入国審査(2023)
Upon Entry
監督:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスチャン・バスケス
出演:アルベルト・アンマン、ブルーナ・クッシ、ベン・テンプル、ローラ・ゴメスetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
松竹さんからのご厚意で2025年8月1日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町にて公開となる『入国審査』を一足早く観させていただいた。ベネズエラ出身監督コンビ初の長編映画でありながら国際的に評価を受けた作品であり、実際にアレハンドロ・ロハスがスペインへ移住しようとした際の実話をベースにした話となっている。しかし、第一次ドナルド政権下の2019年に入国審査の尋問を経験したことのある私にとって生々しい程にリアルなアメリカの物語に映った。
『入国審査』あらすじ
移住のためアメリカへやって来たカップルを待ち受ける入国審査での尋問の行方を緊迫感たっぷりに描いた、スペイン発の心理サスペンス。本作が監督デビューとなるアレハンドロ・ロハス&フアン・セバスティアン・バスケスが監督・脚本を手がけ、故郷ベネズエラからスペインに移住した際の実体験に着想を得て制作。わずか17日間で撮影した低予算の作品ながら、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023に正式出品されるなど、世界各地の映画祭で注目を集めた。
スペインのバルセロナからニューヨークに降り立ったディエゴとエレナ。エレナがグリーンカードの抽選で移民ビザに当選し、事実婚のパートナーであるディエゴとともに、新天地での幸せな生活を夢見てやって来た。しかし入国審査でパスポートを確認した職員は2人を別室へ連れて行き、密室で拒否権なしの尋問が始まる。予想外の質問を次々と浴びせられて戸惑う彼らだったが、エレナはある質問をきっかけにディエゴに疑念を抱きはじめる。
「記憶探偵と鍵のかかった少女」のアルベルト・アンマンがディエゴ、「悲しみに、こんにちは」のブルーナ・クッシがエレナを演じた。
※映画.comより引用
恫喝ではなく狡猾に亀裂を入れ……
スペイン人のエレナとベネズエラ出身のディエゴは事実婚の関係にある。エレナがグリーンカードの抽選で移民ビザを手にし、彼と一緒にアメリカへ渡ろうとする。しかし、入国審査で別室に連れていかれることとなる。乗り継ぎ時間も過ぎてしまう中、個室で狡猾な尋問が始まる。
2019年に私はガールフレンドとグアムへ旅行に行った。その時に私が入国審査で引っかかり、別室に連れていかれた時のことを思い出した。当時、第一次ドナルド政権で移民に厳しい時代であった。観光目的の日本人であってもシビアに審査されたことが深刻さを物語っている。わたしはグアムへ旅行する8年前、夏休みのプログラムで3週間、カリフォルニアへ留学していた。この渡航歴が怪しまれ、根掘り葉掘り訊かれたのだ。通っていた学校名なんて覚えてもいないから「忘れた、すまん」と言うも、手続き上必要らしく頑張って思い出してほしいと言われた。30分近い尋問の末、なんとか解放された。
観光目的でさえこれなのだから移住目的の入国の際にはもっと厳しいのだろう。映画はスペクタクル的な過度な恫喝や暴力でもって事象を描かない。私が経験したように淡々と質問攻めにしていくのだ。その端々に罠が仕掛けられ、いとも簡単に本国へ送り返せるような状況が作り出されていく。ふたりを分断し、秘密を訊きだす。それを餌に亀裂を与え、たとえ移住できたとしても破局し、故郷へ自発的に帰るよう仕向け続けるのである。ストレスフルな尋問に発狂しそうになるが、ここでキレたら一貫の終わり、一歩、また一歩踏みとどまる悲痛の顔に胸が締め付けられた。
2025年8月1日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町にて公開
※映画.comより画像引用