二十歳の死(1991)
La vie des morts(1991)
監督:アルノー・デプレシャン
出演:ティボール・ド・モンタレンベール、
レシュ・レボビッチ、マリアンヌ・ドニクールetc
評価:55点
アルノー・デプレシャンデビュー作『二十歳の死』。たった50分の中に複雑な人間模様を描き切ったことで、プルミエ・プラン映画祭最優秀ヨーロッパ短篇映画脚本賞受賞、同年ジャン・ヴィゴ賞受賞。90年代デプレシャンブームのきっかけとなった作品だ。TSUTAYA渋谷店でVHSがあったので借りて観てみました。
『二十歳の死』あらすじ
パトリックが散弾銃で自殺した。家族は葬式の為に集まる。パトリックの死により、家族は自分の人生を彷徨う…パトリック、人生やめるってよ
本作の原題は《La vie des morts(死の人生)》となっている。映画を観ると、そこにある《死》はたった一つにも関わらず、原題では《死》が複数形になっている。何故、《La vie de la mort》ではないのか。これは、パトリックの死を通じて、死んだような人生が亡霊のように画面を彷徨う様子を描いたものだからだ。
本作は、『桐島、部活やめるってよ』の桐島同様、パトリックをマクガフィンとしている。パトリックの死は重要ではなく、パトリックの死を通じて移ろいゆく人々の心が重要なのだ。だから、パトリックは劇中ほとんど登場しない。血の痕跡から、彼の残像が伺える程度である。
パトリックの死により、家族の死んだような人生が紐解かれる。パスカルは、浴室で嘔吐する。そして母親と口論を始める。「死んだ人より、生きている人のことを気にして!」と苛立ちを露わにする。パトリックの母は、彼の自殺の原因は自分にあると考え、「私は殺人者だ」と嘆く。
劇中無数に散乱する《叫び》。乱雑かつ、そこには映画というものがない。しかしながら、次第に、パトリックの生前には虚無=死が広がっており、パトリックの死を通じて人々がその虚無と向かい合ってなんとか、その先の世界へ行こうとしていることが分かる。
デプレシャン映画が苦手な私にとって、彼の作家性の原石である本作は当然ながら苦手だった。しかしながら、デビュー作にして、それも50分の作品にも関わらず、無数の人物使って、《La vie des morts》という絵画を紡ぎ出したデプレシャンは相当なテクニシャンだと感じた。
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