アメリと雨の物語(2025)
Amélie et la métaphysique des tubes
監督:マイリス・ヴァラード、リアン=チョー・ハン
出演:ロイーズ・シャルパンティエ、ヴィクトリア・グロボア、ユミ・フジモリetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第98回アカデミー賞にノミネートされている『アメリと雨の物語』が2026年3月20日(金)より公開される。今回、ファインフィルムズさんのご厚意で一足早く観させていただいたのでレビューしていく。
『アメリと雨の物語』あらすじ
1960年代の神戸を舞台に、日本で生まれたベルギー人の女の子アメリの成長を描いたアニメーション映画。ベルギーの小説家アメリー・ノートンによる自伝的小説「チューブな形而上学」を原作に、2歳の主人公アメリから見た生命と色彩、そしてウィットに富んだ彼女の言葉が織りなす情感豊かな世界を描き出す。
1960年代、神戸。外交官の家に生まれたベルギー人の女の子アメリは、2歳半までは無反応状態だったが、あるきっかけから無敵の子ども時代に突入し、自らを「神」だと信じて魔法のような世界を生きるようになる。大好きな家政婦のニシオさんや家族と過ごす日々は、彼女にとって冒険であり、新たな発見に満ちていた。ある日彼女は、自分にぴったりな「雨」という漢字を知る。そして3歳の誕生日、彼女のすべてを変えてしまう出来事が起こる。
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」などに参加したマイリス・バラードとリアン=チョー・ハンが監督を務め、日本人作曲家・福原まりが音楽を手がけた。2025年アヌシー国際アニメーション映画祭で観客賞を受賞。第98回アカデミー賞でも長編アニメーション部門にノミネートされた。
社会を知りアイデンティティが揺らぐまで
本作は子ども映画でありながら、フランス語タイトルが原作に近い”Amélie et la métaphysique des tubes(アメリとチューブな形而上学)”となっていることから明らかな通り、奥深い一本となっている。子どもの目線から、社会と出会い、そして与えられたアイデンティティの間で揺らぐまでの過程が描かれている。
主人公のアメリは外交官の家に生まれたベルギー人である。ベルギー人であるが、神戸で暮らしている。だが、幼児にとっては家が社会なわけで、日本/ベルギーといった境界は意識されない。感情が芽生えると、自分に触れてくる人間の存在を認知する。だが、自分はすべてを知っており神だと考えるアメリにとって、自分の中の言語領域の外側から語りかけてくる大人たちは無理解な異様な存在として認知する。日本語もフランス語も会得していないため、コミュニケーションの取れなさ、自分の意図の通じなさに苛立ちを抱える。映画はパステルカラーに彩られながら、行き場の失った感情の爆発を『AKIRA』さながらの超能力描写で描いてみせる。
やがて漢字を教わる。窓に描かれた「雨」。文字から概念へと子どもなりに理解していく。過程は複数の言語が混ざっているが、その複雑さをそのままに受容していくアメリ。しかし、大人の複雑な関係性が日本人であるのかベルギー人であるのかといったアイデンティティを引き起こすのだ。
短くポップなアニメーション作品でありながら、李良枝「由熙」を読んだような繊細なアイデンティの揺らぎのプロセスを掬い上げており、興味深い一本であった。
日本公開は2026年3月20日(金)。










