「家族の肖像」ヴィスコンティ睡魔の名作とのことだが、、、

家族の肖像(1974)
伊題:Gruppo di famiglia in un interno
英題:Conversation Piece(1974)

監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:バート・ランカスター、
ヘルムート・バーガー、
クラウディア・カルディナーレetc

評価:85点

先日、東京映画友の会に
行った際に、
「若者よ、
淀川長治さんが絶賛していた
『家族の肖像』を次回までに
観てくるのだ。
岩波ホールでデジタル完全修復版
が上映されているんで。
眠いかもしれないが
良いぞ~」

と言われました。

ルキノ・ヴィスコンティは、
ブンブンの中で寝る映画の
代名詞となっており、
「山猫」、「若者のすべて」、
「地獄に墜ちた勇者ども」
すべて
爆睡しました。

2013年ブンブン映画ランキング
旧作洋画部門1位を
獲得した「ベニスに死す」でさえ、
中学時代に初見で観た際、
寝たぐらいだ。
(トーマス・マンの原作を
読んでから観ると、
ダーク・ボガードの顔芸の
凄さに圧倒されます。)

なので、なかなか食指が動かない。
しかも岩波ホールで上映
聞いてなお、動かなかった。
しかし、シネフィルを語る上で
観ないとと思い、
大学のAVライブラリで観てきました。
(すみません、予算の関係で
DVD鑑賞です…)

「家族の肖像」あらすじ

家族の肖像画(Conversation Piece)を
集めている老教授は、
新しい肖像を買うのを断るが、
商人の強いお願いで
家に置くことにする。

何故か、その取引現場にいた
ブルジョワジーの夫人ビアンカから
上の階を使わせてくれと言われ、
強情さに負けて貸すこととなる。

やがて、ビアンカの愛人と
娘、そのカレシが住み着くように
なるが…

「家族の肖像」の使い方

本作はミニシアターブーム
引き起こした作品として有名だが、
多くのシネフィルが「寝るよ!」
と太鼓判を押す曰く付きの作品。

しかし、ブンブン何故か眠くならなかった。
古くさいお話しかと思いきや、
日本人にも身近に感じられる
普遍性を持った話だったのだ。

当ブログにたどり着いた
若い映画ファンが
観たくなるように話すと、
オタクの引きこもりの家に、
ある日ツンデレ強気な女性が現れて、
その女の家族が居候し、
コミュ障のオタクが四苦八苦する
うちに友情が芽生える
コメディです。

あるいは、「3月のライオン」
逆パターン。
川本家が桐山零の家にあがり
込むぜ!といった話ですw

とにかく、ブルジョワで失礼極まりない
家族が教授を困らせまくる描写に
爆笑爆笑な作品になっています。

なんたって、この家族、
部屋を無理言って借りているのに、
家を破壊する勢いで大規模
改修工事をしたり、
セキュリティの甘さから
強盗に入られたりするのだ。

教授もなんとか彼らを理解しようとし、
ビアンカの愛人が実は知識人では
ないかと思い頑張って交流しようとする。
しかし、あまりに次元の違う人たちに
精神がまいっていく。

本作が非常に上手いのが、
この精神的にまいっていく
老教授が上手く「家族の肖像画」と
対比されているところにある。

老教授は「家族の肖像画」を集めるのが趣味。
言わば二次元が好きな人と言える。
二次元の幸せそうな絵に萌えているのだが、
いざ三次元、等身大の家族を見ると、
あまりにコントロールできない存在、
汚れた存在にショックを受ける。
しかし、自分の身近になってしまった
以上どうにか克服しようとするのだが、
どうにもならない。
三次元の肖像は扱いきれずドンドン
病んでいく。
これほどまでに強烈にタイトルの
深みを劇中で引き出した作品は
ほとんどないであろう。

オタクという存在を認識する
日本人ならば、一見の価値ある
傑作ですぞ!

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