トラスト・ミー(1990)
TRUST(1990)
監督:ハル・ハートリー
出演:エイドリアン・シェリー,
マーティン・ドノヴァンetc
評価:80点
昨年ハル・ハートリー『ヘンリー・フール』三部作DVD-BOXのクラウドファンディングに参加した。無事目標金額達成となり大団円に至ったあれから半年以上が経ち、ようやく我が家にもDVD-BOXが届きました。ということで、急遽ハル・ハートリー特集を組みました。今日は、日本未DVD化の傑作『トラスト・ミー』を解説します。尚、結末に触れているネタバレ記事なので、ネタバレを回避したい方は、すぐTSUTAYA渋谷店に行ってください。VHSでレンタルされています。『トラスト・ミー』あらすじ
妊娠し、高校中退したマリアは両親とそのことで喧嘩してしまう。不運なことに、あまりのショックに心臓発作を起こし父親は他界。それにより自宅に居場所がなくなったマリアは町を彷徨う。そして荒くれ者のコンピューター技師と出会い不器用ながらも惹かれあっていく…見事なオデュッセイアもの
ハル・ハートリーは、映像こそカッコイイが数日経つと物語が思い出せなくなる雰囲気映画作家というイメージがある(嫌いではない。むしろ好きだ!)。それ故か、ジム・ジャームッシュ、ヴィム・ヴェンダース、アキ・カウリスマキが流行ったミニシアター時代に埋もれ、つい最近まで日本では鑑賞困難な映画作家だった。
しかし、この『トラスト・ミー』はハル・ハートリー味のカッコいい映像表現にしっかりと物語が肉付いている為、いつまでも心に残る。
本作はある種のオデュッセイアものだ。家族の怒りを買い、行き場を失った少女が町という小さくも壮大な空間を彷徨う。そこで出会うのは、セクハラ、赤ちゃん誘拐事件、そして陰鬱な青年だ。このセクハラから赤ちゃん誘拐事件にシフトする流れが非常に面白い。他の映画ではなかなか観ない展開を魅せる。家を追い出された少女マリアは、ベンチの女に泣き縋る。その横に主婦がやってきて、ベビーカーを置いてコンビニに入る。マリアは女からお金を恵んでもらいコンビニに入る。そして店主を口説いて酒を買おうとする。店主はマリアに酒を売ることと引き換えにセクハラをしようとする。マリアは怒り殴って逃走。店の外に出ると女が「赤ちゃんさらわれた!」と泣き叫んでいる。このトリッキーなシチュエーション、そして会話展開の面白さは、恐らくタランティーノも惚れ込んだであろう。『デス・プルーフ』の酒場パートからは本作を彷彿させるものがある。
手榴弾の使い方が凄い!
そして、はぐれものの少女マリアは同じくはぐれもののコンピューター技師と出会い恋愛関係になる。このはぐれもののコンピューター技師は手榴弾を常に持っており、しょっちゅう自殺しようとする。この出オチ感溢れるアイテム『手榴弾』がなんと、タイトルである『TRUST』を象徴している存在だった!
《破壊》を匂わせる手榴弾は、破壊的な二人の男女そのもの。いつ壊れてもおかしくない恋愛。しかし、なかなか壊れない。しぶとい。この関係が顕著に現れるのがラスト。病院で自殺しようとするコンピューター技師の手榴弾からはピンが抜けており、手を離した瞬間爆発する状況。そこにマリアが現れる。コンピューター技師に対して、マリアは「私を信じて」と手榴弾を引き取り遠くに投げる。すると、手榴弾は爆発しない。二人の強い恋の絆が破壊に買った瞬間だ…と匂わせて油断した途端爆発する。そして、コンピューター技師は警察に捕まり去っていきTHE END。
結局、破壊的二人の恋は爆破という破壊で塵となった。しかし、不器用な二人の恋は一瞬だけ強く惹きつけられた。この刹那の哀しさにブンブンはノックアウトされたのだ。
これはハル・ハートリーよ!是非ともDVD化してください!!
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