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【ネタバレ解説】『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』には我々が観たかった『カンフー・ヨガ』がある

【ネタバレ解説】『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』には我々が観たかった『カンフー・ヨガ』がある

映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱(2018)


監督:髙橋渉
出演:矢島晶子、ならはしみき、
関根勤、みやぞん、ももいろクローバーZ etc

評価:90点

今年の日本映画界は何が起きているのか?毎週、超注目作が5本ペースで公開されている。先週は、ロック様も青ざめのアクション映画と化したコナン最新作『名探偵コナン ゼロの執行人』、大人気ロボット映画の続編『パシフィック・リム:アップ・ライジング』、東京フィルメックスで話題となった『泳ぎすぎた夜』が公開となった。

ただ、その週は基本情報技術者試験。それに来週は『レディ・プレイヤー1』、『いぬやしき』、『タクシー運転手 約束は海を越えて』が公開されることもあって、映画はやめようと決め込んでいた。

しかし、いざ試験が終わると無性に映画が観たくなった。ふらっとTOHOシネマズ海老名に立ち寄り、丁度良い作品を探した。そしたら、クレヨンしんちゃん最新作があるではないか。予告編を観た感じだと、あまり気乗りしないが何故か私の足は《クレヨンしんちゃん》に向いていた。

この時、ブンブンは知らなかった。この『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』が橙大傑作だったことに。今日は、そんな映画クレヨンしんちゃん2018の魅力を8の観点から語っていくぞ!

※ネタバレ記事です。結末まで描かれているので、未見の方は映画館へGO!マジで、漫画タウンなんか読んでいる場合ではない。まんがタウンから飛び出したしんちゃんの勇姿を観てくれ!

『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』あらすじ

あの人、、、マサオじゃない。春日部防衛隊の皆が戦慄した。昼下がりの幼稚園、いじめっ子に詰め寄られたマサオは謎のポーズで、相手を震え上がらせた。野原しんのすけたちは、マサオを追いかけると春日部に突如出現した中華街アイヤータウンにたどり着く。その僻地のスラム街で彼らが見たものは…ぷにぷに拳だった!

注目ポイント1:ヒーロー映画の名匠・髙橋渉映画だった!

オープニング、ブンブンは早々にこの映画を軽視したことを土下座して謝りたくなった。タイトル画面で私が観たものは、《監督・髙橋渉》の文字だった。これは傑作でないわけがない。知らない方の為に説明しておこう。髙橋渉は、長年映画クレヨンしんちゃんシリーズの制作に携わっていた人だ。『クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』から、制作として携わり、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』といった名作も裏で支えてきた。

そんな彼は、『劇場版3D あたしンち 情熱のちょ〜超能力♪ 母 大暴走!』で監督デビュー。まるでマーベルヒーロー映画を思わせるヒーロー誕生譚を描こうとする。しかし何故か3Dで制作された為、途中で予算が尽きたのか、上映時間がたった43分しか確保できず十分な作品を仕上げることができなかった。

ただこの作品は、超人的な力を得た《母》が承認欲求という欲望に溺れ、家族が崩壊していく様子を真面目に描こうとしていた。なので、もし「みかんが坂から転がるシーン」が3Dでなかったら傑作になったのではと思わずにはいられない作品だった。

興業的にも失敗に終わった本作だが、4年後、彼は『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』という大傑作を生み、復活を遂げる。『劇場版3D あたしンち 情熱のちょ〜超能力♪ 母 大暴走!』で描ききれなかった、ヒーローとしてのアイデンティティ、承認欲求の闇というテーマの掘り下げを徹底的に行うことで、野原ひろしの魅力が最大限に引き出された傑作だった。その後、『クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』というこれまた傑作を放ち本作に至った。

話は長くなったが、イバラ道、輝くまで長い長い道のりを歩んだ髙橋渉が今度は《カンフー》でヒーローの哲学を描く。これは渾身の作品と言えるでしょう。

注目ポイント2:ただならぬカンフー映画愛

では、本作ではどんなカンフーを魅せてくれるのか?正直、ブンブンはカンフー映画にそこまで詳しくはない。それでも、髙橋渉及び関係者はカンフー映画をメチャクチャ勉強していたことが感じ取れる。カンフー映画というと、アクションばかりに注目しがちだが、実は《修行》のシーンが非常に重要となってくる。

