セリーヌとジュリーは舟でゆく(1974)
CELINE ET JULIE VONT EN BATEAU(1974)
監督:ジャック・リヴェット
出演:ジュリエット・ベルト、
ドミニク・ラブリエetc
評価:90点
今年は12時間の怪作「アウトワン
」がアンスティチュフランセで上映されたり、新文芸坐で激レアな作品(「デュエル」など)が上映されたりと、ジャック・リヴェットにフォーカスが当たっている年である。ただ、意外にもジャック・リヴェット過去作はTSUTAYAに置いてあり、今回、「セリーヌとジュリーは舟でゆく」を観てみた。
「セリーヌとジュリーは舟でゆく」あらすじ
ジュリーが魔法の本を読んでいると、なんとも奇抜な衣裳のセリーヌが前を通り過ぎる。彼女がスカーフを落としたもんだから、ジュリーは彼女を追いかけると、お屋敷に到着する。お屋敷の扉を抜けると、時間を超越することができる。ジュリーとセリーヌは次第に、お屋敷が抱える、少女毒殺事件の結末を変えようと何度もタイムワープをするが…ジャック・リヴェットが贈る「不思議の国のアリス」
「ある日、ジュリーが本を読んでいると、目の前に奇抜な女性が急ぎ足でジュリーの前を通り過ぎていった。」完全に「不思議の国のアリス」のプロットである。本作は、長い、即興、そしてぶっ飛んでいる映画を作ることでお馴染み、ジャック・リヴェットが、「不思議の国のアリス」を換骨奪胎させてみた作品である。「不思議の国のアリス」の引用は映画史が始まってから幾度となく行われてきて、陳腐化が激しい。今となっては、中学生、高校生がネット上で小説を書く際にも引用されるほどだ。そして上記のあらすじを読んで分かるとおり、本作は「ラノベか!」と突っ込みたくなるほど、日本に住んでいる者にとって既視感ありありの内容となっている。そう、ジャック・リヴェットの「セリーヌとジュリーは舟でゆく」は、日本人の若者が大好きな「不思議の国のアリス」と「タイムリープ」ものを合体させた話だったのだ。
しかしながら、監督はジャック・リヴェット。美しくもぶっ飛んでいた。
まず、本作が作られたのがカウンターカルチャー、ヒッピー万歳な1970年代ということもあり、ディズニーアニメ「ふしぎの国のアリス」に負けんじとサイケデリックである。ど派手なファッションのセリーヌとジュリー。恐らくゲリラ撮影であろう、ホームビデオ感覚でフランスの街を軽やかに走り回る。彼女の会話と、周りの人の会話が噛み合っていない。図書館で本を引き裂く。アナーキーの極みだ。
そして、荒ぶる彼女たちがたどり着く屋敷の扉が開いた時、彼女は時を超える。本気なのかジョークなのか、少女毒殺事件を救おうと何度も時を超える。そして、意味深なタイトルの意味が分かり、解体されまくっている「不思議の国のアリス」の世界が綺麗な円環構造に収まった時にブンブンの心は多幸感に包まれた。
今となっては、ラノベでよく見かける話だが、1970年代にこの内容を、しかもドキュメンタリータッチで作ったジャック・リヴェットが凄いと感じた。数十年早い内容の映画ではあるが、これは紛れもない傑作。
」のようにファッショナブルでぶっ飛んだ映画を嗜みたい方にもぴったりな作品と言えよう。
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