MOTHERLAND(2019)
GIMTINE
監督:トーマス・ヴェングリス
出演:マータス・メトレフスキ、セヴィリヤ・ヤノシャウスカイテ、ダーリウス・グマウスカス、バルボラ・バレイキテetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2026年7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてリトアニア映画『MOTHERLAND』が公開される。本作はテレンス・マリックやケリー・ライカートの編集助手を務めたトーマス・ヴェングリスの長編デビュー作
配給会社の太秦さんのご厚意で一足早く観させていただいたのでレビューする。
『MOTHERLAND』あらすじ
Peu après la chute de l’URSS, Kovas, âgé de 12 ans, se rend pour la première fois dans le pays natal de sa mère Viktorija. Cela fait 20 ans qu’elle s’est échappée de la Lituanie occupée par les Soviétiques et elle est maintenant revenue récupérer sa propriété familiale bien-aimée.
訳:ソ連崩壊後間もなく、12歳のコヴァスは初めて母ヴィクトリヤの故郷を訪れる。ソ連占領下のリトアニアから脱出してから20年が経ち、彼女は愛する家族の土地を取り戻すために戻ってきたのだ。
リトアニア、失われた土地と渇望
本作はリトアニアにおける侵略の歴史をミクロなレベル、そして歴史が薄ぼんやりと周囲にある子どもの視点から描かれた作品である。リトアニアは第二次世界大戦中に、ソ連やナチス・ドイツの侵攻を受け、戦後はソ連に編入された。1991年1月にリトアニア独立を目指す国民とソ連との間で衝突が生じる血の日曜日事件を経て9月に独立。そして12月にソ連は崩壊した。映画は翌年の1992年を舞台にしている。アメリカから親子がリトアニアへやってくる。母ヴィクトリアはソ連占領下のリトアニアで土地を奪われた。ソ連から解放されたのをきっかけに土地を取り戻そうとするのだが、その地には既にロシア人一家がおり揉めている。
息子のコヴァスは、リトアニアはもちろん母親の辿ってきた轍を明確に知らない。彼の瞳に映る世界はバカンス映画のように柔らかい緑と青に包まれており、自然が織りなす空気感はチルである。しかし、そんな彼の眼差しの遠くでは大人たちが揉めている。母親には翳りがあり、油断すると暴力の片鱗を目撃する。だが、大人の世界、巨大な歴史に立ち入ることのできないもどかしさがある。映画は、アンドリュー・ワイエスの絵画のような空間の距離感。距離を持たせた自己と世界の関係性を通じて独立しても失われたものは戻ってこない感覚、歴史を変えることの困難さを詩的に描いたといえよう。
ちなみに、トーマス・ヴェングリス監督は2023年に長編2作目の『Five and a Half Love Stories in an Apartment in Vilnius, Lithuania』を発表している。こちらはアイルランド人女性、イスラエル人夫婦、ハンガリー人男性の恋愛を描いているのだが、どうやらヨーロッパにおける国家間の政治問題を個人レベルに落とし込んで描く小説っぽいアプローチに関心あるように思える。
日本公開は2026年7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて。