師匠と弟子が、オンボロ屋で衣食住を共にする。師匠は、『酔拳』に出てくるテキトーな爺さんに見える。弟子は(この場合、春日部防衛隊)、「本当に師匠強いの?」「その拳、弱そう(ぷにぷに拳というネーミングセンスに脱帽)」と疑心暗鬼になる。しかし、いざバトルシーンになるとメチャクチャ強い。そこで、師匠、拳法を初めて慕うようになる。

また、修行シーンでは『少林寺三十六房』のように一つずつ技を身につけていく様子が描かれていく。もちろん、修行は技に関するものだけではない。『ベスト・キッド』のように、掃除も修行の一つとして組み込まれる。

カンフー映画では修行シーンに力を入れることで、拳法の哲学に深みが増し、クライマックスのバトルシーンでカタルシスが生まれるのだ。本作の場合も例に漏れず、修行シーンで「心身の柔らかさが最大の強さ」という《ぷにぷに拳》の哲学をじっくりと描きだす。これが終盤のある展開で重要な役割を果たし鳥肌が立つ仕組みとなっていたのだ。

注目ポイント3:カンフーとしんちゃんアクションの最強化学反応

この作品のカンフー描写は驚くべきごとに、カンフーアクションを《クレヨンしんちゃん》ならではのアクションに翻訳する離れ業を成し遂げていた!《ぷにぷに拳》では9つの型があるのだが、そのほとんどがオリジナルの型である。クレヨンしんちゃんならではの身体的柔らかさを活かして、ぐにゃぐにゃ身体を捻らせ攻撃を交わす型から始まり、身体を球体にして攻撃する型、終いには尻を出して左右に爆走する型まで用意されている。こう聞くと、カンフーに対する冒涜だと思うかもしれない。しかし、ここで繰り広げられるアクションが、まさにカンフーアクションそのもの。タン、タン、タン!とリズム良く型がキマっていくのだ!しんちゃんお得意の《尻の舞》もいつにも増してキレッキレである。

まさかカンフーアクションとしんちゃんアクションが見事に融合するとは思いもよらなかった。

注目ポイント4:我々の観たかった『カンフー・ヨガ』がここにあった

さらに驚くべきことに、この映画の終盤の展開はあの珍作『カンフー・ヨガ』そのものだった。もはやパクリレベルで。9つの型を習得したしんちゃんと玉蘭は悪を倒す為に、究極奥義を教えてくれる中国へ向かう。

究極奥義のある洞窟の奥底の様子が、『カンフー・ヨガ』のラストのシーンそのものでした。

ただ、『カンフー・ヨガ』はワケワカメな展開、全然アクションをしないジャッキー・チェン、思わぬ展開で終わるラストに多くのジャッキーファンを失望させた。ブンブンもその一人だった。

それが、この作品ではほとんど終盤の展開が『カンフー・ヨガ』と一緒にも関わらず、我々が観たかった本物の『カンフー・ヨガ』を魅せてくれるのだ!究極奥義を教えてくれる謎の生物を前に、しんちゃんと玉蘭はバトルを繰り広げる。そして、しんちゃんは勝利するものの、突然究極奥義を習得することを諦めてしまう。負けた玉蘭が横取りし、究極奥義を受け取る。そこで本作のトリック及び髙橋渉のヒーローに対する哲学の掘り下げが始まる。

注目ポイント5:実は社会派ドラマ

実は、終盤になるとこの作品は社会派ドラマ、例えるならば『シビル・ウォー』に近い物語になっていくのだ。意外かもしれないが。しんちゃんがあれだけ溺愛して尊敬していた玉蘭が、究極奥義を手にしたが故に、過剰な正義でもって春日部を支配し始めるのだ。悪は去ったが、彼女の復讐心は満たされず、小さな悪を片っ端から成敗し独裁国家を作り上げてしまうのだ。ここで、《ぷにぷに拳》の哲学とはなんだったのかが明らかになる。心身強いものは、常に柔軟でなければいけない。自分の正義を過信すると、《ぷにぷに拳》は悪の力と化す。あれだけ尊敬に値する人物が行き過ぎた正義で闇落ちする展開に観客はハッとさせられるのだ。特に大人程、身につまされるようなどんでん返しになっている。そして、硬い正義の荊に包まれた彼女をしんちゃんの《ぷにぷに》が救う。なんという癒しなのだ。

注目ポイント6:関根勤の演技はアカデミー賞ものだ!

