サマ(2017)
ZAMA
監督:Lucrecia Martel
出演:Daniel Giménez Cacho, Lola Dueñas etc
評価:70点
昨年、ラテンビート映画祭で上映されたっきり日本公開の情報が入ってこないアルゼンチン映画『ZAMA』(サマと読みます)。先日、DVD Fantasiumでブルーレイが発売されていたので取り寄せてみました。周りのシネフィルがオススメしていただけに期待が高まるが果たして…
『サマ ZAMA』あらすじ
Antonio Di Benedettoの小説を映画化。僻地 Asunciónに単身赴任している公務員サマは、ブエノスアイレスに残した妻子に会いたくて何度も国王に手紙を送っているのだが、なかなか受理されない。退屈な日々が流れる中、痺れを切らしたサマは小隊に加わり悪党征伐の旅に出るのだが…綺麗すぎるパゾリーニ
本作は、我々が立ち入ることができないような僻地で、18世紀の生活を再現する。こう聞くと自ずとピエル・パオロ・パゾリーニの名前が浮かび上がる。しかしながら、本作は異様な違和感が映画を包む。というのも、やたらと綺麗なのだ。ブルーレイだからという話ではない。生い茂る派、民族のファッション、家、全てがまるでCMのような、作り物のような風貌をしているのだ。まるで、全編精巧なCGで作られたような世界に違和感を感じつつも惹き込まれる。そんな空間で繰り広げられるのは、今のサラリーマンにも通じる中間管理職の悲哀だ。単身赴任したものの、退屈で、毎日やることがない。仕方なく、見回っているとうっかり部族の化粧を見てしまい襲われる。また、発生する業務はどれも小さなもの。主人公・サマは「早くブエノスアイレスに帰りたい」「妻子に会いたい」と想う。今のようにスマホもメールもない。連絡手段は時間がかかる手紙のみ。国王に、ブエノスアイレスに帰りたいと懇願するのだが、いつまで経っても連絡が返ってこない。ただ言われるまま職務を全うしないといけないサマの生き様に泣けてきます。
痺れを切らしたサマは小隊に加わり、悪党征伐の旅に出ることにする。しかし、道中見えない敵に襲われ窮地に陥る。この、見えない敵の描写が非常にコミカルで離れた場所から観ると面白いのだが、よくよく考えるととてつもなく怖い。コミュニケーションが成り立たない相手との対峙、ブエノスアイレスからどんどん遠のいていく様子に心苦しくなった。これは日本公開したら案外動員見込めるんではないかと思うほど、日本のサラリーマンに通じる不条理がありました。
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