やくたたず(2010)
監督:三宅唱
出演:柴田貴哉,
玉井英棋,山段智昭
評価:85点
今日から三宅唱監督最新作『きみの鳥はうたえる』がユーロスペースで公開される。三宅唱監督といえば、『Playback』で映画芸術ベストテンに選出される程注目された監督。当ブログでも彼の『THE COCKPIT
』を賞賛したことがある。そんな彼の今回の作品は、インディーズ監督快進撃の登竜門である佐藤泰志原作ものと来たので期待大だ。『きみの鳥はうたえる』公開を記念して、彼の初期作品『やくたたず』を観てみた。
「やくたたず」あらすじ
卒業を控えた高校生3人組。お金欲しさに、警備会社のアルバイトを始める。しかし、慣れない仕事で全然役に立つことができず悶々とする。なんとか役に立とうと車の運転も教えて貰うのだが一向に上手くならずフラストレーションが堪る。そして、ある事件が起こる…ジム・ジャームッシュ感が凄い!
今回、「Playback」と一緒に観たのだが、ジム・ジャームッシュの空気感や構図に近いものを感じる。ジム・ジャームッシュと言えば、『コーヒー&シガレッツ
』など、脱力感ある世界観をメチャクチャかっこいい構図に閉じ込めるのが上手い監督。多くの映画好きを虜にし、多くの映画好きは彼の映画を真似ようとするのだが、ほとんど失敗に終わる。ブンブンも、ジム・ジャームッシュを意識した動画を作り失敗したことがある程、質感の再現は難しい。
しかし、参考にしたかどうかは別として、三宅唱監督の作品は非常にジム・ジャームッシュっぽい。人生にやる気のない人たちが、なんとなく「その日」を生きている感じを、格好良すぎる画に封じ込めている。そして、三宅唱にしかない着眼点で唯一無二な作品を生み出している。
今回の場合、高校卒業間際の男子生徒がアルバイトをすることで「大人」になっていく様子が繊細に描かれている。アルバイトを始めるのだが、不器用で全然期待通りに働けない。でも、なんとかして会社に貢献しようともがく、しかし役立たずのまま。この苦しみはブンブンも経験したことがあるだけに、心にぐさっっと刺さる。
ロッセリーニ等のネオリアリズモ作品を思わせる、ドキュメンタリーっぽさ6割、映画っぽさ4割で描かれているので高校生達の蹉跌に心が苦しくなるのだが、後半の映画的物語の起伏で娯楽的面白さもある。不器用な男子高校生が「車」をコントロールすることで、大人になることを強烈に象徴した、後半のある事件に注目して観て欲しい。
どうやらDVDは出ていないようなので、もしなんかの機会で観ることがあったら、本作はMUST WATCHですぞ!
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