ひとりぼっちの青春(1969)
They Shoot Horses, Don’t They?(1969)
監督:シドニー・ポラック
出演:ジェーン・フォンダ,
マイケル・サラザンetc
評価:80点
24時間テレビ…それはハンディキャップを持った者を、「テレビに出られる」という名声と引き替えに健常者の見世物にする番組だ。しかし、世界にはこれに匹敵するむごい見世物が存在していたことをご存じだろうか?世界恐慌で世の中がどよんでいた1930年代。貧しい者をかき集めて、ダンスパーティーが開かれていた。しかし、このダンスパーティーはただのダンスパーティーではない。1時間50分踊り続け、10分休憩。これを最後の一組になるまで延々と繰り返すデスレースだったのだ!出場者は最後の一組まで残り得る大金に夢を馳せ、大衆は彼らがもがき苦しむところを楽しむ地獄絵図が1930年代にあった。
それを扱った小説「彼らは廃馬を撃つ(They Shoot Horses, Don’t They?)」。当初は、チャップリンが映画化しようとしたこの小説を「ザ・ヤクザ」「トッツィー」のシドニー・ポラックが映画化した!果たしてそのお味は…
「ひとりぼっちの青春」あらすじ
1932年。映画監督志望の男はダンスパーティーに潜入する。最後の一組になるまで踊り続け、生き残った者には大金が用意されているこのパーティー。ひょこんな事から、病気で欠場したあるカップルの男の代わりに参加することとなる。しかし、彼らは衝撃的な結末に対峙する…鬱、鬱過ぎる…
世界一鬱な映画の一つとして有名な本作は想像以上に鬼畜であった。
まず冒頭、動けなくなった馬を殺す、原題They Shoot Horses, Don’t They?まんま表現する安直すぎる展開に辟易する。これって駄作なのでは?と。しかしこれはほんの余興に過ぎなかった。
まずダンスパーティー会場が映し出される。目の前に照らされる大金の文字に老若男女の貧しい者が群がる。病気な人も、微かな希望を抱いて目の前のエントリーに手を伸ばす。しかし、病気の人は即刻退場無慈悲に引きはがされてしまう。このダンスパーティーはカップルで出場しなくてはならないので、妻は叫ぶ「彼は病気じゃない!ゼッタイに!」。そんな彼女は主人公である映画監督志望の男をひっ捕まえて、なんとか出場することとなる。
1時間50分ダンスをして、10分休憩する。ダンスはほとんど動いていないような下手なものでも、地面に倒れなければ成立する。一見すると、チョロそうにみえるのだが、97時間、3日以上経とうとしていても出場者は102組と一向に減らないのだ。時折映し出される、残りカップルの数と経過時間に観客は絶望を覚える。
そして、絶望と比例して最初は観客がほとんどいないような会場もドンドンと人が集まってくるのだ!
こういう極限状態で、興行主は貧しき者を徹底的に見世物にする。定期的に「注目カップル」と題して、特定のカップルに10分ぐらい時間が与えられる。不況で生きる心地も承認欲求も満たされない彼らは、自分が輝けるチャンスだと思い込み、全力のダンスを披露する。もうここで涙する。それを観た観客はお捻りを、そのカップルに投げつける。
この光景って24時間テレビまんまじゃないか!ハンディキャップある者を見世物にする。そして僅かな名誉と番組側の特典を受け取るだけで、番組が得た利益は芸人達のギャラになってしまう。徹底的に搾取され、そして微かな希望を打ち砕く、文字通り廃馬は撃ち殺す慈悲亡き世界に涙した。
非常に胸くそ悪いが大傑作であったぞ!
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