をもたらしている。

クマさんに出会ったことに対して「可愛い」と反応するものの、「クマさんの言うことにゃ、お嬢さん、お逃げなさい」とクマさんが話した事実に対しては掌を返し、「あらま、アホなこと言うね」とあざ笑うのだ。クマと出会ったことに対するちょっとしたエピソードの違いで、人の態度が変わる様を皮肉った歌詞となっている。

3曲連続、それもビートルズの名曲をこうも研ぎ澄まされたギャグで別物に変えてしまうとは!

BACK→【『ボヘミアン・ラプソディ』公開記念】今こそ観たい!聴きたい!ハッチポッチステーションの世界

NEXT→6位〜10位

NEXT→11位〜15位

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です