パーク(2016)
LE PARC(2016)
監督:ダミアン・マニヴェル
出演:ナオミ・ヴォクト・ロビー、マキシム・バシュルリーetc
評価:80点
今週末、フランス新気鋭ダミアン・マニヴェルが五十嵐耕平と青森を舞台に共同で撮った『泳ぎすぎた夜』が公開される。それを記念して、アンスティチュ・フランセ東京では、カイエ・デュ・シネマ週間にダミアン・マニヴェル特集が組まれた。4/13(金)に上映される『パーク』ですが、契約しているVODサイトMUBIでレンタルできたので、一足早く観ました。これが非常に面白かった。『パーク』あらすじ
とある昼下がりの公園でカップルはデートをする。初めは、距離感がつかめずギコチナイ関係だった二人は次第に惹かれ合う。夕方、男は去る。しかし、女はいつまでも公園にいる。そして闇夜を彷徨い始める…公園という舞台装置
ホン・サンス、フィリップ・ガレル、エリック・ロメールといった、徹底的にミニマルな空間、シンプルな設定の中に深い奥行きを持たせる作品であった。なるほど、そりゃカイエの人が大好きなわけだ(カイエ・デュ・シネマ ベストテン選定者の一人NICHOLAS ELLIOTTが2017年の10位に本作を選んでいた)。
本作は、《公園》という舞台装置を、恋愛感情の揺らぎという哲学を表現するために最大限活用している。まず、冒頭。カップルが待ち合わせをするところから始まる。
男「やあ」
女「ハイ」
と挨拶し、ベンチに座る。しかしながら、どう目線を合わせていいのか、どういう話から切り込んでいいのか分からず、微妙な距離を保ち、キョロキョロと辺りを見回す。これは、デートしたこと人なら誰しもが一度は体験する緊張感だ。それから二人は歩き出す。学んでいること、趣味なんかを語り合う。
男「なんかスポーツやっているの?」
女「体操よ」
男「マジで!俺はカンフーだぜ!」
と本当はどうでもいい話なんだけれども、駄話でなんとか時間を持たせようとするスリル。それを森はこれ以上にない爽やかなグリーンで包みます。なんか、野郎のブンブンからすると『恋人までの距離』を観ているかのように男を応援したくなります。これは爽やかな会話劇なんだ、これは好物だ!と舌鼓を打っていると、本作は思わぬ裏の顔を見せる。
会えない辛さを闇夜に隠し…
夕方、当然ながらカップルは解散する。しかし、女はいつまでも公園に残る。スマホをチラッチラッと観たり、メッセンジャーでとりとめもない会話をする。段々とあたりは真っ暗になる。ただ、女は一向に帰ろうとしないのだ。そして、何故かメチャクチャ苦しそうにしているではないか。しかも、謎の黒人が登場し、一緒に公園徘徊を始めるではないか!
なんなんだこれは!?
そう思った時に、本作の正体が分かる。森を通じて恋愛のメカニズムを描いているということに。初々しい出会い、そして絶頂期は、まさに《青春》の色であるみずみずしい緑が包む。それが、段々と倦怠期になる。なかなか会えない時期が出てくる。そうなった時に、このまま恋愛を続けるべきなのか、自分は本当に相手のことが好きなのかを考え始める。そうなると、『インサイド・ヘッド
』のように脳内の別の人格と対話する。その別の人格が黒人だったのだ。そして深く、先の見えない闇を彷徨い、ようやくたどり着いた先。これがメチャクチャ美しい。
てっきり、ロメールかぶれな映画かと思ったら、そんなことは言わせない!と深淵の彼方まで観客を誘拐するトンデモナイ傑作でした。これは、もし時間のある方、MUBIを契約している方は必見ですぞ!
コメントを残す