さらば冬のかもめ(1973)
The Last Detail(1973)
監督:ハル・アシュビー
出演:ジャック・ニコルソン,
ランディ・クエイド,
オーティス・ヤングetc
評価:80点
日本公開もするらしいリチャード・リンクレイターの新作『Last Flag Flying
』
がまさかのハル・アシュビーの『さらば冬のかもめ』続編と聞いて衝撃を受けた。ハル・アシュビーといえば不朽の名作『ハロルドとモード』や『チャンス』を作ったヒッピー監督。そして彼の『さらば冬のかもめ』はジャック・ニコルソンがカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した作品でもある。この続編では、オーティス・ヤングは既に鬼籍に入っているものの、現在も活躍しているジャック・ニコルソンとランディ・クエイドを主演に撮ることが企画されていた。しかし、実際には彼らは出演せず、スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、そしてローレンス・フィッシュバーンを主演に制作された。その為、ラリー主演の物語になってはいるものの、非公式の続編となった。さて、リチャード・リンクレイターの話はそれぐらいにして、先日NHKで丁度前作の『さらば冬のかもめ』が放送されていたので観た。これが成る程、リチャード・リンクレイターが続編作りたくなるのも納得の作品であった。
『さらば冬のかもめ』あらすじ
テキトーに海軍での仕事をこなす海軍下士官のバダスキーは真面目なマルホール海軍一等兵曹と一緒に、新兵ラリーの護送を任される。1週間の外出が叶ったバダスキーはとっとと仕事を済ませ、遊びまくろうと考えるが、新兵の境遇を聞くうちに彼のことが可哀想に思え、寄り道しまくることにする…ヒッピー人情ドラマ
『ハロルドとモード』に次ぐゆるいのだか、心に温かい人情の炎を宿してくれる傑作であった。カンヌ国際映画祭男優賞を獲っただけに、ジャック・ニコルソンの涙が出るほどの厚い情に泣けてくる。これはまるで寅さんのようだ。フーテンで海軍のい仕事なんかテキトー。とにかく組織に留まるのが嫌な男バダスキー。彼が最初は、護送する新兵ラリーを煽りに煽りまくる失礼な行動をするのだが、新兵がたかだか40ドル盗んだだけでブタ箱行きになってしまった事実にいたたまれなくなっってくる。
そして、「ムショ入ったら自由がなくなるんだ今のうちに遊びまくろうぜ!」とぶらり途中下車の旅を始めるのだ。バダスキーは遊びに妥協をしない男。ラリーが「ムショに入る前に溶けたチーズの入ったハンバーガーを食いたい」という。飯屋にふらっと入り、ハンバーガーを頼む。チーズは溶けていない。するとバダスキーは、「おいそんなんでいいのか?」とラリーに尋ねる。そうするとラリーは「ハンバーガー食えるだけ嬉しいです」と遠慮するのだが、バダスキーは「ばかやろー、ちょっとバーガー貸せ」とハンバーガーをひったくり、店の人にチーズをやき直させるのだ。この一連の流れだけで涙が出てきた。
そう、この映画はリンクレイター映画好きにはたまらない作品だったのだ。ゆるーく物語は進むのだが、そこにはキラキラきらめく人情青春劇が繰り広げられている。人生にとってムショに入るという辛い局面なんだけれどもこんなにも美しい。だからこそ別れのシーンは本当に哀しい。まるで卒業式数日前のようなエモい気持ちになった作品であった。『Last Flag Flying』早く観たいなー
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