さて、ここでちょっと軽い話をしよう。毎度クレヨンしんちゃんシリーズでは、毎回ゲストが出演する。今回は師匠役に関根勤が抜擢されているのだが、これが私的アカデミー賞助演男優賞確定レベルに凄まじかった。これは役者や声優志望の方に観て欲しい。

師匠はブラックパンダラーメンの悪代官ドン・パンパンによって、「パンツーマルミエ」しか言えない身体にされてしまう。中盤以降の関根勤のセリフは「パンツーマルミエ」一つ。にも関わらず、彼はそのたった一つのセリフで喜怒哀楽を全て表現してしまうのだ。マサオが通訳するのだが、これがまさに通訳通りとしか言いようがないセリフの間と呼吸の使い方。悲しんでいる時は、「パン…ツー….↓」と語尾を下げるように発する、応援する時は力強く「パンっ!ツー!マルミエ!」と発する。関根勤の手数に参った。この「パンツーマルミエ」百変幻は日本映画史に残る名台詞と言えよう。

注目ポイント7:狂ったツイスト1.マサオの扱い

SNSで評判を見ると、どうもマサオの扱いで評価が大きく別れているようだ。マサオは、《ぷにぷに拳》を早くから始めているにも関わらず、後から入ってきたしんちゃんたちに抜かされ、屈辱を味わう。誰しもが、マサオ闇堕ちするなと思うのだが、結局マサオは闇落ちすることない。一度、しんちゃんたちからは離れるが、最後には一緒になる。

これは個人的に面白いミスリードのさせ方だと感じた。マサオの闇堕ちを予想させつつ、実際に堕ちるのはヒロイン玉蘭だった。この不意打ち面白いではありませんか。

また、これは『ちはやふる 結び』にも通ずる人生の哲学を人間関係で描いているとも言える。マサオは『ちはやふる 結び』における真島太一だ。千早、綿谷新という絶対的に勝てない存在を前に劣等感を抱く。そして一度は逃げるように、去るが、再び周防久志という最強と向かい合うことで、アイデンティティを確立し、仲間の元へ帰っていく。これと同じことを本作におけるマサオはやっているのだ。マサオは絶対に追い越すことのできない、《ぷにぷに拳》の才能の持ち主に嫉妬を抱き去る。闇堕ちしそうになるが、師匠と再び二人になることでアイデンティティを強固なものにし、再びしんちゃんと共に悪と闘う。

そう考えた時、やはりマサオは闇堕ちしなくてよかったと感じる。

注目ポイント8:狂ったツイスト2.思わぬ展開でグランドフィナーレを迎えるB級カンフー映画

さて、最後になるが、この『映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ 拉麺大乱』はラストの決着方法がカンフーではなかったのだ。

なんと『カンフー・ヨガ』同様、ダンスだった。それも冒頭、ちらっとだけ描写されたフォークダンスの『ジェンカ』で決着をつけるのだ。闇堕ちした玉蘭を、ムカデのように連なったしんちゃんや市民がジェンカのリズムに合わせてタックルすることで倒すのだ。衝撃的であると共に、この時点はブンブンの脳天に花火が上がりました。

最後に…

正直、全く予告編では食指が動かなかっただけに、びっくりたまげました。まだ観ていないのだが、ブンブンは確信している。某ロボット映画やステイサムも驚愕小学生による某アクション映画ではなく、こちらを選んで正解であったことを。

ブンブン、あまりラーメンは好きではないのだが、この作品を観て早速、富山ブラックラーメンに行きましたw

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