岡田准一

2021映画

【ネタバレ考察】『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』メルヴィル、ザラーにならないように、うっかり殺めないように

暴力は突発的に起きる。突発的な暴力に支配された世界では、殺しは静かにやってくる。冒頭、夜の繁華街で襲われる女。すると突然、暴力漢の脳天が撃ち抜かれる。場面は切り替わり、公園でヤクザのような人が犬を連れて話していると、これもいきなり突然死する。車では、怯える女を連れて男が車を走らせようとすると、何者かに首を掻っ切られる。そのまま激しいカーレースとなり、岡田准一演じるファブルはトム・クルーズさながらの曲芸を魅せつける。息を呑むようなアクションはハリウッド大作を観ている気分にさせられ、これだけでこの映画の勝利は確約されている。このドライで、大胆かつ厳格なショット捌き、語りではなくアクションで映画を語ろうとする職人芸はジャン=ピエール・メルヴィル、S・クレイグ・ザラーを彷彿とさせる。