チリの闘い(1975)
La batalla de Chile(1975)
監督:パトリシオ・グスマン
評価:80点
ブンブンの知り合いのシネフィルが
こぞって「今年ベスト!」と太鼓判を
押す4時間半のドキュメンタリー映画
「チリの闘い」。
9月に公開されたのだが、
金と時間の余裕がなくなかなか
行けなかったのだが、
遂に横浜シネマリンで
観てきました。
↑工事中で、一見すると
営業していなそうに
見えるがちゃんと営業しています。
中は綺麗でしたよ~
「チリの闘い」概要
1973年9月11日、民主主義の元誕生した
アジェンデ大統領による
社会主義国家は、
ピノチェット率いる軍の
急襲でもろくも砕け散った。
何故、アジェンデ政権は
崩壊したのか?
何故ピノチェットは
空爆で大統領府を
爆破しなければならなかったのか?
当時チリで暮らしていた
グスマン監督が世紀末のチリを
克明に映しだしたドキュメンタリー。
ジャーナリズムの鏡
ジャーナリストとは、
自らの命を引き替えにする
覚悟で真実を追い続けなければ
ならない、と大学の授業で
来ていたジャーナリストが
仰っていた。
まさに本作はジャーナリスト
として200%の力を出して、
当時のチリを克明に撮った
貴重な作品と言えよう。
まず、本作は3部構成で描かれている。
第一部では、社会主義国家アジェンデ政権
が国民投票で正式に決まった
ところから始まる。
当時米ソ冷戦下で、
アメリカは南米の社会主義国
出現に警戒を抱いていた。
チリが社会主義国に
なると聞きつけ、なんとか
政権転覆を図ろうと
チリの右派と結託して
民衆のデモをコントロール
しようとする。
そんなゲスな国際戦略が
描かれる。
第二部では、物流業界に
ストライキを行わせたり、
チリからの輸入をアメリカが
ストップするなど激しい
制裁を加えたにも関わらず
アジェンデ政権の支持率が
高いことに焦燥感を抱いた
アメリカがピノチェットら
率いる郡部と結託して
クーデターを起こす様子を撮る。
そして第三部では、
政治闘争の裏側で
労働者階級の
地味ながらも力強く
生きる様子を撮り収める。
本作を観ると、
いかに民衆のデモや社会活動が
国際戦略に左右されているかが分かる。
今の日本では全く考えつかないほど、
本作で描かれる1970年代チリの
人々は選挙シーズンにはお祭り騒ぎ。
何かあったらすぐにデモを起こすわけだが、
結構「デモをして何が変わるのか」を
理解しないで活動している市民も多い。
観ていて思ったのは、まさに先日
行われたアメリカ大統領選挙だ。
ドナルドトランプ反対と
わめき街を闊歩するデモ参加者は
多いが、ヒラリーになって何が変わるのか、
何故ドナルドトランプが危険なのかを
論理的に説明できる人はあまりいない。
ただ、危険な雰囲気を醸し出している
トランプに反対しているようにしか
見えなかったりする。
「チリの闘い」は、日本人には
馴染みのないチリのある歴史について
のドキュメンタリーなのだが、
ミクロな視点からマクロな視点
が見えてきて、「デモ」や
「社会運動」と政府や
国家戦略の関係に
普遍性を帯びてくるのだ!
なるほど、何故今
1975年のこの
ドキュメンタリーが公開されたか?
イギリスがEU離脱、
ドナルド・トランプ大統領誕生と
激動の時代、ある歴史の
終焉が訪れようとしている
からこそ今観るべき映画だったのだ!
正直、第一部、第二部のあまりに
危険な撮影に圧倒されたため、
第三部は蛇足に見えたが、
それでも観る者を引き込む
作品でした。
「光のノスタルジア」「真珠のボタン」
に嵌まった人なら尚更必見の作品ですぞ~
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