婚礼(2017)
NOCES(2017)
監督:Stephan Streker
出演:Lina El Arabi,
Sébastien Houbani,
Babak Karimi etc
評価:75点
マイフレンチフィルムフェスティバルでパキスタン移民の話が上映されている。パキスタン移民の話といえば、来月公開の『ビッグ・シック』に注目が集まっていますが、こちらもなかなかの力作でしたよ。
『婚礼』あらすじ
18歳の少女ザヒラはパキスタン系ベルギー人。彼女には今大きな問題が2つあった。一つは、妊娠していること。二つ目は、パキスタンの風習でお見合い結婚をしないということ。今までにない困難、家族とも仲がいいため、あまり言い出せない。これは18歳の少女が大きく成長する物語だ。風習は辛いよ
『ビッグ・シック
』でも描かれていることだが、パキスタン人には成人するとお見合い結婚をさせられる風習がある。一度もあったことがないのに、親の取り決めで勝手に結婚させられるのだ。これは外国へ移住しようが、二世だろうが関係ない。本作の少女ザヒラもその問題に悩まされる。3人の男と会うが、どれも自分の好みじゃない。親の体裁を保つために、コミュ障な根暗男子と結婚することになるが、嫌で嫌でしょうがない。
そしてさらに重い問題が彼女に降りかかる。とある事情で、彼女は妊娠しているのだ。掻爬中絶できるタイムリミットもわずかに迫っている。本作は、この2つの問題を並行して描くことで、パキスタン人の風習による問題を明らかにするとともに、18歳の少女が葛藤しながら自分の道を選んでいく成長譚として深く掘り下げができている。一見すると、この2つの要素を一つの映画に盛り込むことで、語り口が冗長になってしまうのではと思ってしまうかもしれない。これが面白いことに抜群のバランス感で描かれている。
特に中絶描写は入念な下調べの形跡がある。病院側は、「まだ胚の段階。赤ちゃんではない。」と気軽にいう。でも少女にとって中絶は、一人の子供を殺してしまうこと。自分の無責任によって。子供を産んでも親に迷惑をかける。でも中絶のことが親に知れても迷惑をかける。家族思い、不良のふの字もない純潔な少女にとって、中絶するかしないかは想像を絶する苦渋の決断だ。この葛藤から、パキスタンのお見合いになだれ込むくだりは実話者とはいえよく出来ている。
この作品は是非とも高校生に観て欲しい。そして、『ビッグ・シック』と併せて観て欲しい作品であった。
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